“うちの子を思い出す”、猫愛に満ちたこだわり。アニメを見たら猫好きがさらに増えるかも?『ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット』カオル役・上田麗奈さん&ツツミ役・芹澤 優さんインタビュー
ある日、猫に触った人が猫に変貌してしまうウィルスにより“ニャンデミック”が発生した世界で、猫好きなのに触れることができない人間の猫愛とジレンマを描いた『ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット』が遂にアニメ化! 2025年7月7日よりテレ東、BSテレ東、アニマックスほかにて放送開始、ABEMAで1日先行配信!
アニメ化を記念して、クナギが働く猫カフェの先輩店員のカオルを演じる上田麗奈さんと、カオルのクラスメイトで同じく猫好きのツツミを演じる芹澤 優さんの対談をお届けします。
作品の印象やキャラの紹介だけではなく、お二人のあふれ出る猫愛と同じ事務所で同期ならではの秘話などたっぷり語っていただきました。
【写真】『ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット』上田麗奈&芹澤優インタビュー
ハードとキュートがミックスした世界観で、ゾンビ映画のようだけど怖くない!?
――この作品との出会いと印象をお聞かせください。
カオル役・上田麗奈さん(以下、上田):オーディションの時にこの作品を知って、当時発売されていた第4巻まで読ませていただきました。まず画力が高すぎるところに衝撃を受けて(笑)。絵柄はシリアスな雰囲気なのに、内容はコミカルだったり、かわいらしくて、「ギャップに脳がバグるな」と思いました。クナギさんはまさか頭の中がかわいい猫ちゃんだらけなんて想像もできないような表情で描かれていたり、個性的で他にはない作品だなと思いながら読み進めていきました。
ハードとキュートがミックスされてコミカルな世界観に仕上がっている印象で、さながらゾンビ映画のように逃げ惑う市民に悲劇性を感じつつもこの世界の住人はみんな猫ちゃんが大好きなので、猫ちゃん愛や猫ちゃんファーストなところは「わかるよ」と共感したり、思わず笑ってしまったり。そして共感できたことで、自分も相当猫好きなんだと自覚させられました。
ツツミ役 芹澤 優さん(以下、芹澤):私もオーディションを受ける前に読ませていただきました。海外映画やドラマのゾンビものみたいな迫力がありますが、なぜか全然怖くなくて。ゾンビになるのは怖いですが、自分が猫になると思ったら怖いけど、怖くないし、「猫になってもまあ、いいかな」みたいなせめぎ合いもあって(笑)。
そして、洋画や海外ドラマに出てくるような屈強な男たちが猫にメロメロになっている姿がおもしろくて、新しいジャンルの作品を読んでいる感覚で楽しませてもらいました。
三池総監督の印象とオーディション秘話。上田さんがオーディションで会えなかった理由とは?
――このアニメは実写映画やドラマで有名な三池崇史さんが総監督をされていることも話題になっています。
芹澤:三池監督の作品はTVで『妖怪大戦争』を観たことがあるくらいですが、名前はもちろん存じ上げていて。オーディションも他の作品の時とは雰囲気が違って、ディレクションの仕方も独特で、声の強弱とかではなく、各シーンでの心情的なところでアドバイスをしてくださったり……あとすごく笑っていました(笑)。
上田:そうなんだ!?
芹澤:ツツミがお腹を空かせているシーンを演じる時、私もお腹がぐーぐー鳴るのが止まらなくて。それがすごくウケたらしくて、ずっと笑っていたのが印象に残っていて。とてもフレンドリーでおもしろい方だったので、ぜひ今後も一緒にお仕事できたらいいなと思いました。
上田:私のオーディションの時、演じる前にごあいさつさせていただこうとしたんですけど、スタッフさんがたくさんいらっしゃって三池総監督が見つけられなくて。三池総監督からの要望を伝えてくださるディレクターさん経由でやり取りをしていたので、どんな方なのか、どんな表情をしているのかは全然わからなくて。
スタッフ:芹澤さんの時は直接立ち会われましたが、上田さんの時、三池総監督は海外にいらして、時差があったのであとで録画したものをご覧になりました。また事前に三池総監督から言伝を預かっていたので、それをディレクターが上田さんにお伝えしました。
上田:そうだったんだ!? どうりで見つからないわけですね(笑)。第1話でご一緒した時には多くを語らず、寡黙な印象が強くて。でもディレクションの時に総監督の中にあるプラン、作品やキャラクターへの理解はしっかり感じられて。ただ言葉数が多くないので、単語単語を拾って、自分の中でかみ砕いてどう構築しようかと序盤は悩みましたが、お話を聞くとあえて言いすぎないことで、役者さんの芝居を固めないように、変に凝り固まった感じにならないようにという意図があったそうです。
本当にたくさんのことを考えながらひとつの作品に向き合っていらっしゃる方なのかなと。どうやって声優さんに自分の気持ちやプランを伝えるのかを毎回試行錯誤して、ブラッシュアップしながらこの現場に向き合っているのを感じていました。すごく真摯に熱く向き合っていらっしゃるんですよね。ふとした時に笑顔になると思わずこっちも笑顔になってしまう表情も素敵でした。
カオルは責任感と正義感が強い女の子。ツツミはいじめられっ子だったけど実は表情豊か!?
――ご自身が演じるキャラの紹介をお願いします。
上田:カオルはクナギさんから「厳しい物言いは愛情の裏返し、相手を思ってのこと」という評価を得ていたり、毎日猫一匹ずつの体調も気遣う責任と思いやりがあると言われていますが、まさしくその通りの方だなという印象があります。
クナギさんが仕事面でもプライベート面でも困らずにやっていけるように、仕事の進み具合をチェックしたり、次に何をしたらいいのかを伝えたり。勉強も先生のようにドリルを確認したり、世話を焼いている様子が序盤から描かれていて。倒れているクナギさんを拾ってくるところも正義感の強さや人の良さが感じられますし、「面倒をみなくては」という責任感の強さもあるなと。
ツツミがプリントを落として困っていたら拾い集めたり、木登りしているところを見たら「どうしたんですか?」と尋ねたり、そういうところも素敵です。あと私にはない部分ですが、人に対して厳しく注意ができるのも「本当に優しい人だな」と。自分を装ってあえて厳しい物言いをするのも「これはきちんと言ったほうがいい」と判断して言える強さや頼もしさも優しさゆえなので、カッコいい印象もあります。
芹澤:ツツミはカオルと同じ高校に通っている女の子です。大の猫好きなんですけど、猫アレルギーというジレンマがあって。カオルに出会う前は学校でいじめられていて、その理由は明確には描かれていませんが、ちょっと内気だったり、外に自分の想いをまっすぐに表わしにくい子なのかなと。でも一人でモノローグをしゃべっている時はすごく楽しそうで、いろいろな想いもあって。カオルに助けてもらった後は「今日は頑張れそう!」と言ったり、すごく明るい部分もあります。
実は海外映画、特にアクション映画が好きで、感情も豊かですし、いろいろ思っていることもあるけど、うまく表現できないから意地悪されてしまうのがかわいそうだなと。あと彼女の猫アレルギーによって切り抜けられるピンチもあるので、とても重要なキャラになっているかなと思います。
――演じる時に意識されたことやディレクションなど教えてください。
上田:最初に「もっと元気に」というディレクションをいただきました。その時、中にある優しさやお人好し感などが表に出るよりも強さや頼もしさが表に出るように生きている人なんだろうなと感じて。あとクールな表情も多いんですけど、「もうちょっと感情豊かに声で表現できたほうがいいのかな」とか、最初の「元気に」というディレクションからいろいろ想像して、そのあたりを意識して「できる範囲で頑張ろう」と思って演じていました。
「戦士感は薄くしたい」というお話もいただきました。戦い慣れしているのではなく、最初は普通の女の子として猫ちゃんの間をかいくぐって、逃げ惑っていくところは表現していきたいということも言われていたので、そこも意識しながらやりました。ツンデレっぽい要素もあるので、猫ちゃんっぽい人だなと思うし、かわいらしいですね。
芹澤:オーディションの時は、シーンとの兼ね合いもあって割と明るくやっていましたが、最初に言われたのが「いじめられていた子なので、カオルにまだ心を開き切れない最初の段階や言葉がまっすぐ出せない感じを表現してください」と。
ツツミのセリフは「え~と」など一つ言葉に詰まったように、想いをうまく口に出せない感じや、学校生活をうまく過ごせないところ、スマートに生きていけない感じを「もっといじめられっ子で!」と言われました(笑)。
同期の二人はお互いにリスペクトし、引っ張り合う仲
――お二人で掛け合いをされた感想やお互いのお芝居についての感想をお聞かせください。
上田:芹澤さんは「こういう形で話そう」と決めるのではなく、その時に感じたことやふっと出てきた気持ちを大事に、セリフを言っているイメージがあります。何度かテスト、本番、リテイクをやり直した時、同じセリフでも全然違うニュアンスや言い方になっていて。でもツツミとしての軸はブレていなくて。
理解力と表現する時の自由度の高さは聴いていても楽しいし、納得しながらツツミを見ていけるので、見応えがあるお芝居をされる役者さんだなと思っています。だから掛け合っている時もテストと本番では、私も同じにならないタイプで、それが良く働く時もあれば、悩みに変わる場面も多いんですけど、ツツミがそれに合わせて受けてくれるので、「ありがとう」って感謝しています。
芹澤:ウソ~! 私は引っ張ってもらっている気持ちだったよ。
上田:逆! 逆!
芹澤:カオルがキャラクター性でもしっかり引っ張ってくれて、ツツミは一生懸命ついていく、みたいな感じだったし、お芝居でもカオルの言葉には重みと説得力があるけど、ちゃんと理由を伝えてくれるから、「カオルのセリフをちゃんと聴いていれば、ツツミとして何かきっと出てくるはずだ」と信じてのっかっていける安心感が麗奈にはあります。そもそも同期なんですけど、最近はあまり掛け合いする機会がなくて。私は麗奈のお芝居が大好きだから、今そんなふうに言ってもらえて嬉しいです。
上田:私も嬉しくなっちゃう(笑)。私も乗せてもらっているし、感謝しかありません。私も大好きだけど、会うたびに変わっていっているから、悩める状態も悩みから開放された状態も、どっちも知っているからこその変化……。それは成長なのかはわかりませんが、どんどん進化している感じがするので、私にとって尊敬している人です。
芹澤:こちらこそです。麗奈がどんどん先に行くから頑張って走っている感じで、全力で追いかけています。
アニメではリアルな猫の動きと、誰かが飼っている猫の鳴き声に注目! もしかしたら上田さんや芹澤さんの愛猫の声も!?
――公式サイトのキャストの各コメントの上に飼っている猫の写真も掲載されていますが、珍しいですし本作ならではの遊び心ですよね。
上田:キャスト発表の時、先に猫ちゃんたちの名前が出ていて(笑)。
芹澤:そうそう!
――猫好きから見たこの作品での猫の描写についてはどう思われますか?
上田:アニメでの猫ちゃんの動きもリアルですし、原作でもすごくリアルに描かれているんですよね。でも一コマの中にたくさんの猫ちゃんがいるので、アニメ化してみんなを動かす時、「どれくらい動くのかな?」とか「スタッフの皆さんが疲れ切ってしまわないかな?」とか心配していましたが、完成した映像を観たら一匹一匹が違った動きをしていて、ちゃんとその子の機嫌や性格がわかるように描かれていました。
「ご飯だよ~!」と言ったら、みんなが駆け寄ってくるシーンでも「この子はご飯が好きなんだろうな」というふうにすぐに駆け寄って来る子もいれば、ゆっくり来る子もいて。一つのカット内でもちゃんと差がわかるのはすごいなと思って感動しました。
芹澤:あと猫ちゃんの鳴き声もそれぞれ違っていて。体格によって声が違うし、本物の猫ちゃんの声を使っているそうで。私たちにも「もしよろしければ猫の声を使わせてもらえませんか?」と。
上田:現場で募集していました(笑)。
――ということはお二人や他のキャストの飼っている猫の声が聴ける可能性も?
上田:ありますね。もしかしたらですけど。
芹澤:今のところはうちの子の声はまだ見つかりません(笑)。それくらい一匹一匹の声にもこだわられています。
上田:猫はこんなに表情豊かな声をしているんだということが猫好きの方には「わかる! わかる!」となるでしょうし、触れたことがあまりない方も「こんなに猫によって違うんだ!」という驚きと「かわいい!」って思える要素が詰まっているのではないでしょうか。
芹澤:あと猫ってツンデレだと思われがちですが、個体によって全然性格が違っていて。すごくすり寄ってくる子もいれば、まったく遊ぶ気がない子もいるし、その日の機嫌によっても態度が違うし。この作品ではボスになる猫も登場しますが、貫禄がすごくて。猫ごとに物語があることを感じられるのもおもしろかったです。
――芹澤さんがおっしゃられた通り、描写や音楽、演出などが実写っぽいところはリアル感がありますね。
上田:暗いところはとことん暗くて。そういうところは実写映画の雰囲気に近いなと思いました。でも明るいところはちゃんと作られていて、メリハリが効いていますね。特にゾンビ映画っぽいシーンは実写っぽいなと。
――猫好きにとってはゾンビ映画っぽくてもかわいく感じますが、動物嫌いや猫嫌いの方にとってはそのままゾンビ映画みたいに楽しめますね。
芹澤:猫に触れたことがない方はいても、猫嫌いの人が観たらとはまったく想像もしてませんでした。
上田:二重で怖くなるのかな? ゾンビよりも猫が怖い!とか。猫嫌いな方は観たら「どうしよう!」とパニックになったりするかもしれませんね。でもあの鳴き声を聴いてしまったら「かわいい!」ってなるんじゃないかなと思うし、「これでもか!」というくらい猫の素晴らしさをずっとPRしているような作品なので。誰にも頼まれていないのに(笑)。その熱量はきっと伝わるのではないかなと信じています。
芹澤:観たら苦手意識が変わるかもしれないくらいおもしろいので、もしかしたら猫嫌いや動物嫌いを克服するのにも最適かもしれません。
お二人から序盤の見どころとお気に入りの猫の動きをご紹介!
――猫好きにとっての序盤の見どころと第1話でお気に入りの猫の動きを教えてください。
上田:猫の声や動きがリアルなだけではなく、人間たちの猫愛が見られるのも魅力的だなと思います。狂気と歓喜が入り混じった叫び声ひとつとっても、収録ではすごくこだわっていましたし、メインキャラ、サブキャラ関係なく、等しく一つひとつのセリフに猫愛が感じられるように、三池総監督が丁寧にディレクションしてくださいました。そんなこだわったニュアンスを各シーンで楽しんでいただけたら。
猫を守るための行動や言葉などのチョイスも秀逸で、本人たちは普通で、笑いどころではないけど、思わずクスっとしてしまうワードセンスは原作から素晴らしくて。そんな猫を愛する人間たちの行動や悲哀にも注目してもらえたらいいのかなと思います。あとCパートも……。
芹澤:私も思った! 全編通じていろいろな猫愛が感じられますが、Cパートでは役に立つ猫愛が観られます。猫の飼い方や習性がわかるし、気軽に猫を飼ってはいけませんよという注意があったり、Cパートの短い尺の中で様々な猫知識が学べます。猫を飼っている方はうなずけると思うし、飼っていない人は「猫ってこんなことを気を付けないといけないんだ」と勉強になります。そしてこのアニメを全話観終わった時、猫好きがさらに増えるのでは?
上田:あとかわいい猫ちゃんたちを観ていると癒されます。また好きな猫の動きは、小さな穴から出てくる動きです。原作でも好きでしたが、アニメでもめちゃめちゃリアルでした。うちの子は二匹いますが上の子がぷくぷくしていて、ソファやタンスの下から出てくる時に苦しそうに出てくることが多いんですけど、その時に頑張って出てくる感じがそっくりで、あのシーンを観るとうちの子を思い出すし、印象深いです。
あと猫になってしまったタニシさんがクナギさんと別れる時にお腹を見せるようにゴロンとするシーンも原作を読んでいた時から一番好きなシーンです。「猫になってもクナギさんを信頼しているんだな」と私にとっても最大の泣きポイントでした。「もし私がタニシさん側だったら離れられないかも」と思ったら寂しすぎて泣いてしまいました。
芹澤:クナギさん側だったら絶対に連れていきたくなっちゃう。
上田:ゴロンの動きからの「ニコッ」もセリフも声も含めて全部がかわいくて。好きなシーンだったので、皆さんにも楽しみにしていただきたいです。
芹澤:私が好きな猫の動きは、猫を守るために車を一台ダメにしてしまうシーンです。猫のためにこっちが必死になっているのに、猫はのんきにしていて。
私も似たような経験があって、ちゃんと猫が留守番できているのか気になっちゃって、出かける途中で走って家に引き返したことがあるんですけど、着いた途端に「大丈夫っ!?」と声を掛けたら、「何かあったの?」みたいな顔をして。ペロペロ舌を出しながら「何でそんなに焦ってるの?」って。
ゾンビ空間で車は命綱みたいなものですが、それをダメにしても猫を傷つけるわけにはいかないと。そこで猫ののんきなグルーミング(毛づくろい)や猫の集会があって。その落差がかわいかったのでぜひ注目してください。
撮影:MoA