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葛西『boulangerie JOE』で元プロボクサーの店主がひとつずつ丁寧に作る端正なパンの間違いないおいしさ!

さんたつ

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葛西にある『boulangerie JOE』(ブーランジェリー ジョー)は、元プロボクサーという異色の経歴を持つオーナーシェフ・間々田雄一さんが営むベーカリー。駅から離れた住宅地で、地元住民から厚い支持を受けている。

boulangerie JOE(ブーランジェリージョー)

開店から次々と客が訪れて

『boulangerie JOE』があるのは、東西線の葛西駅から歩いて20分ほどの住宅地。駅からは遠いものの、近くに大型商業施設の『アリオ葛西』があるため生活の不便さはなく、たくさんの個人住宅、マンションが建ち並んでいる。いわゆるベッドタウンだ。

朝の9時に店がオープンすると、次から次へと客がやってくる。店内にはクリームパンやサンド類などスタンダードなものから、バゲットなどのハード系にクロワッサンなどのリッチ系、さらにはシフォンなどのケーキ類までそろっている。古くから住んでいる人から子育て世帯まで、幅広い層が住む葛西では、この多種多様なラインアップは大きな魅力となっているのだ。

多種多様なパンが並ぶ。

並ぶパンはどれも形がきれいだ。こういうパンは間違いなくおいしい。人気のクリームパンは生地がぷっくりふくらんでしっとりした口当たり。自家製のカスタードクリームは味の濃い栃木県・那須産の卵ときび砂糖が使われていて、柔らかながらも奥深い味わいがあり、いくらでも食べられそう。

クリームパン205円。老若男女、誰でも好きな味。

発酵バターを使ったクロワッサンは、外側はパリッと香ばしく、中の生地はしっとりしていてバターの芳醇な香りを楽しめる。どれも丁寧に作られているのがわかり、食べているとなんだかうれしくなってくるパンなのだ。

クロワッサン324円。パリッとしっとり贅沢なおいしさ。

プロボクサーからパン屋に転身

これらのパンを作っている間々田雄一さんは、元プロボクサーという、パン職人としては異色の経歴を持っている。ボクサーになったきっかけは店名の通り、漫画・アニメの『あしたのジョー』。小さい頃にテレビで見て「存在自体、すべてがかっこよかった」という。

忙しい中、作業しながら話をしてくれた間々田雄一さん。

間々田さんがボクサーを志したきっかけは、ジョーともうひとりいる。元WBA世界スーパーフライ級王者の鬼塚勝也氏だ。鬼塚氏の当時の愛称は「スパンキーK」。スパンキーは勇猛果敢という意味だが、その言葉通り、ファイター相手に一歩も引かずに打ち合う鬼塚氏の試合を高校時代に見て「リアルジョーだ」と感じ、ボクシングジムに通い始めたのだ。

バゲットリュスティック350円は口溶けの良い生地でお年寄りにも好評。

その後、間々田さんはプロデビューし、東日本新人王戦で優勝するなど活躍するが、24歳のときに引退。次の仕事を考える中、小さい頃にパン屋になりたかったことを思い出した。間々田さんがまだ小さい頃、近所のパン屋が夕方、焼きたてのパンを配達してくれていた。当時、そのパンがおいしくて、配達が来るのをいつも楽しみにしていたのだという。

大きな肉が入ったまんまるなカレーパン270円も人気。

もうひとつの夢をかなえるべく、さっそくベーカリーで働き始めた。飛び込んだのはなんと「ホテルオークラ」。いわずとしれた高級ホテルだ。間々田さんは完全なパン素人だったのだが、一流の場であればいろいろ学べると思ったという。この物怖じしない姿勢は、さすが元ボクサーといったところだろう。

「JOE」はもちろん、あの「ジョー」だ。

「パンは子供みたいなもの」の意味

厳しい「ホテルオークラ」での修業時代。さすがに体力的なきつさは感じなかったが、時間に追われながら地下の厨房でパンを作り続ける労務状況は、精神的にこたえたという。しかし、そこはボクサーというストイックな職業を長年続けてきた間々田さんだ。同僚や後輩が次々にやめていく中、「ここでやめたら負け」とこらえながら5年間働いて技術を習得。独立に向け「ホテルオークラ」を退職する。

左がフィッシュサンドの「うお吉」324円。右が竜田揚げサンドの「たつ吉」281円。ネームングがかわいい。

その後、知り合いのベーカリーを手伝いながらベーカリー経営の勉強を続け、同時に物件探しを始める。そして葛西の現在の物件に出合い、2008年にオープンとなった。もともと違う街で物件を探していたのだが、ケヤキ並木が続く通りの雰囲気が気に入ったのだという。目指したのは、コッペパンなどスタンダードなパンをメインにしつつも、ハード系やリッチ系もそろえた全方向型で、これが幅広い住民層を持つ葛西にうまくフィット。開店当初から多くのお客さんが買いに来てくれ、現在までその人気は続いている。

余裕ある店内で、じっくりパンを選べる。

もちろん、人気の理由はラインアップだけではない。間々田さんにパン作りで心がけていることを聞くと、「どのパンでもひとつひとつ、最後まで丁寧に扱うこと。パンは子供みたいなものです。子供が寒がっていれば、毛布をかけてあげるじゃないですか。そういう感じに、パンもひとつひとつ面倒を見てあげる。ずっと、そうやってきました」という言葉が返ってきた。

話している間も手を休めない間々田さん。表情は真剣そのもの。

『boulangerie JOE』のパンに端正さを感じたのは、そんな間々田さんの姿勢によるのだろう。その姿勢があるからこそ『boulangerie JOE』のパンはおいしいし、信用できる。ボクサーからの意外な転身は、大成功だったようだ。

boulangerie JOE(ブーランジェリージョー)
住所:東京都江戸川区南葛西2-23-10/営業時間:9:00~18:00頃/定休日:月・火・水/アクセス:地下鉄東西線葛西駅から徒歩21分

取材・撮影・文=本橋隆司

本橋隆司
大衆食ライター
1971年東京生まれの編集・ライター。立ち食いそば、町パンなど、戦後大衆食の研究、執筆を続けている。近著は原案・監修を務めたコミック『そばギャルとおじさん』(光文社)

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