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4年ぶりの中国開催 本格的サーキットで体感した「フォーミュラE」真の迫力

PARCFERME

5月25日から26日にかけて、上海にてフォーミュラEが開催された。場所はF1も行われる上海インターナショナルサーキット。BEV(電気自動車)のメッカでもある中国での開催に、3月の東京E-PRIX同様に取材を敢行した。

筆者が十数年ぶりに訪れた上海サーキットは、今や地下鉄直結となり、上海中心部から公共機関で1時間もかからず到着する。市街地サーキットを除けば、数ある国際サーキットの中で最もアクセスしやすいと言えるだろう。

また地下鉄も日本以上に洗練され、海外からの来訪者にもわかりやすく、駅には大型バッグを通すXレイの検査機に加えて警官が常駐しているので、テロはもちろん、窃盗などの不安も少なく精神的にも安心できるように思われた。

加えてコロナ禍を経たせいか、少なくとも目に留まる部分は清潔で、制服を着た清掃員が常時動き回っているのも印象的であった。

1レース開催だった東京と異なり、4年ぶりの開催でいきなり2日間に亘り2レースが行われる事からFIAの力の入れようが見て取れる。一方で、F1モナコGPと重なった日程からか、取材しているジャーナリストの数はあまり多くない印象で、プレスルームはやや閑散としていた。

東京同様にインフルエンサーと思われる現地の20代の男女が、動画配信をサーキットから行なっている姿に加え、およそレース取材向きとは言えないハッセルブラッドなどの中版カメラで撮影していたのも印象的だった。地下鉄同様に、ここでも全く自分の機材が盗難される心配もなさそうだったのが、中国が豊かな国になった証の1つのように感じられた。

フリープラクティス、予選はさほど短いとは感じないが、決勝が40分前後と極端に短いということは東京のレースで体感していたので、慌てることはなかった。ただし久しぶりの上海インターナショナルサーキットゆえに、2日開催でなければ撮影場所の狙いも定めにくかったと、後日思うところである。

マシンの性能差が少ないため、決勝ではスタートから数周にわたって多くのバトルが繰り広げられる

本格的なサーキットで体感する新たな迫力


上海インターナショナルサーキットで走るGen3と呼ばれる最新のマシンは、長いホームストレートをまるでジェット機のタービンのような音(本当はモーター音だが)を纏い、空気を切り裂く印象で駆け抜けていく。F1の大迫力とは全く異なる種類の力強さだ。テレビで見ているとこの高周波を伴う臨場感を、ほぼ味わうことができない。

また本格的なサーキットであるから、エンジン音のない代わりに、タイヤのスキール音やシャシーが縁石でバンプする音がよく聞こえる。東京の市街地サーキットとは段違いの鋭さだ。

もちろん、チームによるマシンの性能差が少ないせいか、決勝レースの前半は毎戦かなり団子状態の接戦が続く。そして、セッティングとパワーマネジメントに成功した数台が徐々に上位を占め始める。

東京・お台場の市街地サーキットにくらべ、上海サーキットは道幅がずっと広く、オーバーテイクのチャンスが多い。全長も、東京の2.58kmに対し、3.05kmと約2割ほど長い。ドライバーとチームによる駆け引きはより複雑化する。周回を重ねるごとに、その日のセッティングのハマり具合が現れはじめる。

そしてレースの最後は如何にパワーを温存しているか、が勝敗を決するわけだ。現在のF1がそれと同じ部分を、タイヤマネジメントに大きく依存するのと似ている。

25日の第11戦は、この数レースで振るわなかったジャガーTCSレーシングのミッチ・エバンスが今シーズン2勝目を挙げた。当日の予選セッションで3番手につけたエバンスは、レース展開を通してマシンのエネルギーマネジメントに注力したという。

11周目までに2回のアタックモードを行使し、トップ6から1度も外れることなく周回を重ね、13周目にタグ・ホイヤー・ポルシェのアントニオ・フェリックス・ダ・コスタからトップを奪いとる。それ以降も、同じタグ・ホイヤー・ポルシェのパスカル・ウェーレインと首位争いを繰り広げ、最終ラップにターン1のアウト側からトップに躍り出てそのままフィニッシュ。まさに劇的な幕切れとなった。

そして翌日の12戦、レースを制したのは、前日に苦渋を舐めたアントニオ・フェリックス・ダ・コスタだった。

前日の決勝よりも1周短い28周で競われたレースは、電気エネルギーのマネジメントが容易となったことで各車のペースも明らかに上がっていた。ダ・コスタは16周目のターン1でアンドレッティのノーマン・ナトを交わしてトップに立った。最終的にはアタックモードの発動が先頭集団で最も遅かったこともあり、ポジションを落とすことなくトップを維持。彼にとっても今季2勝目を果たす。

シーズンでポイント争いのトップを走るジャガーTCSのニック・キャシディは、フロントウイングが外れそうになるというアクシデントもあったが、結果4位でフィニッシュ。前日も3位であった事からライバルとの点差を確実に広げることに成功している。

ニックの競合の一人、パスカル・ウェーレインは中団でバトルをしている際にマクラーレンのサム・バードと接触。リヤタイヤがパンクしてしまい、ピットインを余儀なくされ20位に終わり、ポイントリーダー、キャシディとの点差は25点となった。

もう一人のライバル、日産のオリバー・ローランドも12戦は10位という結果で、ポイントランキングでは前日の第11戦で優勝したミッチ・エバンスにかわされ4番手に後退となった。

サーキット開催故に、トップ3は自分のマシンを眼下に置く形で表彰を受ける。東京ではみられなかった、F1を踏襲したスタイル

レースとしての面白さはF1を超えていく

レース結果もさることながら、トップの平均スピードは1日目が139.1km/h、2日目は141.8km/hと公式に発表されており、東京の優勝者の平均スピードと比較して約40km/hも速い。さらに上から5位までがほぼ同じ平均スピードであることから、如何に接戦だったかが分かるというものだ。

本格的なサーキットで開催されたからこそ、近年のF1のような圧倒的なチャンピオン、そして上位チーム、中位、下位といったヒエラルキーが無い事に気がつく。すなわちレースそのもの、チャンピオンシップの行方という点でも、フォーミュラEは俄然面白さを増すわけだ。

加えてマシンが画一的な反面、マクラーレンやポルシェといった老舗のレーシングチームに、ジャガーやマセラティといった往年の高級車ブランドも並ぶ。さらに来年からはそこにヤマハのパワーユニットを搭載したローラが加わるのだ。

ある意味古典的でありながら、音などの感覚面、チームとドライバーの戦略面としては全く新しいモータースポーツ、フォーミュラE。本格的なサーキットでも発揮されるその面白さ、迫力がさらに進化することで新しいファンを獲得し、着実に世界で浸透していくだろう。その事を確信した上海E-PRIXの取材であった。

J.ハイド
写真家、プロモーションプランナー。広告会社で全国キャンペーンやCM制作、ECサイトブランディングなどの担当をする傍ら、ドローンを始めとする様々な撮影技術を学ぶ。
2020年末に独立し、写真撮影とDX時代のプランニング会社、イージスビジョンを立ち上げ。新車の発表があるとディーラーで試乗も楽しむ一般目線の車好き。ランチア、アウディ、BMW、ボルボなど9台を乗り継ぎ、今年、初代レクサスNX 200tに乗り換える。ニコンのフラッグシップ数台を駆使しココロに残る写真を追求している。

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