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トリドールが「心的資本経営」を本格始動 「心」を起点とした新たな店長制度などを導入

月刊総務オンライン

トリドールが「心的資本経営」を本格始動 「心」を起点とした新たな店長制度などを導入

トリドールホールディングス(東京都渋谷区)は9月17日、人的資本経営をさらに深化させた独自の経営手法「心的資本経営」を、2025年9月より本格的に開始すると発表した。

「心的資本経営」は、従業員の「心の幸せ」と顧客の「心の感動」を両輪とした好循環を生み出すことを目的としたもの。具体的な推進施策として、従来の店長制度に代わる新たな役職「ハピカンオフィサー(丸亀製麺では「ハピカンキャプテン」)」制度を発表し、段階的にグループ全体へと展開する。

トリドールが提唱する「心的資本経営」とは

トリドールが新たに掲げる「心的資本経営」は、近年注目される人的資本経営をさらに深化させた独自の概念だ。

従業員の「心の幸せ」と、顧客の「心の感動」の両方を重要な資本と捉え、両者を満たし続けることで、唯一無二の事業成長を実現することを目指す。

この考え方の背景には、心が満たされた従業員の主体的な働きが、結果として顧客の感動体験を生むという循環がある。同社ではこのような状態が、離職率の低下や人材確保、教育コストの削減、地域貢献など、多角的な価値創出につながるとし、グループ全体の持続的成長の柱に据えている。

心的資本経営のコンセプトムービー

経営思想の実践モデル「ハピカン繁盛サイクル」が描く価値創造の循環

この経営思想の実践モデルとして、同社が定義するのが「ハピカン繁盛サイクル」だ。

起点となるのは、従業員一人ひとりの「ハピネス」。心の充実を感じながら働くことで、従業員の内発的動機が引き出される。その結果として、顧客に感動を届けるような行動が自然に生まれ、それが店舗の「繁盛」につながっていく。

この繁盛の成果を、再び従業員に適切に還元することで、さらなるハピネスが生まれる。同社ではこの循環を「ハピネス(ハピ)」と「感動(カン)」を合わせた「ハピカン経営」として全従業員に共有し、価値観のベースとしている。

トリドールが提唱する「ハピカン繁盛サイクル」(※画像クリックで拡大)

実際、2024年6月からの社内展開後、従業員の離職率は約12.9%低下し、顧客からの「お褒めの言葉」が24.5%増加するなど、目に見える効果が現れ始めている。

「ハピカンオフィサー制度」で現場から変える

こうした経営思想を現場で体現する存在として新たに導入されるのが、「ハピカンオフィサー制度」だ。これは、従来の店長制度に代わり、店舗でハピカン繁盛サイクルを生み出す推進者としての役割を担う制度である。

第一弾として、丸亀製麺では2025年11月より、「ハピカンキャプテン」を任命。今後3年間で300人の育成を予定しており、そのほかのブランドへの展開も視野に入れる。

ハピカンキャプテンは、煩雑な業務管理から解放され、従業員のモチベーションを高め、内発的動機を引き出す場づくりに集中できる設計となっている。

さらに注目すべきは、報酬体系の刷新だ。ハピカン繁盛サイクルを高いレベルで実現したキャプテンには、最大年収2000万円超も可能とするなど、実力と成果を正当に評価する制度として設計されている。

心的資本経営を支える新制度

従業員の「心の幸せ」と顧客の「心の感動」を両立させるには、現場での継続的な仕組みづくりが欠かせない。トリドールは、データ活用と家族支援という2つの観点から、心的資本経営を支える制度を導入し、より実践的かつ持続可能なサイクルの確立を目指す。

AIと感情データで「心の状態」を可視化する「ハピネススコア」

トリドールでは、従業員の心理的状態を定量的に把握する独自指標「ハピネススコア」を設計・導入。音声対話型AIを活用し、従業員の声や発言から「心の満足度」を可視化する。

これに先立ち、同社は顧客アンケートを基にした「感動スコア」も導入済みであり、現在は従業員・顧客双方の心の状態と業績との相関・因果関係を分析している。

初期分析では、ハピネススコアが高い店舗ほど感動スコア・業績も高い傾向がみられており、今後はこの結果を元に、さらにデータサイエンスを活用した施策強化を進める予定だ。

家族に感謝を伝える企業のまなざし 「家族食堂制度」

もう1つの施策が、従業員の15歳以下の子供を対象にした「家族食堂制度」である。

この制度では、トリドールグループの店舗にて、従業員の子供がいつでも無料で食事を楽しめる環境を提供。家庭とのつながりや子育て支援を通じて、従業員の心の安定や幸福感を支える。

12月より、「丸亀製麺」「天ぷらまきの」「焼鳥とりどーる」「長田本庄軒」「とんかつとん一」の各ブランドで先行導入され、今後さらに対象ブランドの拡大も予定している。

この取り組みは、企業と従業員との関係性を個人から家族単位へと広げるものであり、心的資本経営を根底から支える意義深い制度と言える。

「心」を起点に、ブルーオーシャンを創る

同社代表取締役社長・粟田貴也氏は、心的資本経営のコンセプトムービーの中で、次のような考えを示している。

心的資本経営は、予測困難な時代において企業の進むべき道を切り開く力を持つもの。従業員の「心」を起点とすることで、他社と異なる価値を創出できる新たなブルーオーシャンを形成し、グループ全体の成長へとつなげていきたい。

こうした姿勢からは、制度導入そのものにとどまらず、人と組織の在り方を見直し、経営の価値観そのものを問い直す姿勢がうかがえる。

トリドールホールディングスは、丸亀製麺をはじめとした多業態の外食ブランドを国内外で展開する企業として、今後も人を基軸とした新たな経営を模索する構えだ。

発表の詳細は、同社公式リリースで確認できる。また、心的資本経営については、同社ウェブサイトにて確認できる。

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