市立小中学校など 施設貸出に新システム 利便性向上や負担軽減へ
川崎市は4月1日から、市立小・中・特別支援学校167校で、新たな予約システムと無人のキーボックスを連動させた「川崎市学校施設利用システム」の運用を開始した。市は利用者の利便性向上や学校職員の負担軽減などに期待を寄せる。特別教室などを含めた施設の予約システムや、位置情報を確認できるキーホルダーを導入するのは、全国の自治体で初めて。
これまで学校施設の鍵は、職員が利用者に直接受け渡しをしていた。学校の受付時間外に貸出対応をするケースもあるなど、紛失リスクの高さや、教職員の負担が懸念されていたという。
市は、これを改善し、施設を使いやすくするための取り組みとして、同システムの運用を開始。学校施設開放を実施している市内167校の通用門付近にキーボックスを設置した。
利用者間で日程などを調整した上で、オンラインで各自が申請。予約が確定すると、キーボックスを開けるための暗証番号が送られてくる。この番号を利用日にボックスに打ち込むことで箱が開き、中に入っている鍵が受け取れる。このシステムを用いて、体育館に限らず、校庭や武道場、特別教室(特別活動室や音楽室など)の予約ができるのは、全国の自治体で初めてだという。
先行で実証実験を行った結果、市民にとっての利便性向上に加え、書類記入や管理、集計、報告作業、利用者からの問い合わせがなくなったことによる教職員の負担軽減の成果が見られた。運用から1カ月ほど経った菅中学校(多摩区)でも、その効果を実感しているという。同校の山本新教頭は「教職員の負担軽減は如実に感じている。働き方改革の面から見てもありがたい」と話す。
鍵には、管理者が位置情報を確認できる機能が搭載されたキーホルダーが付けられた。これも全国の自治体で初めての試みで、市教育委員会の担当者は「何時に誰が施設を開け、どこに鍵があるのかを全て管理できるため、強い安心を感じている」と力を込める。
加えて、今までは利用統計などを書類で管理していたが、今回、オンライン管理が可能になり、大幅な紙資源の削減にもつながったという。市担当者は「今後、開放されていない特別教室などのうち、市民利用に対応可能な場所を順次開放し、さらなる学校施設の有効活用を進めていきたい」と展望を語った。
相互協力を
川崎市では1964年度から、学校施設を市民に開放している。校庭や体育館と比べ、特別教室などの利用頻度が低いことから、施設の有効活用を図るため、22年に市民アンケートを実施した。
この結果などを踏まえ、24年2月に「学校施設の更なる有効活用に向けた実施方針」を策定。【1】もっと使ってもらう、【2】使いやすくする、【3】みんなで使う、の3つを基本コンセプトに掲げた。
今回、オンラインシステムの導入により、利用方法の簡易化などが図られたが今後も引き続き、地域内での「顔の見える関係構築」には注力する構えだ。市担当者は「日程などを調整する上で、利用者同士が譲り合いながら運営してもらうのが基本的な考え。相互協力のもと学校施設を活用してほしい」と話した。