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『女子サッカーのまち』神奈川県大和市の歴史と大和シルフィードに迫る

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『女子サッカー』を基軸として街の発展を目指すと明言する神奈川県大和市。2011年のFIFA女子ワールドカップ優勝メンバーの川澄奈穂美さん、上尾野辺めぐみさん、大野忍さんらを輩出した大和市は、ホームタウンチームとしてなでしこリーグに所属する大和シルフィードを認定し、ともに“活気ある地域”を作ろうと邁進しています。

今回は、大和市出身で元女子サッカー日本代表GKの実績を持ち、現在大和市役所 健幸・スポーツ部 スポーツ×ライフ課 スポーツのまち推進係に勤める小野寺志保さん(以下、小野寺)に、大和市における女子サッカー、そして大和シルフィードとの関係について伺いました。

女子サッカーのまち・大和の歴史

ーー神奈川県大和市が『女子サッカーのまち』と言われるようになるには、どのような歴史があるのでしょうか?小野寺さんをはじめ、ワールドカップ優勝メンバーである川澄さん、上尾野辺さん、大野さんなど、多くの大和市出身選手がなでしこジャパンでもこれまで活躍していますよね。

小野寺)大和市は全国では珍しく、1975年頃には市内に“女子サッカー”の小学生チームが3つありました。私も本当は野球がやりたかったのですが、当時女の子は野球チームに入れず、「サッカーだったらできるよ」ということがきっかけでサッカーを始めました。

ーーチームの存在がスポーツの選択の上で大きかったのですね。

小野寺)“そこにあった”というのが非常に大きいですよね。当時はまだ、「女の子が本当にサッカーをするの?」と思われていた時代ですが、多くの方々の尽力があってそうした環境が作られていました。

ーー大和市として『女子サッカーのまち』を目指すと決めたのはいつ頃ですか?

小野寺)2011年になでしこジャパンがワールドカップに優勝した翌年からです。先ほど話にもあがった、川澄奈穂美さん、上尾野辺めぐみさん、大野忍さんという3名の大和市にゆかりのある選手がいたこともあり、パブリックビューイングなども大いに盛り上がりました。実は、2008年の北京オリンピックの際も、当時の職員(のちに副市長となる方)が主体となってパブリックビューイングを開催するなど、「市のPRとして、盛り上がるなら女子サッカー」という考えはすでに市の中にあったと聞いています。

私もたまたま2011年の4月に入庁し、その翌年からスポーツ課内に新たに創設された「地域スポーツ・女子サッカー支援担当」の配属となりました。大和市としては、女子サッカーが盛り上がることをパイロットケースとして、ほかのスポーツにも広がっていけばという想いを持って、『女子サッカーのまち』を宣言し、さまざまな活動に取り組んでいます。

横浜F・マリノスと大和シルフィード 男女両方のチームがあるメリット

ーー大和市では、なでしこリーグ所属の大和シルフィードをホームタウンチームとして認定、そしてJリーグ所属の横浜F・マリノスは、市をホームタウンとして活動しています。

小野寺)大和シルフィードと横浜F・マリノスは、「スポーツだいすき!」と呼ばれる幼稚園や保育園への訪問事業を一緒に行うなど、ホームタウン活動に両クラブで連携しながら取り組んでくれています。

歴史が長く人気も高い横浜F・マリノスだけでなく、大和シルフィードがいることによって、サッカーの好きな男の子だけでなく、女の子にとっても憧れの存在と触れ合えるようになったことは私としてもとても嬉しいことです。

ーー大和市の女の子たちにとっての1つのロールモデルとして大和シルフィードの選手たちがいるのですね。

小野寺)もちろん横浜F・マリノスさんは市民の認知度も高いですし、影響力も大きいですが、そうした活動や、クラブの努力もあって、大和シルフィードも少しずつ街中に浸透してきたかなと感じています。
市の支援としては、ホームタウンチームとして、練習や試合などの施設面、市内の情報面での協力等を行っていますが、もっと市内のさまざまな場所で、シルフィードのオレンジカラーが街を彩り、元気を与えてくれるような存在になれば、理想的だなと思います。

大和シルフィードがいることで

ーー大和市の施策として、大和シルフィードと連携したものも多くあると思います。

小野寺)大和市が『女子サッカーのまち』として発展していくためには、大和シルフィードの存在はなくてはならないものです。
これまでも、元なでしこジャパンの選手を呼んだイベントや、女子サッカー関連のイベントを継続的に行っていますが、そのほとんどを大和シルフィードのスタッフや選手がサポートしてくれています。女子サッカーを1つのコンテンツとして街を盛り上げると同時に、シルフィードとも関わりを持って、そしてファンにもなってもらえるような形で、お互い一緒に『女子サッカーのまち』を作り上げていっています。

ーーここからもっと盛り上げていきたいですね。

小野寺)そうですね。大和なでしこスタジアムでのホームゲームにはもっと多くの観客を呼べたらと思いますし、市民を巻き込むという意味でPRなど協力できるところは私たちもさらに頑張りたいなと思っています。シルフィードにはチームが勝利する姿を大和市のみなさんにたくさん届けてほしいですね!

大和市民の“健幸”をスポーツの力で

ーー大和市は令和7年4月から、スポーツ課から『スポーツ×ライフ課』に名称が変更されたと伺いました。

小野寺)スポーツに親しむだけでなく、生活と掛け合わせることでウェルビーイングのさらなる向上を目指していくという想いを込めての名称変更となりました。
2025年4月に策定した第3期大和市スポーツ推進計画は「スポーツでつながる!健幸都市やまと」を基本理念としており、第2期計画から引き続き、スポーツを「する」「みる」「ささえる」「つながる」4つの視点から、スポーツの発展に貢献していきたいと考えています。

スポーツを通して“つながる”ことで、体の健康や心の豊かさを育み、そして幸せを感じられるような、そんな場面をたくさん作れるように取り組んでいこうとスタートしたところです。

ーー大和市はどんな特徴のある街ですか?

小野寺)人口約24万人で、ファミリー層も多くいながら、もともと住んでいた地元の方も多いのではないか、と感じています。
市は南北に長い形をしているのですが、都内に繋がる電車も通っているので、どこに住んでも駅へのアクセスがよいことも住みやすい要因だと考えています。地盤も固いと言われていますし、大きな公園も多く四季の自然を感じられる街ですね。

ーー2025年3月には、隣の綾瀬市と合同での『大和・綾瀬スポーツフェスティバル』が開催されました。

小野寺)大和市をホームタウンとする大和シルフィード、横浜F・マリノス、そして綾瀬市をホームタウンとするノジマステラ神奈川相模原、SC相模原という4つのクラブによるクリニックなど、地域同士の“つながり”や、参加者同士の“つながり”を意識しながら、たくさんの方に関わっていただけるイベントにしようと綾瀬市さんとともに企画しました。

実際多くの方に参加いただけましたし、両市のサッカー協会や、スポーツ推進委員のみなさん、各クラブのみなさんなど、本当に多くの方の協力があって、無事に開催できましたし、何より参加した方が喜んでくれていたことが、とてもうれしかったです。

ーーこれから先、『女子サッカーのまち』として、大和市がどのように発展していくと嬉しいですか?

小野寺)私たちの街の象徴である大和シルフィードがもっと多くの人たちに応援されて、そのコミュニティが市民の居場所になり、ウェルビーイングの向上に繋がればと思っています。また、大和シルフィードは“プライドマッチ”や“インクルーシブマッチ”、“ピンクリボンマッチ”など多くのテーマを持ちながら社会課題解決への取り組みにも力を入れてくれています。そのような活動も心強く感じています。
私たち大和市も、大和シルフィードをはじめとしたスポーツチーム、地元の事業者の皆様とも協力をしながら、“健幸”を作っていけたらと思います。

ーーありがとうございました。

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