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釜石、大槌両市町で県総合防災訓練 関係機関・団体が連携確認 避難者対応の課題共有

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 2025年度の県総合防災訓練は8日、釜石市と大槌町で行われた。釜石市が同訓練会場となるのは2012年以来。巨大地震が発生、大津波警報が発表されたとの想定で、72項目の訓練を実施。83の関係機関、約4300人が参加し、救出救助、避難所運営、支援チームの活動などに関し、自治体と関係機関、団体が連携を確認した。住民が防災意識を高めるための各種体験もあった。当初予定されていた津波避難訓練は、クマ出没の危険回避のため中止された。

 訓練は前日の(先発)地震に続き、三陸沖を震源とするマグニチュード8を超える大地震が発生。本県沿岸部で最大震度6強を観測、大津波警報が発表されたとの想定。地震、津波災害で必要となる各種対応を訓練した。釜石市では5会場で実施。鵜住居町の釜石東中では避難所開設後、3日から1週間後を想定し、避難者への各種ケアを中心とした訓練が行われた。

日本医師会災害医療チーム(JMAT)の医師や日本赤十字社派遣の医師や看護師らが避難所を巡回し患者(役)の診療を行った


写真上:心のケアを行う災害派遣精神医療チーム(DPAT)=右側と連携を確認 同下:感染制御支援チーム(ICAT)は避難所における感染症予防対策を訓練


 市、釜石医師会、同薬剤師会による保健医療福祉調整本部訓練は初めて実施。外部から派遣される災害対応の医療、感染制御、福祉などの支援チームの受け入れ、ケアが必要な患者の関係機関への誘導などを具体的シナリオでシミュレーション。情報共有のための報告会も行った。釜石薬剤師会の中田義仁会長は「災害時の混乱の中では、各種チームが円滑に支援に入れるような調整本部が必要不可欠。今回の訓練参加者からも同様の声があった。迅速な対応のためには関係機関の平時からの連携も大事」と話した。

市、医師会、薬剤師会が連携し初めて行われた「釜石市保健医療福祉調整本部」の設置・運営訓練


調整本部は外部から派遣される支援チームの調整や関係機関の情報共有を担った


 県、市の国際交流協会は外国人の避難所受け入れ訓練を行った。市から応援要請を受けた同協会員が外国人避難者の受け付けや相談に応じた。中国、ベトナム、バングラデシュ出身の県内在住者4人が訓練に参加。音声翻訳アプリを利用してやりとりしたほか、県が設置する災害時多言語支援窓口に電話して母国語で会話をできるようにし、困りごとなどを確実に把握する訓練も行った。

外国人の避難所受け入れ訓練。翻訳アプリや災害時多言語支援窓口も活用し、外国人避難者の要望を聞いた


 バングラデシュから岩手大に留学中のアクター シャーミンさん(31)は「災害時、異なる言語の人にどう対応するのかを学べた」、夫のリアズさん(33)は「私たちは日本語を少しできるが、来日して間もない人たちはとても大変だろう。コミュニケーションがやはり一番難しい」と実感。2人はイスラム教徒で、毎日の礼拝や食事の問題もある。県国際交流協会の大山美和主幹は「長期避難になると新たな課題も出てくる。そういった気付きを協会関係者だけでなく周りの人にも知ってもらうことが大事」と理解促進を願った。

 鵜住居町の住民らは避難者として各種訓練に参加した。LINE登録やマイナンバーカードの活用で自治体が避難状況をリアルタイムで把握する避難所運営デジタル化実証訓練、避難所運営ゲーム(HUG)の体験実習などに取り組んだ。

避難所運営デジタル化実証訓練では、避難者のスマホで県のLINEアカウントに友だち登録。各種情報を入力してもらうことで避難状況の把握につなげる訓練が行われた


県防災士会が訓練参加者に提供した避難所運営ゲーム(HUG)の体験実習


 釜石東中の菅原怜利さん(2年)は今年7月、ロシア・カムチャツカ半島付近を震源とする地震で本県沿岸に津波警報が出された際、学校で避難者の受け入れを実体験。今回のゲームで、「避難所にはいろいろな人が来るので、どこにどう配置すればいいかを学べた。今後に生かせれば」と意識を高めた。岩﨑瑛叶さん(同)は「避難所はみんなで意見を出し合ってやることが大切だと思った」。学校では自主防を組織しており、「防災のことを知らない人たちにも広めていきたい」と思いを強くした。実習をサポートした県防災士会の清水上裕理事長は「東日本大震災の教訓を踏まえたゲーム。実際の避難時にこうした知識があれば、リーダーシップを取って避難所開設が可能になる」とし、より多くの人たちの体験を望んだ。

鵜住居町の住民らがHUGを体験。釜石東中生(写真右下)も防災力を高めようと参加


 港町のイオンタウン釜石周辺では、津波から逃げ遅れた人をがれきや車の中から救出する訓練を実施。県警や自衛隊のオフロードバイクが要救助者を発見、駆けつけた消防署員らが救出して救護テントに搬送する流れを確認した。能登半島地震で集落孤立が相次いだことなどを踏まえたヘリコプターによる孤立者救助訓練では、県と海上保安庁から2機が出動。救急隊員らが建物屋上に降下し、取り残された避難者を機上に引き上げた。

車内に閉じ込められた人を救出する消防隊員ら=港町会場


関係機関が連携し津波から逃げ遅れた人らの救助活動にあたる


ヘリコプターによる救助訓練。孤立者を上空から救出する流れを確認した


 大町の市民ホールTETTO前広場周辺では婦人消防協力隊による炊き出しや、指定避難所を想定した電気自動車からの給電訓練などが行われたほか、テントの中に充満させた訓練用の無害な煙で火災の状況を体感するといった防災意識を高めてもらうプログラムも用意された。地震体験車で震度7など大規模地震の揺れを体感した市内の平松寿倖(ひさこ)さん(35)は「(体験では)揺れがくると分かっていたし家具も固定されていたが、実際の災害は突然起こるだろうから不安。家の中につかめるもの、体を支えられるもの、あったかな…。これから先もここで暮らしていくから、身の回りの状況を確かめたい」と備えの大切さを改めて実感していた。

TETTO前広場では炊き出し訓練や災害体験などが行われた


達増拓也県知事らが各訓練会場を視察。外国人避難者の受け入れではイスラム教徒の礼拝スペースも設けられた(左)


 訓練後の閉会式で、統監の達増拓也県知事は「災害対応の総合力を強化する重要性を改めて認識。訓練の成果を地域や職場の防災対策に役立ててもらいたい」と総括。副統監の小野共市長は「近年、自然災害が頻発、激甚化し、防災・減災の取り組みはより一層の強化が求められる。訓練で得た課題を検証し、災害対策に生かしていく」と決意を示した。

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