【ピエール・フォルデス監督「めくらやなぎと眠る女」】 磯村勇斗さんの「声の演技」
静岡新聞論説委員がお届けする“1分で読める”アート&カルチャーに関するコラム。今回は静岡市葵区の静岡シネ・ギャラリーで8月23日から上映中のピエール・フォルデス監督のアニメ映画「めくらやなぎと眠る女」から。日本語版は深田晃司さん演出で、主役の小村を磯村勇斗さん(沼津市出身)が演じる。
村上春樹さんの短編「かえるくん、東京を救う」「バースデイ・ガール」「かいつぶり」「ねじまき鳥と火曜日の女たち」「UFOが釧路に降りる」「めくらやなぎと眠る女」をシームレスにつなぎ、一つの作品に仕立てている。
「かえるくん、東京を救う」のパートは、新海誠監督の「すずめの戸締まり」(2022年)との類似点が見受けられる。このことは新海監督が自ら公言している。東京の地下で地震を引き起こすとされる「みみずくん」は、映像化されることで一層その点が際立つ。
感情の起伏を極力抑えつつ、内的な葛藤をちょっとした言葉の強弱で表現する磯村さんの「声の演技」に感服。設定は2011年の東京だが、会話の端々に挟み込まれる手のジェスチャーがいかにも欧州的なのはご愛敬。(は)
<DATA>※県内のその他の上映予定館。8月23日時点
シネマイーラ(浜松市中央区、9月27日から)
金星シネマ(伊東市、10月23日から)