金鍾成監督が語った「全部壊す」の“真意”とは FC琉球、J3回帰のシーズンを17位で終了
サッカーJ3で17位のFC琉球は2日、福島市のとうほう・みんなのスタジアムで15位の福島ユナイテッドFCと今季最終戦を行い、0ー0で引き分けた。通算成績は12勝19敗7分の勝ち点43。順位は17位のままで変わらず、今シーズンを終えた。
5シーズンぶりにJ3に戦いの場を戻し、「1年でのJ2復帰」を掲げたが、一時は日本フットボールリーグ(JFL)降格の危機もあるなど厳しいシーズンとなった。特にディフェンスの脆さはなかなか改善されず、総失点数の「61」はリーグワーストとなった。
福島戦の直後、クラブは金鍾成監督の契約更新を発表。チームの再建を託された金監督は、来シーズンに向けて試合後の会見でこう語った。「全部壊して、またゼロから作り直さなければいけない」。“壊す”という強い言葉を使った、その真意とはー。
「若手主体」でチャンスつくる “初出場”のGKジワンも躍動
ペナルティエリア外からシュートを放つ岩本翔
福島戦はこれまで出場機会が少なかったMF岩本翔やDF荒木遼太ら20代前半の選手の他、Jリーグ初出場となった19歳のGKジョン・ジワンも先発メンバーに名を連ねた。
若手中心ではあったが、試合は序盤から一進一退の攻防が続いた。琉球は持ち味であるパスワークで相手ディフェンスを切り崩したり、サイドバックの高安孝幸が駆け上がったりしてチャンスをつくった。岩本はペナルティエリア外から積極的にシュートを放ち、前半13分にFW野田隆之介の負傷により急遽ピッチ入りしたFW清武巧暉も直接フリーキックでゴールに迫った。
Jリーグデビュー戦で好セーブを連発したジョン・ジワン
後半は大きなチャンスが増え、DF柳貴博やMF中野克哉らがペナルティエリア内で決定機を迎えるが、相手ゴールキーパーに防がれたりして得点には至らなかった。一方、攻め上がった分、ピンチの場面も増加。それでもジワンの好セーブもあり、3試合ぶりのクリーンシートで最終戦を終えた。
高安「成長できたし、いろいろ吸収できた」
若手主体で戦ったチームに対し、金監督は「意図的ではなかったのですが、けが人などの関係もあって若い選手が出る機会を得られていいプレーをしてくれました。特に守備から攻撃に切り替わる時にどんどん攻めに向かっていったことはチームとして求めてきたことなので、その辺が表現されたのは良かったです」と高く評価した。
来季に向けては清武やFW阿部拓馬など複数のベテラン勢の契約満了が既に発表されている。そのため、若い選手の成長はチーム力を強化するために必要不可欠な要素となる。それを念頭に、22歳の高安は今後をこう展望した。
多くのチャンスを演出した高安孝幸(左)ら
「ベテラン選手が試合中に引っ張ってくれてる部分はあったのですが、今日の試合では『若手でも戦える』というところを見せられて良かったです。もっと一人一人がチームを引っ張っていくという気持ちでやりたいです。(来シーズンは)新しいチームができていく中で、若手が多いので運動量やハードワークを重視しながらゴールを量産していけたらいいなと思います」
個人としては「結構成長できたと思うし、いろいろ吸収できました。このシーズンで得たものを来季につなげていきたいです」と好感触を語った。
来シーズンの大きなテーマは「強度」の向上
ピッチを見詰める金鍾成監督
今シーズンは倉貫一毅元監督の下で開幕2連勝と好スタートを切ったが、その後に3連敗を2度するなどして急降下し、10試合を終えた5月中旬に倉貫氏を解任。2022年シーズン途中で解任された喜名哲裕氏が監督に再就任したが、状況は好転せず、喜名氏も26試合を消化した9月中旬に辞任した。
その後、2018年に琉球が初のJ3優勝、J2昇格を果たした際の立役者である金監督が再就任。最後の11試合で指揮を執り、全体として前に向かう意識やプレーの強度は少しずつ改善されていったが、この間の成績も4勝4敗3分で勝ち越すことはできなかった。
今シーズン全体について、金監督はこう総括する。
「個々の巧さを表現させ切れなかったという感じがあります。サッカーは巧いから勝てるものではない。その辺を表現するためには、走るとか、厳しいところで戦うとか、そういうベースの中で自分のテクニックを表現していくものです。そのあたりを最後まで明確にさせきれなかったので、来年やっていければと思っています」
一方、冒頭で触れた「全部壊す」というコメントは、来シーズンについて語った時に出た言葉である。以下のような文脈で語られた。
「今日内容が良かったから、それをそのまま続けていくというよりは、もう全部壊して、またゼロから作り直さなければいけない。今までのトレーニングの2倍、3倍ぐらいをしないと、チームは上がっていくことはない。そういう気持ちで今シーズンを終え、来季に向かいたいと思います」
具体的に、何を壊すのか。「相手より1点多く上回ればいい」という自らの攻撃的なサッカーの軸を崩すわけではない。真意はこうだ。
「チームの方向性もしっかり意識しなければいけないんですけど、ある意味、自分たちのやりたいことだけをやってしまった。要は、そこに慣れてしまった。それをぶち壊さなければいけない。やっぱりサッカーはもっと厳しいものであって、トレーニング量から含めて足りない。意識をまたゼロに戻して、チームを作り直さないといけない」
「2倍、3倍」としたトレーニングについても、どんな要素を重視したいか聞くと、「強度です」と即答。その上で「走る量だとか、間の休みの時間の短さとか、厳しい時間帯をトレーニングでより長く作らなければいけない。若い選手たちなので、求めるとどんどん変わっていく可能性がある。今シーズンそんなにできなかった部分を『本来はもっとやるべきなんだ』というところからスタートしたいと思ってます」と展望した。
戦術や個々のスキルももちろん重要ではあるが、それ以前に戦うためのベースとなるプレーの“強度”の向上を求める金監督。オフシーズンでどれだけ上積みができるか、手腕が問われる。
リブランディングの行方も… 24年はクラブ動向も注目
リブランディングについて説明するサポーターミーティングの様子
2024年シーズンは、大きな論争を呼んだリブランディングの行方も注目される。
チーム創設から20周年を迎えたことを受け、今年10月にリブランディングでエンブレムの変更などを発表すると、サポーターらから多くの批判の声が挙がった。そのためエンブレムについては、2024年は現行のものを継続使用することを決定。一方、リブランディングの検討期間は最大1年間延長しており、今後の議論をどう進めていくのかはサポーターらにとって大きな関心事項だろう。
創設21年目の年へ向かっていくFC琉球。サポーターや地域との一体感を強め、経営理念に掲げる「沖縄とともに、強くなる。」を体現したい。
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