いのまたむつみ先生の“画業”のすべてが「トキワ荘」に集結──特別企画展「いのまたむつみ回顧展 創作の歩み」フォトレポート
アニメ『ブレンパワード』やゲーム『テイルズ オブ シリーズ』など、多くの作品でキャラクターデザイン・原案を務め、小説版『ドラゴンクエスト』をはじめとする大ヒット作のカバーイラスト・挿絵なども手掛けた、いのまたむつみ先生。
先生が描き続けた創作のすべてを振り返ることのできる特別企画展「いのまたむつみ回顧展 創作の歩み」が、2025年12月6日より豊島区立トキワ荘マンガミュージアムにて開催中です。
アニメイトタイムズでは、本企画展の模様をフォトレポートとしてお届け。いのまた先生による繊細かつ力強い筆致は、これからも決して色褪せることのない美しさを放っていました。
【写真】特別企画展「いのまたむつみ回顧展 創作の歩み」フォトレポート
「いのまたむつみ回顧展 創作の歩み」フォトレポート
「ZONE1」から「ZONE3」にかけて、いのまた先生が描く繊細で力強い作品が並ぶ本企画展。会場に足を踏み入れる前のエントランスには、黒と白を基調としたドレスに身を包む美しい女の子の姿がありました。
入口の横にはなんと、黒いドレスの女の子のイラストを描く過程を事細かに記した、先生の作画技法が紹介されています。細やかな衣装や花、いのまた先生が愛してやまない猫ちゃんなどがピックアップされ語られる技の精髄。トップクリエイターが重ねる努力を目の当たりにし、さらに期待感が高まります。
早速、いのまた先生の世界へ飛び込むと、圧倒的な迫力で描かれる手書きイラストや原画の数々が広がります。ここでしか見ることのできない貴重な展示について、先生の活動をサポートする有限会社ブルーフラッシュ取締役・五十嵐晃博さんに、会場をめぐりながらお話をお伺いしました。
──いのまたむつみ先生が描くイラスト・作品の魅力についてお聞かせください。
五十嵐晃博さん(以下、五十嵐):まずカラーの発色、色鮮やかさが本当に素晴らしいんです。しかも『幻夢戦記レダ』の、とりわけ大きなこちらのイラストは一晩で描き上げられたようです。依頼を受けた先生が「納期は?」と聞いたら「明日だ」と言われたそうで(笑)。とても一晩で描いたとは思えません。その話を聞いた当時の僕もビックリしたことを覚えています。
また、構図もその一瞬を切り取ったような……「このキャラクターとは」という部分を瞬間的に切り取る才能が凄まじいと思っています。色の鮮やかさと構図の素晴らしさにご注目ください。
──本企画展の見どころを教えてください。
五十嵐:今回の企画展によってはじめて展示されるものとして、先生による直筆のマンガ原稿がございます。アニメーター・イラストレーターとしての「いのまたむつみ」はみなさまご存知かと思いますが、先生はマンガもしっかりと描かれていました。しかも今回展示されているのは印刷物ではなく手描きの原稿ですから、またとない機会です。
五十嵐:そして、いのまた先生といえば、マイケル・ジャクソン氏にイラストを描いたことでも有名です。本企画展には、当時発売された雑誌も展示されています。実際に“動く”マイケル・ジャクソンに会っている方も少ないでしょうから(笑)。
──トキワ荘に飾られた、いのまた先生描き下ろしの「手塚治虫キャラクター」イラストも、胸に残る印象的な光景でした。
五十嵐:(手塚先生とのコラボレーションについて)最初に描いていただいたのが『リボンの騎士』で『ブラック・ジャック』はその次でした。僕が「『ブラック・ジャック』で描きたいシーンはありますか?」と聞いたら「描きたいシーン、あるのよね」と、シャチをバックにしたイラストが描き上げられて。
今はデジタル作画が普及しましたが、アナログ作画の失敗が効かない一発描きの魅力を感じていただけたらいいなと思います。
マンガの巨匠が集い、若き青春の日々を過ごした伝説のアパート「トキワ荘」をモデルに開館された「豊島区立トキワ荘マンガミュージアム」で振り返る「いのまたむつみ回顧展 創作の歩み」。いのまた先生が生み出した名作の数々は、これからも多くのファンの心を揺さぶり続けるでしょう。
先生の創作の歩みを追うことのできる特別企画展は、展示内容を前半と後半で変えながら2026年3月22日まで開催中。ここでしか見ることのできない貴重な展示の数々を、ぜひ現地でご覧ください。
※「手塚治虫」の「塚」は正字体が本来の表記ですが、当サイトでは互換性への配慮から簡易字体で表記しています。