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雷は耳で聞いて、初雪は目で見て観測!?【意外とアナログな天気観測の世界】

TBSラジオ

日々の天気や街のトレンド、おいしいゴハンに大人の悩み、社会の仕組み・・・1日イチ「へぇ~」なトピックスを。
新進気鋭のコラムニスト、ジェーン・スーが、生活情報や人生の知恵をナイスなミュージックと共に綴る番組。

ゲストは、天気が好きすぎる気象予報士・増田雅昭さん。

今回のテーマは・・・

天気の世界、意外とアナログなところもあるんです!

増田:天気予報って、昔より進歩しているという実感はありますか?

予報を計算するコンピューターの進歩などで、昔はできなかった細かな予報ができるようになってきています。

一方で、まだまだアナログな部分も残っているんです。それが『観測』の分野です。

みなさんご存じのところだと、「桜の開花」もそうですね?開花したかどうか、気象台の職員が観測基準の木のところ、たとえば東京なら靖国神社に行って“目視”で確認します。アナログの極みですね。

今日は、このようなアナログな観測方法についてお伝えします。

雷の日数は、耳で聞いて数えている

増田:気象庁では、「雷が発生した日数」を観測しています。この雷日数、「ゴロゴロ」とか「ドーン」といった雷の音を、気象台から確認できた日を「1日」としてカウントします。

Q:「稲光が見えた」でカウントするのではダメなんですか?

増田:光のほうが遠くまで届くし、特に夜はかなり遠くの雷の光が見えたりもします。埼玉県で光った雷を、東京から見て「東京で雷」とカウントするのも変ですよね。一方で、雷の音は、聞こえるのが10km以内と言われ、観測場所に比較的近いところの雷をカウントできます。

ちなみに、今年は雷日数がかなり多くなっています。東京は雷日数がすでに「25日」も観測されています。

・1915年から続く雷の観測で、これまでの最多記録は2012年の26日。今年はあと2ヶ月半以上あるので、更新する可能性はありますね。

初雪は、東京・大阪では目で見て観測!

増田:初雪の観測は、東京と大阪の気象台では、職員が建物の外に出て、目で見て「雪が降った」と確認しています。

突然ですが、ここでクイズです!

「東京と大阪では」と言いましたが、実はそれ以外の道府県の気象台では、初雪の観測は、目で見ることなく判断されています。どのようにして、雪が降ったかどうかを観測しているでしょうか?

正解は、「冬に何かが降った時、その時の気温と湿度から自動的に判別!」です。

増田:まず、何か降ってきたかどうかは、感雨計(かんうけい)という機械があり、それが反応したら、何かが空から降っている=「降水がある」ということがわかります。

その何か降ってきたと観測された瞬間の、気温と湿度、これも同じ観測所で測ったものですが、

じつは、この気温と湿度なら雪、この気温と湿度ならみぞれ、この気温と湿度なら雨、という判別表があって、それをもとに、自動的に、瞬間的に、機械が「雪」「みぞれ」「雨」と判断しています。

増田:問題は、この自動的に雨・雪を判別する仕組みは、完璧ではないということです。たとえば、気象台の職員が今も目で見て雪か雨か判断している東京でも、同時並行で、自動的に機械が判別していて、我々もそのデータを見られるんですが、これがけっこう違っているんです。

実際は雨が降っているのに、自動判別では「雪」となっていたり。その逆も。。。

増田:2016年に沖縄で、みぞれが観測されたというニュースがありました。久米島では過去にみぞれが降ったことはあったんですが、沖縄本島で、みぞれが観測されたのは初めてだったんですね。

・ただ、その「みぞれ」と記録された名護市の観測所は、気温と湿度から自動で判別される、無人の観測所でした。

・実際のところは、みぞれが本当に降ったかどうか分からないし、周囲の状況などからは、雪やみぞれじゃなかった可能性も高そうなんです。

・日本の気象観測って明治時代から150年ほど続いていますが、こういった、本当かどうか確証が持てない記録が残ってしまうと、たとえば、50年後100年後くらいの人が、あれ?2020年前後から気候が変わったぞ、と勘違いしてしまうかもしれません。

・雪やみぞれの観測は、現時点では、やはり人間の目にはかないません。

・なので、観測技術の継承の意味あいもあって、東京・大阪では人の目での観測が続いています。

Q:桜などは、AIなどで判定することはできないんですか?

増田:桜開花の観測は、画像の自動判定など、今でもシステムを作れそうですが、ただ、桜だったら一年に一回ですよね。現時点では、そこまで予算をかけてやることでない、という判断なのではないでしょうか?

Q:観測が自動化されて困ったことは?

増田:氷の粒である、ひょうやあられは、自動的に判断できないので、東京・大阪以外の人による観測をやめたところは降ったかどうかわからなくなりました。ひょう、あられが降ってくるということは積乱雲が上空にあるということなので、天気が荒れるサインだったりします。その観測がなくなったのは困りますね。

Q:経費削減ということですか?

増田:気象台の人員、つまり国の限られた予算を、防災に向けたいということなんですね。もちろん、気候がどう変わっているかとかを把握するために、同じクオリティーでの観測の継続ってすごく大事なんですが、防災も大事。気象業界のジレンマです。個人的には、人による観測技術が、50年後も100年後も残っていてほしいですけどね。

(TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』より抜粋)

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