全国的に減少傾向の「ワカサギ」は琵琶湖では厄介者扱い 増えるとアユが不漁になる?
天ぷらで美味しい魚として知られるワカサギ。全国で人気のある魚ですが、日本最大の湖ではすこし厄介な存在となっています。
貴重な内水面水産資源ワカサギ
近年、全国的に魚介類の消費量が減少傾向となっていますが、とくに著しいのが淡水魚。かつて全国的に見られたコイやフナの食用文化も今では限られた地域のみとなり、河川や湖沼においては買い手がいなくなった結果、漁業が成り立たなくなるようなところも出てきています。
そんな「淡水魚の不人気化」の波の中で、数少ない人気魚の一つがワカサギ。全国の湖沼に生息するキュウリウオ科の魚で、今でもスーパーで普通に見かける食用魚です。
全国の大きな湖沼で漁業対象となっている他、遊漁料の収入源としても大切な存在。ワカサギによって成り立っている漁協も少なくありません。
琵琶湖では厄介者
そんなワカサギですが、実はとある理由で厄介な存在となっている水域があります。それは日本最大の湖である琵琶湖。
琵琶湖においてはワカサギはもともと生息しておらず、いわゆる国内外来生物です。明治期より断続的に移入が試みられ、諏訪湖などから卵が送られ放流されましたが定着していませんでした。それが90年代半ばごろから突然増えだし、今では琵琶湖全体でも2番目に漁獲の多い種となっています。
食用種として人気の高いワカサギは琵琶湖においても重要な漁獲対象ですが、一方で琵琶湖で最も重要な漁業種であるアユと同様の生態を持ち、負の影響を与えていることも推測されています。
それでもかつてアユがたくさん獲れていた頃は特段問題とされませんでしたが、近年アユの不漁が続く中でワカサギがもたらす悪影響に再び注目が集まるようになっています。現地の漁師たちは「ワカサギが定置網にたくさん入るとアユの水揚げが激減する」と語っており、現状は厄介者という認識になっているようです。
全国的には減少
さて「琵琶湖ではワカサギが増えて困っている」というニュースを聞いて、意外だなと思う人は少なくないのではないでしょうか。というのもここ数年、ワカサギはいくつかの名産地で減少が問題視されているからです。
かつてワカサギを多産し、その卵が各地に放流されていた長野県の諏訪湖では、ここ数年は往年の10分の1程度の水揚げにとどまっています。またワカサギが名産だった茨城県の霞ヶ浦でも、昨年は漁業にならないほどに獲れなくなってしまっています。
これらの湖でワカサギが獲れなくなった理由は「湖の温暖化」とされています。冷水を好むワカサギにとって近年の気候変動や河川水温の上昇、それに伴う湖水温の上昇は非常に厳しく、このままでは多くの湖で絶滅状態に至るという可能性も指摘されています。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>