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パラグアイで活躍する、切り絵作家の「立川いずみ」さん。

Things

パラグアイで活躍する、切り絵作家の「立川いずみ」さん。

先日のThingsでは、新潟からパラグアイに移り住み、デザイン事務所を立ち上げた「立川巧雪」さんをご紹介しました。今回は立川さんの奥様で切り絵作家として活動している「立川いずみ」さんに、パラグアイに渡ったばかりの頃の思い出や作品をつくる上での考えなどを聞いてきました。

 

切り絵作家

立川 いずみ Izumi Tachikawa

1991年弥彦村生まれ。新潟大学を卒業後、2年間新潟市内に勤務。その後、夫とともにパラグアイへ渡り、日本語教師として働く。学生時代から続けていた切り絵のオーダーが徐々に増え、現在は専業作家として活動している。

細かいことは気にしていられない、パラグアイの暮らし。

――立川さんがこれまでどのようにキャリアを積んできたのか、教えてください。

立川さん:大学で美術系コースを専攻し、卒業後に新潟市内の企業へ就職しました。大学時代から自分の表現方法として切り絵を作り続けて、就職してからもたびたびコンクールに出してみたんですが、働きながらの作品づくりはやはり難しくて。結婚して、夫とパラグアイへ渡ってからは、3年間、現地で日本語の教師をしていました。ありがたいことにその間に切り絵のお仕事が増えてきたので、今は作家として活動をしています。デザインも学んだので、夫が運営している木工クラフトブランド「Todo Palo Santo MIDORI」のデザイナーとしても事業に携わっています。

――どうしても気になるのは、パラグアイに渡る勇気をよく持たれたなということなんですが……。

立川さん:若かったんですね。「行ってみてダメだったら帰って来ればいい」なんて勢いでした(笑)。でも「きっと面白いだろうな」という期待も大きかったです。

――パラグアイで暮らしはじめた当初の印象は?

立川さん:「日本は教育がきちんとなされているんだな」と感じる場面がたびたびありました。道路がゴミで溢れている様子にはショックを受けましたし、最初の印象はあまりよくありませんでした。

――驚かれることが多かったでしょうね。

立川さん:私は何事においても割ときっちりしたいタイプなんですけど、パラグアイで生活するうちにだいぶおおらかになったと思います。例えば、日本では10分前、5分前行動の習慣がありますけど、パラグアイでは約束の時間から30分、1時間遅れてやって来るのが当たり前で(笑)。「それくらいのこと、大丈夫、大丈夫」と伸び伸びした気持ちでいられるようになりました。

切り絵が、架け橋に。

――そもそもなぜ「切り絵」だったのでしょう?

立川さん:紙という素材が好きで、好きな切り絵作家さんがいたんです。憧れの作家さんを真似して作品づくりをしているうちに、どんどんのめり込んでいきました。大学では、切り絵をやっている人が他にいなかったところもポイントで。日本ではアマチュアを含め、多くの切り絵作家さんがいらっしゃいます。とっつきやすいからお子さんでも作れますよね。でも仕事として切り絵を創作されている方はあまりいらっしゃらない。「これは自分の武器になるのではないか」と思いました。

――私も小さい頃、折り紙を切り絵風にして遊んでいました。切り絵って、パラグアイではどうなんですか?

立川さん:パラグアイに切り絵文化はないんです。もちろん日系人は知っていますし、趣味で切り絵を楽しんでいる方もいらっしゃいます。でも現地でアートというと、絵画、アクリル、創作粘土、陶芸などが一般的です。パラグアイは親日国だからか、「切り絵作家です」と自己紹介すると、「作品を見たい」「自分もやってみたい」と言ってくださる方がたくさんいて。最初は公用語であるスペイン語がまったく話せませんでしたが、切り絵をきっかけにたくさんのご縁がつながっていきました。

――狙い通り、立川さんの武器になったわけですね。

立川さん:あるとき、アート好きの人たちが集まるカフェでワークショップを開催して、20名ほどにお越しいただきました。美術の先生、趣味で絵を描いている方、建築を学ばれている方が、私の切り絵を特におもしろがってくれました。でもアートに携わっていない、関心もないという方に、どうしたら私の作品を伝えられるだろうかと考えまして。それで大好きなパラグアイの文化を切り絵で表現したらどうなるだろうかと思いついたんです。

――おぉ! どういう作品ができあがったのか、お話を聞いているだけでも楽しみです。

立川さん:とても歓迎してもらえました。「もっともっと切り絵を知りたい」と作品を買ってくださる方も増えて、少しずつ注目してもらえるようになったんです。

――しかもパラグアイに暮らしていらっしゃるわけだから、すごく説得力がありますよね。

立川さん:旅行者とは違いますからね。割と距離感近く、パラグアイの文化を捉えられているところはあるかもしれません。

相手のリクエストを汲み入れ、かたちにする。

――作品はどんなふうに仕上げたいと思っていますか?

立川さん:お客さまが何を求めているのかをちゃんと考えて、自分のアイディアとミックスするイメージでお作りしています。100%好きなようにするには、まずは稼がないとですね(笑)。最近やっと、自分が考えるテイスト100%でも、皆さんに楽しんでもらえているかなと思えるところまで来たでしょうか。

――しばらく日本語教師をされていたそうですが、作家に転身するきっかけはあったんですか?

立川さん:日本語教師をしていた頃の同僚からのオーダーに発見がありました。仲間とお金を出しあって、ゼミの先生にプレゼントをしたいと私の切り絵を選んでくれました。先生はビートルズファンで眼鏡をかけていると聞き、ジョン・レノンに扮した先生と他のメンバーの似顔絵を作ったんです。私が提案したエッセンスも、彼女のリクエストも両方組み込まれている作品で。そのプレゼントを先生はとても喜ばれたそうで、「こういうふうに切り絵表現を続ければ、もっと作品に価値が生まれるかもしれない」と感じました。

――いつか作家になるぞ、みたいな気持ちはずっとお持ちだったんでしょうか?

立川さん:「展示会をしてみたいな」「パラグアイで作家仲間ができたらいいな」とは思っていました。でも自信はなかったです。切り絵は続けていたいから、趣味でもいい。やりたいことをやろうという気持ちでした。

――それが今ではご自身にしかできない表現をされています。今後はどんな目標を掲げていますか?

立川さん:パラグアイと日本、それぞれで個展を開催したいと思っています。規模にはこだわらずに、個展をやってみたいなって。これからも切り絵は続けていくつもりです。

立川いずみ

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