<ヒョウモンダコ>の青い輝きにはご用心 潮干狩りや磯遊びでも注意が必要?
春から初夏にかけて楽しい潮干狩り。
夢中で貝を探していると、時々「おや?」と思うような生きものに出会うこともありますよね。でも、中には注意が必要な生きものもいます。
そんな生きもののひとつが「ヒョウモンダコ」。見た目の美しさとは裏腹に、実はとってもキケンな一面を持っているんです。
タコがヒョウ柄? <ヒョウモンダコ>不思議な名前のヒミツ
ヒョウモンダコは、体長10センチほどの小さなタコ。普段は、周りの岩や砂にそっくりな色をしており、うっかり見過ごしてしまうほど地味な薄茶色をしています。
でも、このタコ。びっくりしたり怒ったりすると、なんと大変身!
体中に、まるで宝石のような鮮やかなコバルトブルーのリング模様が、パッと鮮明に浮かび上がるんです。
これがまるでヒョウの模様みたいだから、「ヒョウモン(豹紋)ダコ」。なんだか、体で「危険信号」を出しているみたいで、ドキッとしますよね。
どこにいるの? 潮干狩りでも会えるかも
ヒョウモンダコはもともとは暖かい海の生きものですが、最近は日本のあちこちで見かけるようになりました。太平洋側なら千葉あたりから南、日本海側なら兵庫あたりから南に生息し、浅い海の岩場や砂地に隠れていることが多いようです。
ということで、私たちが楽しむ潮干狩りや磯遊びの場所と、彼らの住処が重なっていることもあるのです。
岩の隙間や石の下を探っていて、「こんにちは!」なんて鉢合わせも、可能性はゼロではありません。実際に千葉や神奈川、大阪、九州などで目撃情報があります。
ヒョウモンダコの青いリングに隠された<猛毒>
ヒョウモンダコが「危険」と言われる最大の理由は、その小さな体に似合わない強力な毒を持っているからです。
唾液に含まれるのは、なんとフグ毒と同じ「テトロドトキシン」。噛みつくことで、この毒を注入します。
テトロドトキシンは非常に強力で、青酸カリの1000倍とも言われる毒性があり、ほんの少しの量でも命に関わります。しかも、熱にも強く、加熱しても毒性は消えません。もちろん食用には絶対になりません。
そして一番怖いのは、この毒には今のところ特効薬がないこと。もし噛まれて毒が体内に入ってしまったら、自分の力で毒が排出されるのを待つしかないのです。
ヒョウモンダコの毒が体内に入ると、数分後からしびれやめまいといった症状が出始め、吐き気や脱力感が続くといいます。重症になると、呼吸が苦しくなり、命の危機も。実際に、海外では死亡例もあるほどです。
もしヒョウモンダコに出会ってしまったら……?
では、もし出会ってしまったら、どうすればいいか?
青いリング模様の小さなタコを見たら、「触らない!近づかない!」が鉄則。どんなに綺麗でも、絶対に手を出さないでください。
そして、周りに知らせて、静かに離れましょう。近くに人がいたら危険を伝え、刺激しないようにそっとその場を離れます。捕まえたり、追い払ったりしようとするのはNGです。
もしヒョウモンダコに噛まれてしまったら……?
万が一、噛まれてしまったら、すぐに陸へ上がり毒を押し出します。
可能なら流水で洗いながら、噛まれた部分から血と共に毒を絞り出すように、強く押し出します。口で吸い出すのは、吸った人も危険なので絶対にやめましょう。
そして、体を安静にして救急車を呼ぶか、急いで医療機関を受診してください。一刻も早い対応が生死を分ける可能性があります。
自治体への連絡場所によっては、目撃情報の報告を求めている場合もあります。安全が確保できたら連絡するのも良いかもしれませんが、無理は禁物です。
(サカナトライター:おっしー)