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【杉山清貴インタビュー】① 40周年ツアーのオメガトライブとシティポップの魅力を語る

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2024年05月31日 杉山清貴&オメガトライブの40周年ツアー「〜FIRST FINALE TOUR 2024〜 “LIVE EMOTION”」最終公演日(NHKホール)

杉山清貴&オメガトライブ ファイナルツアー
〜FIRST FINALE TOUR 2024〜 “LIVE EMOTION” テレビ初独占放送!
放送日時:7月28日(日)よる8時~(歌謡ポップスチャンネル)

新たなファンも魅了し続けている杉山清貴


1983年4月に「SUMMER SUSPICION」でデビューした杉山清貴&オメガトライブ。夏、海、都会を舞台にした洗練された世界観でヒットを重ねるも1985年12月、シングル7作、アルバム5作を残して解散した。活動期間は2年8ヶ月だったが、その音楽性は色褪せることなく、昨今のシティポップブームも相俟ってリアルタイム組はもちろん、新たなファンも魅了し続けている。

2024年3月からスタートした40周年ツアー「杉山清貴&オメガトライブ 〜FIRST FINALE TOUR 2024〜 “LIVE EMOTION”」はこれまでに全国30公演で5万人を動員。9月15日・16日に地元横浜で開催されるファイナル公演が追加決定するなど空前の盛り上がりを見せている。並行して『LuckyFes 2024』への出演(7月15日)、自身のアコースティックソロツアー(7月6日スタート)など、いつにも増して多忙な夏を送っている杉山清貴に今の心境を聞いた。

世代を超えたシティポップブームの熱気


―― オメガトライブのツアーは追加公演が続々と決定するほど、各地で大盛況です。2004年の復活ライブ以来、期間限定のツアーを開催したこともありましたが、今回のツアーは解散後では過去最大。背景にはシティポップブームもあると思いますが、その熱気を体感する場面はありましたか。

杉山清貴(以下:杉山):どの会場にも必ずといっていいほど外国の方がいらっしゃって、一緒に歌っているんですよ。以前はそこまで目立たなかったので “今はこういう状況なんだ” と。あとは若い方が増えたと思いますね。ステージからなので漠然としか分かりませんが、若いカップルとか、お子さんやお孫さんと一緒に来られている方の姿が目に付くようになりました。

―― オメガのデビューから41年。親や祖父母の影響で聴き始めた “オメガチルドレン” が増えているのでしょうね。5月31日にNHKホールで開催されたセミファイナル公演はアンコールを含めて23曲。歌と演奏はもちろんですが、合間のトークや演出も楽しくて2時間50分があっという間でした。

杉山:ありがとうございます。僕らも楽しんでやっているので、そう言ってもらえるのがいちばん嬉しいです。トークはその場のノリなんですが、ツアーを続けるうちに話題が増えていくので、ネタを持っているメンバーに話を振る感じで。

――「ASPHALT LADY」では血液型別に歌唱指導があって、大いに盛り上がりました。ほかのカテゴリーで分けることもあるのでしょうか。

杉山:いえ。最初はそれも考えたんですけど、血液型だと4つだからちょうどいいかなと。たまたまですが、メンバーも2人ずついますしね。

―― オメガ作品の作曲・編曲を多数手がけた林哲司さんが花束を持って登壇したのも印象的でした。

杉山:ご来場いただいていることは聞いていたんですが、嬉しかったですね。とはいえ、林さんとはしょっちゅうお会いしているので、終演後に改めて言葉をかけられることはなくて「みんなお疲れ様!」「ありがとうございます!」みたいな感じでした(笑)。

セミファイナル公演の見どころは?


―― そのセミファイナル公演の模様が7月28日(日)20時から『歌謡ポップスチャンネル』で放送されます。“特にここを見てほしい” というポイントがあれば。

杉山:「MIDNIGHT DOWN TOWN」でお見せする “コケ” ですかね(笑)。あそこはメンバーといちばん練習したところなので注目してほしいです。楽曲に関しては世界が出来上がっているので、トータルで観てもらって、あの頃を思い出すもよし、メンバー間のやり取りを楽しんでいただくもよしといったところでしょうか。僕らはオメガとしては新曲を出さないと決めていて、皆さんが聴きたいと思っている曲をお届けしていますが、特に今回のステージは1つのショーとして楽しいものを作れたかなと自負しています。

―― 1985年の解散から39年。2004年以降、幾度か期間限定のライブ活動をされていますが、その間、皆さんはどういうコミュニケーションをとられているのでしょう。

杉山:しょっちゅう会っているわけではないのですが、メンバー同士でバンドを組んでいたりするので、時間があればライブに行くとか、そういう交流は続けています。10代の頃からの付き合いですから、会えば一瞬であの頃に戻って “おう!” という感じで会話が始まる。多少ブランクがあっても、かしこまることはないですね。

横浜放送局で親交を深めた仲間たち


―― バンドマンらしい素敵な関係ですね!オメガの前身は “きゅうてぃぱんちょす” ですが、皆さんとの出会いは?

杉山:横浜の関内駅近くのビル内にあった『横浜放送局』というライブハウスです。隣にアマチュアたちを対象にしたスタジオがあって、楽器やPAのレンタルもしていたのですが、僕らは高校生でおカネがなかったので、放課後になるとそこに行って、みんなとコーヒーを飲みながら情報交換をしたり、レコードを貸し合ったりしていました。スターダスト☆レビュー(当時のバンド名は “アレレのレ” )やシュガーのクミやモーリもそこで知り合った仲間です。

―― すごい! 博多の『照和』のような梁山泊だったんですね。

杉山:横浜放送局は僕らがデビューする前くらいにオーナーが身体を壊して閉じてしまったんですけど、近年は横浜のライブハウスを貸し切りにしてときどき同窓会をやっています。あの頃、親交を深めた仲間たちで、今もミュージシャンとして活動している人間がたくさんいるので、バンドメンバー以外ともサークル的な付き合いが今もある。ほかではあまりない関係性で、そういう繋がりがあることも大きいと思いますね。

―― その時代から数えると45年以上となりますが、そこまで長い付き合いとなると、バンドとしてのブランクがあったとしても “ジャン!” と鳴らせば、言葉を交わさなくても成り立つものですか。

杉山:いや~、そんなにカッコいいもんじゃなくて(笑)、くだらないことをダラダラ喋りながら “じゃあ、やる?” みたいな感じで始まります。仕上げるまでの時間がそんなにかからないのは昔からの流れがあるからでしょうね。この齢になって全員がニコニコしながらバカなことを言い合ってやれるって、なかなかないと思いますよ。

―― 不仲で再結成が叶わないバンドも珍しくありませんから、ファンとしては良好な関係を続けている皆さんに感謝です。

杉山:体調を崩した廣石(恵一 / ドラムス)が今回のツアーに参加できなかったことは残念ですが、全員が60代になった今もバンドとして演奏ができるのは幸せなことですよね。

日本人特有のメロディやアレンジのセンスが加わって独自の色がついたシティポップ


―― 先ほど海外からのお客さんが増えたというお話を伺いました。世代や国境を超えて広がりを見せるシティポップブームの現われだと思いますが、その代表格に挙げられるオメガトライブのフロントマンとして、その現象をどう受け止めていますか。

杉山:最初は “え、そうなの?” と意外に感じましたが、すぐに “そりゃそうだよな” と。あれだけのクオリティを持つ音楽って、海外でもそうないですからね。これは私見ですが、日本はずっと洋楽をキャッチアップしようとしてきたじゃないですか。“こういう音楽を自分たちでも作りたい” と思って、最初は真似することから始めたわけですけど、そこに日本人特有のメロディやアレンジのセンスが加わって独自の色がついた。その良さが分かる外国人に受け入れられているんだと思います。それは特にYouTubeによってもたらされた恩恵で、ネットがなければここまでのブームにはならなかった。僕のもとにもSNSを通じて海外からのメッセージがたくさん届くようになりましたが、以前では考えられないことで時代の変化を感じます。

―― 世界的なブームの火付け役となった「真夜中のドア~stay with me」(松原みき)を手がけた林哲司さんがオメガのメインライターであることも注目度を高めた理由のひとつだと思われます。杉山さんからご覧になった林作品の魅力は。

杉山:ひと言でいうと “哀愁” ですね。林さんの曲は哀愁を感じさせるメロディがここぞというポイントで入っている。そこまで丁寧に作っているのは、海外ではデイヴィッド・フォスターとか一部だけだと思います。僕はデビューする前から、歌謡曲とは違うメロディを作る林さんのセンスに惹かれていて “この曲カッコいいな” と思う作品には大体 “林哲司” とクレジットされていました。ですから(所属事務所の社長で音楽プロデューサーの)藤田浩一さんから声をかけられて、作家からの提供曲でデビューさせると言われたとき、最初は “バンドとしてどうなんだろう” という気持ちがあったんですけど、作曲が林哲司さんと聞いて “ラッキー!” と(笑)。しかも作詞が「バスルームから愛をこめて」(山下久美子)を書かれた康珍化さんだったので “このプロジェクトは成功するな” と確信しました。

―― もし違う作家だったらデビューを断っていた可能性もありますか。

杉山:そうですね。もちろんいい曲を書く方はほかにもいらっしゃったと思いますが “林さんと康さんなら絶対いい曲に決まってる!” と。当時の僕らにはAORを作る力量がないことも分かっていましたから、こちらから飛びつきました(笑)。

―― ほかの作家にはない林さんの作風や特徴は。

杉山:林さんには自分が作りたいものが確固としてあるんですよね。“仕事だから、こういうものも作ろう” ではなくて、自分が作りたいものと折り合いをつけながら書かれていたと思うので、そこが新鮮で魅力的でした。僕は洋楽だけでなく歌謡曲も聴いて育ってきましたけど、ミュージシャンとしては歌謡曲的な音楽をやることに抵抗があった。でも林さんのメロディやサウンドには違和感なく入っていけたんです。それは洋楽的なセンスに惹かれたからでしょうね。

“切なさ” を汲み取れる感性


―― 近年は洋楽を聴かない若者が増えているという話も聞きますが、両方を聴いて歌ってきた杉山さんは邦楽と洋楽の違いはどこにあるとお考えですか。

杉山:海外、特に欧米の音楽は時代によってどんどん変わっていきますが、日本は最新のものを追いながら、その一方で過去の音楽を踏襲した作品も新たに作られている。そこが海外とは違う点だと思いますね。

―― 確かに、洋楽のおいしいところを引っ張ってきて日本人好みのポップスに作り替えたり、過去のヒット曲をリメイクしたりする手法は綿々と続いています。

杉山:おそらく日本人が好むメロディや世界観があるからでしょう。たとえば “切なさ” は日本語特有の言葉で日本人が好きな表現だと思うんですけど、そこを汲み取れる感性を持った人が海外でシティポップを聴いているような気がします。

―― 日本の音楽にしかない部分だからこそ注目されていると。

杉山:そうです。先ほど挙げた “哀愁” も日本人好みの感覚ですよね。そういえばこの間、ロサンゼルス在住の娘がうちに来たとき、会話のなかで出てきた “木漏れ日” を “なんのこと?” って訊かれました。彼女は海外生活が長くて、半分外国人なので “木の葉の間から漏れる日差しのことだよ” と言ったら “そんなことまで言葉にしちゃうんだ” と。英語にはそれに該当する言葉がないので、そうやって説明しないと伝わらないんですね。ほかにも “蝉時雨” とか、日本ならではの言葉はいくつもあります。

―― 映像的なイメージが膨らむ、そういう単語がたくさんあるのは俳句の国だからかもしれません。

杉山:自然とともに暮らしてきた先人のDNAですよね。色にしたって、ものすごく多くの種類があるじゃないですか。月の呼び名もいろいろあるし、そういうところが素晴らしいなと、齢を重ねてから感じるようになりました。

【次回予告】第2回は杉山さんのこれまでのキャリアからシティポップ論までお届けします。

Information
杉山清貴&オメガトライブ ファイナルツアー
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