マイナビ辞め独立5年。収入が約3倍になった私が、本音はフリーランスを辞めたい理由。「楽しいわけじゃねぇ」
スタジオパーソル編集部が、世に発信されているさまざまな個人のはたらき方ストーリーの中から、気になる記事をピックアップ。今回は、独立5年目の起業家がはたらき方に関する「本音」を告白したエピソードをご紹介します。
大手人材紹介会社に17年勤めた後に独立した羽田啓一郎さん。起業5年目を迎え、安定した収入を得る一方で、ある悩みに直面します。それは、多くのはたらく人々の心に響く、普遍的な問いかけでした。
※本記事の引用部分は、ご本人承諾のもと、投稿記事「独立して5年目。本音は、フリーランス辞めたいという件」から抜粋したものです。
「楽しいわけじゃねぇ」成功の影で消えない本音
羽田さんは、17年間のサラリーマン生活を経て、コロナ禍の2020年に独立し法人を立ち上げました。代表取締役という肩書があるとはいえ、はたらき方としてはフリーランスと同じだと言います。緊急事態宣言下でのスタートという逆境の中、着実に成果を上げていきました。
複数の会社からの案件受注に加え、大学での講師業にも従事。「こんなに稼げるとは思わなかった」と本人も驚くほどの収入を得て、自由な生活を謳歌しているように見えました。
しかし──。
「楽しいですか?」「仕事のやりがいは何ですか?」と聞かれると困るのですよ。楽しいわけじゃねぇ、と。
「独立して5年目。本音は、フリーランス辞めたいという件」 より
羽田さんの姿は、世間の目には順風満帆な経営者として映っていたかもしれません。しかし、その胸の中で、はっきりとした違和感を抱えていたのです。
ストレスフリーよりも、お金よりも、大切なもの
そもそも羽田さんが17年間務めた会社を辞めた理由の一つは、人間関係のストレスでした。独立してそのストレスからは解放されましたが、羽田さんは思わぬ課題に直面することになります。
好きな人たちと都合の良い時にしか一緒に仕事をしないということは、言うなれば本当に大切なことは誰とも何も共有していないに等しい、のです。
「独立して5年目。本音は、フリーランス辞めたいという件」 より
同僚と同じ目標に向かって奮闘する喜び、困難を一緒に乗り越えた時の達成感、そして日々の些細な会話や笑い声──。組織の中にいるからこそ感じられる「大切なこと」を、誰とも共有できていないことに、羽田さんは気付いてしまったのです。
人間関係は時に面倒で厄介なもの。しかし同時に、仕事の喜びややりがいにつながる大切な源でもあると、身をもって感じたのでした。
そしてもう一つ、皮肉な問題に直面します。「こんなに稼げるとは思わなかった」という、喜ばしいはずの収入の問題です。実際のところ、会社員時代と比べて約3倍の収入を得られるようになっていました。
最初のうちは、銀行の残高が増えていくのがモチベーションになっていたという羽田さん。しかし、ある程度安定的に稼げるようになると、目指すものがなくなり、次第に飽きを感じ始めました。さらに、せっかく稼いでも税金は増えていく一方で、お金をたくさん稼ぐことでは心が満たされないことにも気付いたのです。
じゃあ何のために働くのか?目的もなく、依頼された仕事をこなしてそのまま死ぬのか…?それは嫌だ──
「独立して5年目。本音は、フリーランス辞めたいという件」 より
この葛藤は、羽田さんの心に小さな炎を灯しました。失ったものの価値を再認識すると同時に、新たな思いが芽生えていきます。それは、単なる仕事以上の何か、本当の意味でのやりがいを求める気持ちでした。この思いに突き動かされ、次の挑戦へと踏み出すことを決意したのです。
独立5年目で気付いた、「生きている」を実感するためのはたらき方
羽田さんの挑戦、それは少人数の組織をつくることでした。それは単なる会社設立ではありません。目指すは、チームで価値あるサービスを生み出し、それを通じて収益を上げる仕組みです。
新たな組織づくりを通じて、羽田さんは独立してからの5年間で失ったものを今取り戻そうとしています。仲間と共に目標に向かって進む喜び、そして社会に価値あるサービスを提供する充実感。これらが、新しいやりがいにつながると信じて。
一方で、羽田さんはこうも語っています。
僕のテーマはあくまで自由。今のチャレンジも、自分のためでもあります。自分自身の人生を犠牲にするつもりは1ミリもありません。
「独立して5年目。本音は、フリーランス辞めたいという件」 より
新たな挑戦の中でも、自由を大切にし、自分の人生を犠牲にしない姿勢は揺るぎません。
何となく生きない。しかも、ただ単に忙しいというわけではなくチャレンジをします。チャレンジは、失敗する可能性があってこそ。無理めなチャレンジをしてこそ、生きてる醍醐味です。
「独立して5年目。本音は、フリーランス辞めたいという件」 より
羽田さんの言葉には、新しい挑戦への清々しい決意が溢れています。自由を大切にしながら自分らしいはたらき方を模索する羽田さんのストーリーは、私たちにキャリアを見つめ直すきっかけをくれているような気がします。
キャリアに正解はありません。自分なりの答えを見つけ、そこへ向かって一歩を踏み出す勇気さえあれば、きっと新しい景色が見えてくるはずです。
<ご紹介した記事>「独立して5年目。本音は、フリーランス辞めたいという件」【プロフィール】羽田 啓一郎温泉ソムリエ|ライティング|旅行業者|個人事業【湯けむり津軽】|元地域おこし協力隊|元IT系会社員|カラオケ好き|ドリア好き|一生温元マイナビ社員。大手企業の新卒採用営業やキャリア甲子園、課題解決プロジェクトなどのキャリア教育新規事業を立ち上げた後、2020年に独立し、株式会社Strobolightsを創業。学生の声を起点としたサービスやCAERRE ROOKIESなどのビジネスコンテストを主催。立命館大学産業社会学部客員教授。武蔵野大学非常勤講師。一般社団法人プロティアン・キャリア協会認定ファシリテーター。立命館大学産業社会学部客員教授です。座右の銘は「諸行無常」です。
(文:間宮まさかず)