人間もドラゴンも同じで、大事なものは1つしかない。心温まる、京アニらしい作品ーー映画『小林さんちのメイドラゴン さみしがりやの竜』ED主題歌「僕たちの日々」担当&フェリキタス役・小林幸子さんインタビュー
『小林さんちのメイドラゴン』のTVシリーズの放送から約4年ぶりに、新作映画として小林さんとドラゴンたちが帰ってきました!
映画『小林さんちのメイドラゴン さみしがりやの竜』が2025年6月27日より全国公開スタート!
小林さんのもとで何気ない日常生活を送っていたカンナのところに、突如実の父親であるキムンカムイと魔法使いのアーザードがやってきます。感動の再会ではなく、カンナが以前誤って壊した龍玉を作り直すためにカンナを連れて帰ろうとするキムンカムイ。父親の情はなく、道具として利用しようとするキムンカムイに反発する小林さん。
いったん引き下がったキムンカムイたちでしたが、その裏ではドラゴンの「調和勢」と「混沌勢」の緊張関係が高まっていました。小林さんやカンナたちにはどんな未来が待っているのでしょうか?
今作では、ED主題歌「僕たちの日々」の歌唱と、作中でドラゴンのフェリキタス役を小林幸子さんが務めることが話題になっています。二刀流として大活躍の小林幸子さんに「僕たちの日々」についての紹介やフェリキタスを演じた感想、映画の見どころなどを語っていただきました。
【写真】映画『小林さんちのメイドラゴン』小林幸子の演技は監督いわく“ラスボス”!?|インタビュー
演じるフェリキタスはドラゴンたちのリーダーで、監督いわく「ラスボス」!?
――完成した映像をご覧になった感想をお聞かせください。
小林:有名な京都アニメーションさんの作品に今回初めて関わらせていただいて、しかも最新作ということでワクワクしましたし、嬉しかったです。完成した映像を視聴させていただきましたが、温かくて優しい作品だなと思いました。
やっぱり声優さんってズルいですよね。一言のセリフで心を惹きつけて。カンナちゃん(CV.長縄まりあ)が「お父さん」とつぶやくだけで泣いちゃいそうになるし。私は前後のシーンを知っているから余計にグッとくるものがありました。「うまいなぁ」と感心するばかりでした。
あと私の姪っ子甥っ子が『小林さんちのメイドラゴン』が大好きなんですけど、私が関わることを伝えたら、急に尊敬した目で、「幸子おばちゃん!凄いじゃん!」って(笑)。それも嬉しかったです。
――声で気付いてもらえるといいですね。
小林:姪っ子甥っ子に「おばちゃんはどのシーンに出ているの?」と尋ねられ、「途中でドラゴンだらけのシーンがあって、その中で派手目なのがおばちゃんの役だよ」と話したんです。見つけてくれるといいな!他のドラゴンよりも優しいピンク色で、今年の色の流行もピンクなのでそれもなんかうれしいなって思っています。
また「出番はあっという間だから早く見つけなね」とも伝えました。劇場で見つけてくれたらいいですね。
――TVシリーズはかわいいキャラたちの可愛らしさやコメディ、さらにはバトルなどが魅力的でしたが、今作ではそれらに加えて親子や友情などの「愛」と「絆」が色濃く描かれているなと思いました。
小林:そうですね。でも親子の絆というものは永遠で、例え離れ離れになったり、会えなくなったとしても親子であることは一生変わりませんし、親子の絆は絶対的な愛ですね。
(映画のチラシを見つめると表情が緩んで)もうカンナちゃんがかわいくて、かわいくて。
また、小林さん(CV.田村睦心)と一緒に日常を過ごしているトール(CV.桑原由気)やカンナちゃんはドラゴンですが、人間同士またはそれ以上の太い絆があります。結局、人であっても動物であっても、例え宇宙人であったとしても、心を傷つけられた子や仲間がいたら寄り添ってあげたくなるわけで。本作でも小林さんが温かく、優しい人だから周りに人やドラゴンが自然と集まります。同じ小林姓として誇らしさを感じるし、自分のことを言われているようで嬉しさもあります(笑)。
親子愛や友情、仲間同士の絆などいろいろありますが、それも結局は「愛」の形なので、細分化する必要はなくて、「愛」という大きな括りのものを大切に、愛し愛されて生きていこうと思わせてくれるのではないでしょうか。
――あと前半で描かれた何気ないシーンが実は終盤のカギになっていて、その伏線の回収の仕方も素晴らしかったです。
小林:石原(立也)監督はすごいですよね! だから一瞬たりとも気を抜かずに観てください。
――作中ではオリジナルキャラのフェリキタスを演じられていますが、収録される時に意識されたことはありますか?
小林:私が演じるフェリキタスは、カンナちゃんの父親であるキムンカムイ(CV.立木文彦)側の軍勢のドラゴンで、少数部隊を率いるリーダー格です。見た目が結構かわいくないですか? 自分で言うのもなんですけど(笑)。
――(笑)
小林:ドラゴンなので、演じ方もわからないため、石原監督に尋ねたら「ラスボスで!」と言われて。もっとわからなくなりました(笑)。
作中で対立している「混沌勢」と「調和勢」はどちらも善悪はなく、自分たちの信じることのために戦っているのがせつないですね。その中でもフェリキタスは部隊を指揮する立場で声を張り上げたりするので、そこは確かにラスボスかなと思いました。なので自分なりにメリハリをつけて演じました。
大変だったのは叫ぶシーンかな。歌だったら大きな声で歌っても大丈夫だけど、収録で大声で叫んだら想像上にノドがガサガサになってしまいました。
完成した映像を観て、曲が物語の未来に繋がっていて一安心。完成披露舞台挨拶ではキャストさえ涙した歌に世のお父さん方もグッときてしまうかも!?
――ED主題歌の「僕たちの日々」は、今作で描かれていたカンナとキムンカムイの親子関係、小林さんとカンナやトールの家族のような関係、カンナとクラスメイトの才川リコ(CV.加藤英美里)との友情など、いろいろな絆を歌ったミディアムバラードですが、演歌ではないのに小林さんのコブシが胸を打つのは親から代々受け継がれてきたDNAが呼び起こされるからでしょうか。
小林:歌手としてのスタートは演歌でしたが、今はポップスやアニソン、ボカロ曲まで幅広いジャンルの曲を歌わせていただいています。もちろん私の中には日本人の根底にあるなじみ深いリズム、四つ打ちだったり、太鼓の音がベースにあります。
演歌ではメロディーラインをがっつり伝える歌い方もありますが、「僕たちの日々」は言葉に音をのせていく感覚で歌わないと成立しない曲です。そういう歌い方は難しかったけど大好きですし、そういう歌い方が合う作品だと思いました。
―― 一度聴いてしまうと小林さんの歌声以外じゃ考えられなくて。
小林:ありがとうございます。でも映画の全曲集(映画『小林さんちのメイドラゴン さみしがりやの竜』全曲集)にはカンナちゃんが歌う「僕たちの日々」も収録されているそうで。私もそれを早く聴きたくて。きっとかわいくなるんだろうな。全曲集には私が歌う「僕たちの日々」も収録されていますので、合わせて楽しんでください。
――レコーディングはいかがでしたか?
小林:アフレコをする前にレコーディングしたので、まだ映像も観ていない状態でした。「僕たちの日々」はED主題歌ですが、この曲が流れて物語が完結するのではなくて、カンナちゃんとキムンカムイの物語が続いていく、未来へ繋がる歌になっているかなという不安もありました。
でも完成した映像を観て、うまく繋がっていて、ホッとしました。まさに「例えこの手離れてても繋がってるよ」という歌詞の通りで。この曲で歌っていることは普遍的であり、「当たり前は無いって気づいてはまた忘れて」の歌詞のように、当たり前のことなのに忘れてしまったり、その大切さに気付かないのが人間なのかなと。
だから共感してもらえると思ったし、5月26日に行われた完成披露舞台挨拶で歌った時はみんな納得しているような表情で聞いてくれてよかったです。
――完成披露舞台挨拶はサプライズゲストとして登壇されました。お客さんだけではなく、登壇者の皆さんも涙するほど多くの方が感動されていました。
小林:本編を観た後に聴いていただけたことも要因だったと思います。声優さんたちは全力でキャラクターに命を吹き込んでいるので、各キャラクターに感情移入したり、葛藤や共感など心が揺れ動いた後だったからなのかもしれませんね。カンナちゃん役の長縄さんも一言のセリフをどう言おうか悩んだそうですし。
――でも最後に「僕たちの日々」が流れたら泣きそうになるのはわかりますし、お子さんがいるお父さんはいつか巣立っていく未来が思い浮かんで、ウルウルしちゃうでしょうね。
小林:お父さんって子供に自分の想いを伝えるのが苦手で不器用なところがあって。子供にとってはいつも怖そうに見えるけど、内心はいつも心配していて。特にカンナちゃんみたいなお嬢さんがいるお父さんはかわいくてしょうがないでしょう。映画館で泣いてしまうかもしれないけど、ガマンしなくていいですよ(笑)。
「当たり前は無いって気づいてはまた忘れて」や「分かり合えてそうで すれ違ったり」など歌詞を読むほど素晴らしさを感じる曲
――今、何気なく過ごしている時間や一緒に食事をしたり、TVを観たりする日常も実は大切なことで、永久ではないから大切にしなくてはという想いも芽生えてきました。
小林:寂しく感じるかもしれないけど、それも人生、それが人生なんですよね。だから一瞬一瞬の刹那をどう生きていくのかが大切なんです。人に寄り添っていくのか、親や子供、友達とどう向き合っていくのか。
「当たり前は無いって気づいてはまた忘れて」はそういうことを歌っているし、コロナ禍になった時に「当たり前のことなんてない」と気付いたはずなのに、数年経ったらそんな記憶も徐々に薄れていってしまって。
「分かり合えてそうで すれ違ったり」という歌詞のようなこともよくあって、ボタンの掛け違いで仲たがいしてしまったり。お互いを想い合っているからこそツライけど、それを嘆くのではなく、大事なのはどう修復していくのかで。歌詞をじっくり読めば読むほど、いい歌だなと思います。
この映画を観て、この曲が流れて上映が終わった後に「またね」という気持ちが伝わって、ほっこりした状態で劇場を出てもらえるといいなと思いながら心を込めて歌いました。
――では本作を楽しみにしている皆さんへメッセージをお願いします。
小林:とても優しくて温かくて、心温まるアニメを作るのが上手な京都アニメーションさんらしい作品だと思います。
この映画は大切な人と観てほしいですし、1人の方にも大切な人を思い出してほしい、そんな映画です。例えば進学や就職などで親と離れて暮らしている方で、最近会えていなかったら「そういえば親と話していないな」とふと思って、実家に帰ってみたり、連絡をとってみたりしてもらえたら素敵ですね。
結局は人間もドラゴンも同じで、大事なものは1つしかなくて、親にとっては子供、子供にとっては親なんだということを教えてくれる作品なんだなと、演じたことで改めて思いました。子供の幸せを願わない親はいません。
そして仲たがいしてしまった人がいたら、その原因をもう一度思い出してほしいです。実は些細なボタンの掛け違いだったかもしれません。勇気を出して自分から声をかけてみると関係が元に戻るかもしれませんよ。幸せというものは求めるものではなく、気付くものだとよく言いますから。
お子さんから親御さん、お年寄りまで誰でも楽しめる映画になっていると思いますし、「僕たちの日々」も心に響いてもらえると思います。だから早く自分のコンサートで歌いたいです。
そして映画を観終わった後に、映画のことを思い出しながら「僕たちの日々」を口ずさんだり、ほっこりしていただけたら幸せです。
――この映画で小林さんの歌を初めて聴いたり、「小林さんの歌っていいな」と思った方は、他の小林さんが歌っているアニメタイアップや普段のオリジナル曲も聴いてみるのもいいかもしれませんね。
小林:そうしてもらえたら嬉しいですけど、まずはこの映画をたくさんの方が観てもらいたいですね(笑)。でも観た後に改めて聴きたくなったら、映画の主題歌シングルや全曲集をよろしくお願いします。