自閉症娘がエンジョイ!通信制高校の課外授業って?Web完結型や対面型、職業選択に活きるものも
監修:藤井明子
小児科専門医 /小児神経専門医/てんかん専門医/どんぐり発達クリニック院長
通信制高校の課外授業の種類
うちの娘、いっちゃんはASD(自閉スペクトラム症)と睡眠障害があります。現在18歳で、人数が多いことで有名な通信制高校に通っています。
通信制高校というと自宅学習がメインで学校の先生やクラスメイトと交流はできないと思われがちですが、いっちゃんが通う通信制高校は「年間5日程度以上登校すること」という決まりがあり、スクーリングと呼ばれるリアル教室での対面授業があります。
また、卒業要件に必須なスクーリングのほかにも、自由参加の課外授業が豊富に用意されていました。そういう場で友だちができるということは多いようです。
課外学習の内容は多岐にわたり、例えば……
・起業塾や株、就労についての座学(Web上でリアルタイムにやりとり)
・声優やYouTuberを招いてのボイストレーニング体験
・刀鍛冶や陶芸などクラフト系の実習
・防災キャンプや天体観測などの自然体験型授業
などなど……
常に何か募集をしているという感じでした。
実際に会場へ集まって受ける授業は、関東や関西の都市部で開催されることが多いですが、Webで完結する授業もたくさんありました。
娘が実際に参加した課外授業は…
いっちゃんはイラストやプログラミング、学芸員などの職業体験を中心に、月に3回程度何らかの課外授業に参加していました。もともと見聞きしたもの全て「どうやって作るのか、どうやって運営しているのか」が気になる性格の娘、学校の課外授業は好奇心を満たす絶好のチャンスだったようです。
これらの授業は単にレクリエーションとしてではなく、将来の職業選択や適性を知るための授業という位置づけで行われているらしいです。
実際、いっちゃんが美術館の学芸員の仕事体験に参加したときは、「展示の企画は楽しいけれど、掃除や作品管理、展示作品の移動など、意外と体力勝負な部分が多い」と言っていました。小柄な娘には、特に重い作品を運ぶ作業が大変だったようで、「この仕事に憧れていたけど、私には厳しいかも」と気づくきっかけになりました。
娘はエンジョイしていた課外授業だけど
参加すれば楽しく、将来の役にも立つ課外授業ですが、実際に積極的に参加しているのは全体の1割程度と聞いたことがあります。
その理由として、住んでいる場所が授業のある場所から遠いことや、金銭的な負担、人気の授業は抽選になるのだけどその結果が分かるのが授業の直前なので、働いている人や障害のある生徒は予定を入れにくい……などが挙げられると思います。
希望する生徒さんの通える範囲で課外授業があるのに越したことはないのですが、Web上で受けられる授業は募集人員も多く、気軽に参加できるため、わが家ではそういった授業を活用することも多かったです。
課外授業を活用すれば通信教育はもっと楽しい
通信制高校のWebでの課外授業は、実際に先生に会って話をしたり、友だちをつくりたいという人には物足りないかもしれませんが、Webだからこそ来てくれる講師の方もいらっしゃいますし、実際に宿泊したり移動したりすることを考えると、すごくコスパが良いなとも思います。
また、職業体験型の課外授業は、将来の進路を考えるうえで大きなヒントを与えてくれると思います。私自身、娘が課外授業に参加することで「娘自身が」「自分の適性を知る」ことの大切さを実感しました。親が「向いてる、向いていない」と言っても、子どもはそれで納得なんかしませんものね。
通信制高校をお子さんの進学先として検討されている方にとって、こうした課外授業があることが、お子さんの未来を考える一助になればと思います。
執筆/寺島ヒロ
(監修:藤井先生より)
Webでの課外授業を通じて、多くの体験をすることができたのですね。さまざまな体験をすることで、自分自身が何が好きなのか、得意なのかを知る、自己理解する良い機会になると思いました。通信制高校も学校数、生徒数ともに増加していてきています。文部科学省のデータによると、平成17年には175校だった学校数が、令和5年には289校に増加しています。平成17年には約18万人だった生徒数が、令和5年には約26.5万人に増加しています。多様な学習ニーズに対応できるように、選択肢が広がることは良いことですね。通信制高校も数多くあり、学校によって特徴はさまざまです。お子さんと相談しながら、通信制高校も探すことをおすすめします。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。