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人コワ系ホラー『スピーク・ノー・イーブル 異常な家族』レビュー 「どこかおかしい」親切な男をジェームズ・マカヴォイが怪演

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(カナダ・トロントから現地レポート) 2022年のデンマークのヒット作『胸騒ぎ』を基にブラムハウスがリメイクしたホラー映画『Speak No Evil』(邦題:『スピーク・ノー・イーブル 異常な家族』)が、2024年9月13日金曜日に北米で劇場公開を迎えた。『X -MEN』シリーズなどのジェームズ・マカヴォイがカリスマ的な男パディを演じ、パディの妻役に『ナイチンゲール』のアシュリン・フランシオーシ、パディたちに出会うアメリカ人夫婦役を『ターミネーター: ニュー・フェイト』のマッケンジー・デイヴィスと『アルゴ』のスクート・マクネイリーが演じる。脚本・監督は『ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館』のジェームズ・ワトキンスが務めた。

休暇をイタリアで過ごしていたアメリカ人夫婦のベンとルイーズ、そして一人娘のアグネスは、イギリス人夫婦のパディとシアラに出会う。仲良くなり意気投合した夫婦は、ベンたちの住む美しい田舎町の家に招待される。

アグネスは不安症を抱えており、ベンとルイーズは「この休暇が娘にとっていいものになるのでは」と考え、家を訪れることに。そこには、ベンとシアラの息子アントがおり、口を聞こうとしなかった。一緒に過ごすうちにベンがベジタリアンのルイーズに無理やり肉を食べさせ、シアラがアグネスにしつけをし始めるなど、彼らの“異常性”が見え隠れする。

夢のような休暇だったはずが、ベンとルイーズは徐々に心理的な悪夢に悩まされてく。一方アグネスは、アントと一緒に遊んでいくうちに、一家の恐ろしい秘密を見つけてしまう。

本作で描かれているのは、現代によくあるシチュエーションだ。仲良くなった人の「どこかおかしい」と思った部分をすぐに指摘することができず、その場の雰囲気を壊さないように、そして相手を怒らせないように笑顔で乗り切ろうとする。そういった夫婦に起こる悲劇は、「人ごと」だとは思えない。

“ブラムハウスのホラー作品”とあって、思わず飛び上がる恐怖のシーンを期待する人も少なくないだろうが、本作ではそういうシーンは全くなく、人間の心理的な恐怖を全面的に描いている。胸が痛くなるほどの緊張感をベンとルイーズの目を通して体感することができるのだ。

マカヴォイといえば、M・ナイト・シャマラン監督の『スプリット』で多重人格者を見事に演じ、その圧倒的な演技に驚かされた観客も多いだろう。本作でもその魅力は健在で、『スプリット』に引けを取らない迫力の演技を見せてくれている。特に、マカヴォイが叫ぶシーンや、アントを鋭い視線で急に威嚇する瞬間は、背筋が凍り、鳥肌が立つほどの恐怖を感じられる。親しみやすい雰囲気から、冷酷で危険な人物へと一瞬で変貌する様子は、まさにジェームズにしかできない巧みな表現だと言えるだろう。

またパディはかなり筋肉質で、堂々としたキャラクターだが、体作りについてジェームズは「運が良かっただけでした」ととのインタビューで明かしている。彼は新型コロナウイルス感染拡大によるパンデミック中、ひたすら重いウェイトを持ち上げ、食べる量も増やしていたという。そのため本作の脚本が手元に届いた時には、すでに筋肉質の体型になっていたそうだ。「『パディを演じるのに役に立つかもしれない』と思いました。(役作りのために)意識したのではなく、タイミング的にうまくいっただけでした」。また撮影は時系列にほぼ沿って行われたそうで、映画の序盤ではソフトな印象を与えるために、エクササイズの量を減らし、後半では体を引き締めるようにしたという工夫についても明かしている。

ジェームズは、これまで『スプリット』や『ミスター・ガラス』などでブラムハウスとヒット作を生み出してきた。そんな”最強タッグ”が生み出す新作心理的スリラーは、期待を裏切らない恐怖を与えてくれる。『Speak No Evil(原題)』は、邦題『スピーク・ノー・イーブル 異常な家族』として2024年12月13日に日本公開される。

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