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一皿に気持ちを込めて。沼垂商店街のスパイスカレー店「podoco」。

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一皿に気持ちを込めて。沼垂商店街のスパイスカレー店「podoco」。

今年、沼垂テラス商店街にオープンしたスパイスカレーのお店「podoco(ポドコ)」。たまたま取材に伺う前にスパイスカレーを自作し、スパイスの風味や香りの豊かさに驚いたタイミングだっただけに、どんなお話が聞けるのか楽しみにしていました。店主のyamakoさんは大の植物好きで、そこから派生してハーブとスパイスに魅了されたのだそう。男性でも満腹感が得られるボリュームたっぷりのスパイスカレーは、いろんな味を混ぜて食べても絶品でした。

podoco

yamako

新潟市生まれ。飲食店での経験を経て、2024年2月にスパイスカレーのお店「podoco」をオープン。植物が好き。

ちょっと足すだけでガラリと変化。スパイスっておもしろい。

――yamakoさんがお店をはじめるきっかけになったことはあるんですか?

yamakoさん:独立する前に飲食店をいくつか経験させてもらいました。その中のひとつに、飛び抜けてすごく楽しいお店があったんです。オーナーが自由に、好きなことをやっていて、店内もかわいらしくて。常連さんとおしゃべりしながらお酒を飲んで、食べたいものを作るみたいな。そういう感じが「すごくいいな」と思ったんですよね。

――お話を聞くだけで魅力的に思えます。

yamakoさん:「いつか自分もお店を持てたらいいな」って、お金を貯めてみたりしたんですけど、実際は続かないんですよね(笑)。「やっぱりいいや」ってなっちゃって。だから「やるぞ、やるぞ」って動いていたわけではないんです。それでも飲食の仕事が好きなのでしばらく続けていたら、とあるお店のオーナーさんからお誘いいただいたんです。「事情があって、お店を続けられないからyamakoさんどうかな」って。その方、私がお店をやりたいとジタバタしていた時期を知ってくれていたんです。

――じゃあ、いわゆる居抜き店舗みたいな感じでスタートしたんですか?

yamakoさん:そうです、そうです。テーブルや椅子はほとんどいじっていません。何もないところから自分で作り上げるなんて、絶対にできなかっただろうなと思います。お声をかけてもらって、すぐに「やります」とお返事しました。あらかじめ準備できていたわけじゃなかったですけど、即決でしたね。

――いよいよ「そのときがきた」って感じがしますよね。カレーのお店にした理由も知りたいです。

yamakoさん:植物が好きで、その延長線上にあるハーブやスパイスも自分で育てているんです。それをお茶やお料理に使うのがすごく楽しくて。焼いたお肉にスパイスをちょっとかけるだけでぜんぜん違う風味になるし、別のスパイスを追加したり、ハーブと合わせたりしても、また仕上がりの感じが変わるんですよ。

――スパイスって種類も豊富だし、勉強し甲斐がある分野だろうなって思っていたんですよ。

yamakoさん:ほんと、そうだと思います。同じお店から同じハーブ、スパイスを買ったはずなのに、「なんだか微妙に前回と違う感じがするな」みたいなこともあるんですよ。おもしろいですよね。市販のルーにちょっとだけスパイスを足すだけでグンと本格的なカレーになりますよ。

――yamakoさんのスパイス愛が伝わってきました。つまり、スパイスを生かせるからカレーのお店にしようと思われたんですね。

yamakoさん:そうなりますね(笑)。できれば私ひとりでお店を切り盛りしたかったって理由もあります。そうなると「カレーかな」って。

あいがけカレーの醍醐味、種類の違うカレーを混ぜても楽しめる。

――どんなメニューがあるんですか?

yamakoさん:日によって異なるんですけど、今日は海老と鶏肉とサバのカレーをご用意しています。「本日のカレー」を3種類用意していて、その中から選んでいただくかたちにしています。

――それぞれ使っているスパイスも違うわけですか?

yamakoさん:基本のスパイスは同じだったりもしますけど、ちょっとずつ変えていますかね。「あいがけ」でご提供したときに相性がいいかどうかは意識します。それぞれのカレー単体でも美味しいし、混ぜてもイケる味にしたいですから。

――配合だとかはご自分で決めていらっしゃるんですか?

yamakoさん:味見をしながら求めている味に近づけています。「これだ」って思った味でも、「今日は辛くしたい」とか「暑いから爽やかなスパイスを入れたい」とか、ちょっとずつアレンジするんです。それができるところがスパイスのおもしろさですよね。

――天気だったり、テンションだったりで変化する味ってすごく魅力的です。カレーの種類もけっこう変わるんでしょうか?

yamakoさん:豚肉、鶏肉を定番メニューにして、1種類だけ変えようと思っているんですけど、なかなかそうもいかなくて。豚肉がなかったり、鶏肉がなかったり、違う具材が入ったりといろいろです。だから今はもう「ランダム」ですね。

――yamakoさんはスパイスそのものが好きだから、カレー作りも楽しめそうですよね。

yamakoさん:作るのは大好きです。同じベースでもメインの具材を変えるだけで、ガラっと味が変わるんですよね。スパイスカレーの可能性は無限です。

――どれくらいの種類のスパイスを使われるんでしょう?

yamakoさん:ホールスパイスというか、形があるものは4種類、他にパウダーがあれと、あれとあれと……。ざっくり10種類くらいでしょうか。

慎重派店主は、一皿一皿に全力勝負。

――独立するきっかけとなった素敵なお店があるということでしたよね。「podoco」さんのどこかにもそのお店のエッセンスがあるんでしょうか?

yamakoさん:おしゃれなオーナーで、インテリアのチョイスもセンス抜群だったんですよね。私はそこまでこだわりはなく、好きなものは何でも置きたいなと思っているんです。音楽好きの姉夫婦がチョイスしたポスターとかキャラクター小物だとかも置いちゃっています。

――お店の雰囲気やInstagramでの発信から、自然体でカッコつけていない感じがしました。

yamakoさん:本当ですか? それは嬉しいです。気軽に来てもらえるお店にしたいんですよ。かしこまって緊張するとか、音を出さないように気をつけちゃうとかそういう感じではなくて。だから、そう思ってもらえたのなら安心しました。

――オープン後の心境はいかがでした?

yamakoさん:勢いで「やります」と言葉にして、そのままどんどん準備を進めたんですけど、いざ営業がはじまったら、なんかもう「ほんとにお店はじめちゃった」「どうしよう」って怯えていました(笑)。初めてのお客さまが美味しく食べてくださっているか様子を見たいんだけど、怖くてそちらを向けなくて。「残していたらどうしよう」「水ばかり飲んでいたらどうしよう」って。最初は「カレー屋だってバレたくない」とも思ったくらいです。だってお食事はカレーしかないってなると逃げ道がなくなっちゃうじゃないですか。

――それは味の評判が心配だったのか、経営的な面だったのかどうなんでしょう?

yamakoさん:両方ですかね。だから「この一皿で人生決まる」ってくらいの気持ちでカレーをお出ししているんです。お客さまがひと口食べたら、もうジャッジが下されるんだって気持ちで。

――半年経って、今はどうですか?

yamakoさん:2回目、3回目とお客さまが来てくださるかって不安はずっとあります。でも自信を持とうと思いました。せっかく「podoco」へ来てくださった方が「美味しかったです」と伝えてくださるのだから、それを信じます。素直に。今は「私は人に支えられているな」って心底思うんです。沼垂テラス商店街の皆さんとも仲良くさせてもらっているし、家族も応援してくれます。ひとりで営業しているんだけど、「みんながいる」って感じています。

podoco

新潟市中央区沼垂東3-5-15

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