満昌寺 三浦義明坐像 京都に搬出 180年ぶりの改修へ
横須賀市大矢部にある臨済宗建長寺派の名刹「満昌寺」の国指定重要文化財「木造三浦義明坐像」が修復されることになった。約180年ぶりとなり、坐像と台座それぞれの経年劣化している継ぎ目や塗装などを約10カ月かけて作業を行う。終了は2026年3月頃としている。文化庁管轄のもと、古文化財の保存修理を専門とする(公財)美術院が京都府で作業を行い、100〜200年先まで維持保存できる状態を目指すとしている。
同寺は三浦大介義明を開基として源頼朝が1194年に建立。坐像は、三浦義明をかたどった等身大の武人俗体彫刻で鎌倉時代後期の造立と考えられている。像高81・4cm、重さは約70kgある。寄木造りで玉眼入り、頭頂には冠をのせ、右手に笏(しゃく)を持ち、腰には太刀を携えている。1993年に国指定重要文化財に指定された。
同寺は創建以降、記録に残っているだけで坐像が安置されている宝物殿は4度ほど火災に見舞われたが、そのたびに難を逃れ、700年超、保存されている。
三浦半島の歴史を伝承
平安時代の1092年、衣笠で生を受けた三浦義明。幼少の頃より弓馬に秀でていたと言われている。15歳で元服。自身の兄弟や息子らを三浦半島全域にわたって配置して領地を治めた。頼朝の旗揚げにいち早く呼応するなど鎌倉幕府の成立にも大きな役割を果たした。
永井宗寛第31世住職は「坐像は寺の宝物(ほうもつ)である以上に、市や三浦半島の歴史を伝える重要なもの。この機会に三浦義明の存在をもっと知ってもらえたら」と話している。
10ヵ月かけ修復
今回は、継ぎ目に生じた亀裂や接合のために使われている鉄くぎなどの腐食、虫蝕孔などを修復する。外見の色や形などは変えず、あくまで長期保存できる体躯に調整していくという。
5月28日(水)に同寺で解体後に搬出、翌朝に美術院がある京都府までトラックで運送し、約10カ月かけて作業を行う。全体で約600万円の費用が掛かり、半分を国が負担し、残りを県・市・同寺で分担する。
今回、改修に至った経緯は昨年、坐像を安置している宝物殿の扉の修繕を行った際、美術院の担当者に「坐像も修復が必要」と打診されたことがきっかけだった。これを機に昨年4月、同院の技師が坐像の頭部と体部分などを解体し、修復の範囲や劣化の程度を図る内部調査を実施。費用を割り出した。
胎内から江戸の木札
坐像の胎内には文字が書かれた木札が入っており、三浦一族の子孫が有志でこれを解読すると、前回行った修復作業が江戸時代の1846年(弘化3年)であることが分かったという。
永井住職は「2030年には大介公が没してから850年の節目になる。記念事業も予定しており、しっかりと直してから、これを迎えたい」と話している。
坐像は5月27日(火)まで公開している(要予約・拝観料300円)。詳細は同寺【電話】046・836・2317または公式HPを確認。