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知ると泣ける制作秘話も?『Welcome Back』川島直人監督ロングインタビュー

ciatr[シアター]

川島直人監督インタビュー

ボクシング×ロードムービーをかけ合わせた映画『Welcome Back』は「人においての勝ち負けとは何か?」を描いた傑作ヒューマンドラマ。

2025年1月10日に公開されたあとも、鑑賞者たちの心を鷲掴みにし、リピーターが続出している今観ないと後悔する1作です。2025年2月14日からはアップリンク吉祥寺ほかで上映が開始されるなど、その熱が収まるにはまだまだ早すぎます。

今回は川島直人監督のロングインタビューを実施。本作が生まれた経緯やそれぞれのキャラクターに込めた思いなど熱量たっぷりに語っていただきました。

※インタビュー取材の模様を撮影した動画コンテンツをYouTubeのciatr/1Screenチャンネルで公開中!動画限定公開のエピソード(テルダンスの誕生秘話や今だから言える裏話も?)が入っているのでお楽しみに。

※この記事には『Welcome Back』のネタバレ情報を含みます。未鑑賞の方はご注意ください。

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川島直人監督のプロフィール

【制作経緯】共依存の関係と向き合うことで生まれた『Welcome Back』

Q:『Welcome Back』の制作経緯をお聞かせください。

川島直人監督
『Welcome Back』はそれこそ2017年に『高崎グラフィティ』という1本目の長編映画をやっている時に、自分がハリウッド映画が大好きというのもあったので、何か派手な映画をやりたいなと思っていました。

そのタイミングで、プロボクサーの友達からボクシングの決勝戦の試合の誘いがあり、見に行ったのが東日本新人王決定戦というボクシングの新人王の中で、すごく大きな大会でした。

試合を見に行った時に、ボクサーの人生を賭けて戦ってる感じや、大勢の前で勝ち負けがはっきりするという、立っているやつは勝ちで沈んでいくやつが負けというのを目の当たりにした時に、残酷だけど美しいと思ったんですよね。

僕みたいな職業って勝負にさらされていないなと思っていて。作品で監督に選ばれないのはちっちゃい会議の中で決まることだし、スポーツ全体、多分そうだと思うんですけど、勝ち負けにさらされているのを見て、勝負にさらされている世界というのを、ちゃんともう少し描いてみたいなというのが2本目の軸にありました。

3本目の軸が、僕は物語を描いている以上、自分の生活とか、自分の人生においての出来事とか、出会った人たちと重なる部分がすごく大きいです。脚本を書き始めた27とかの時に、僕は誰かに依存する瞬間も多くて、多分弱かった、若かったっていうのもあって、依存することが多くて、こうひとりでいられないなっていう部分はあったんですよ。

後輩を呼んだりとか、友達を呼んで遊んだりとか、恋人を呼んだりする中で、この依存、共依存というか……、弱さがゆえに依存してしまうことを、向き合って書いてみたいと思ったので、テルとベンの兄弟に近い、一種の依存、共依存みたいなところを書こうと思っていて。その3つの要素全部が重なってできたのが『Welcome Back』という作品でした。

【観客の反応】女性にも刺さったことが嬉しい驚きに

Q:公開後の観客の反応を見て、特に印象に残っているエピソードはありますか?

川島直人監督
10人いたら3人くらいにしか刺さらない作品だと個人的には思っていてたのですが、蓋を開けてみたら10人中8、9人くらいから高評価をもらえるっていう状況で、すごくびっくりしたし、嬉しかったですね。

最初の宣伝とか配給会社との打ち合わせを含めて、こういう男くさい作品だからこそ、女性のお客さんはもしかしたら取り込めないかもねって言ってたんです。女性のお客さんへの期待値みたいなものがゼロに近かったんですけど、実際上映が始まってみたら女性の方にもすごいハマっていただいて。

性別で分けるのはどうなんだって話かもしれないですけど、やっぱり僕的にはすごくびっくりしてますね。この男臭い話の中でも、女性がハマる何かがあるらしくて、リピーターの人も、それを決して吉村(テル役の吉村界人)のファンとか三河(ベン役の三河悠冴)のファンとかほとんどないし、テルとベンに対してある種BL的な見方をしているわけでもなく、単純に物語として食らってくれている人が多いというのは結構びっくりしてますね。

【キャラ造形のこだわり】テル+ベン+青山+北澤=川島直人監督?

Q:キャラクター造形でこだわったポイントを教えてください

川島直人監督
先ほどお話しした通り、自分の中から出てくるものというのが、身の回りの人間に対して思っていることとかは、自分が書いているので出てくるってのもあるんですけど、今言えることは、テルとベンと青山と北澤を4つ足したら、自分なんだなっていうのはすごく思うというか。

テル(by 吉村界人)は20代の監督?

テルのキャラの作り込みとしては、完全に当時の自分を反映していたりとか、当時26、7ぐらいだと自分の同期の役者とか、クリエイターたちも俺が最強だみたいな感覚を持っている人も多くて。僕もそうだったんですけど、でも負けたという感覚になるってことはすごく大事だなって思っていました。

当時負けるという感覚を知らずに突っ走っていた、自分は最強だと思っていた時の嫌な自分を全部煮詰めて出したのがテルかなと思います。

基本的に物語は最初からこのテルという人間が最後にいかに反省するかということしか考えてなくて、改心までさせようとは思わなかったし、最後まで向き合えよって。負けを認めることから次に進めるということをやりたかったんで、テルにはそこを託しました。

当時僕が『高崎グラフィティ』(川島直人監督の長編1作目)という映画を撮っていて、もちろんそれは納得しているし、すごく好きな作品ではあるんですけど、でもなんかちょっと違ったんですね。

自分はよいものを作れる、最高だ、みたいな気持ちで、結構楽しんで作っていた部分がすごくあって。結局、公開してから自分が思い描いていた作品像にならなかったっていうのはあって。それが結構僕の中で悔しかったし、すごい恥ずかしかったんですよ。

だからそこに僕は初めて挫折したというか、多分28の時とか挫折して、一回振り出しに戻ろうって。そこから映画の勉強をもう一回ゼロから始めて、一日に何本も映画を観るようにして。

それがいいことかどうかわからないですけど、もっとなんか映画を愛そうみたいなのは、挫折して初めて気がつきました。

世の中には挫折したことに気が付けない人がたくさんいると思うんです。テルがあの状態で負けたとしても、結局ベンに対して「俺負けてないよ」って言い続けるじゃないですか。

ああいう状態をずっと続けていた時に、じゃあ50、60になった時に、あいつには何も残らないというか、周りを傷つけて終わると思ったので。ああいうプライドだけ高い人間をどう改心させるというか、どう負けたって気づかせるかという話はやろうかなと思いました。

ベン(by 三河悠冴)は憧れへの決別

ベンにとってテルは神様みたいなもので、誰かを憧れて誰かにすがるってすごい楽だと思うんですよ。人間って誰かに憧れて、この人になりたいって思うことってすごい楽で、それは僕も20代の時の自分でもあって。

要はこういう人になりたいとか、こういう映画監督になりたいとか、こういうファッションをしたいとか、こう何か憧れみたいながあるんだけど……。憧れること自体は悪くないし、そう思う人になりたいと思うのはいいけど、憧れになりたいだけじゃダメなんだっていうのは強く思っていました。

誰かに憧れるのは楽だけど、憧れて寄り添うんじゃなくて、二本足でちゃんと立っていけるけど、その人のことを見て、この人のこの部分は取り入れようみたいな。20代後半のときに憧れの感覚が明確に変わったんですよね。それをベンに託したというか。

あのとき、僕は何かに憧れて、憧れっていうものだけを追いかけていた。その自分への決別という意味でも、ベンというキャラクターを出したなと思っています。

青山(by 遠藤雄弥)は実はズルいやつ?

青山はお人よしっていう意見があるんですけど、いや、僕なんかあいつ一番ずるいんだよなって思っていて(笑)。いや、いい意味でですが。

彼がテルとベンについてくる理由は、僕は一個しかないと思っていて。テルとベンの才能を摂取したいんですよ。すごい奴のそばにいて、そばにいることによって何か得られるんじゃないかっていう感覚って人間誰しもがあると思うんですよ。

例えば、偉い人の本を読むとか、トークショーに行くとか、そばにいることによって摂取した気になるっていうところがあって。青山はその意味でベンとテルに近づいていって、ずっと旅してるんだなと思っているんですよね。

編集で切っちゃった部分ではあるんですけど、結構ベースにあって。明確に多分僕の中から出てきていて、何かに才能ある人のそばにいたいという感覚。でも負けたってことに一応蓋してなんとか生きているという、僕にとっては30代ぐらいの時のテンションかなと思ったりします。

北澤(by 宮田佳典)は誰よりもテルの復帰を祈っている?

北澤は多分、今の僕じゃないですかね。それぞれ何か僕から出てきているという話で通すと一番新しい僕な気がしますけどね。

「俺も弱い、俺より弱い奴がいるから、俺が一番っていうだけの話だ」っていうのは好きなセリフで。20代最強だと思ってた自分を経て、今34歳ですけど、31、2ぐらいの時に、どんなに褒められても「自分は凄くない」って思うようになっていて。

それって謙遜しているとか、周りを見下しているというわけじゃなくて、世界を見たら自分だってまだまだだと思うし、その意味で北澤のキャラはいるなと思っていて。

たとえば北澤なんか一番テルの復活を祈っているというか。青山とかベンよりも、もはや一番テルの才能を信じてるのが北澤だと思うんですよね。だから素直に「お前が強くなっただけや」とか言えるというか。

でも最後やっぱりよい試合をした時に純粋に認められるっていう、何かよいものはよいって純粋に認められるっていうことは、多分北澤のよいところというか。僕も今、多分そういうマインドでいたいなっていう感じです。

なれているかどうかは別ですけど、そういうマインドになりたいなと思って北澤というキャラクターを書きました。

Q:北澤は若い頃の無双状態の監督を体現しているのかと思っていました。

川島直人監督
テルと北澤は表裏一体なんですよね。もともと持っている本質は一緒で。ただ、いらんプライドを持っているか、いらんプライドを持っていないかだけの違いだと思っていて。

【ボクシング映画・ロードムービーのこだわり】

Q:ボクシング映画とロードムービーっていう大きな2つの要素がありますが、こだわったポイントがあればお聞かせください。

ボクシング映画の真髄は、生の感情をとらえること

自分でもボクシングを2年間ぐらいやってみて、やればやるほどボクサーに対してのリスペクトもありましたし、生の彼らの試合にリスペクトがあったので、リスペクトしているからこそ、映画としてボクシングを生よりも超えようといううがった気持ちは捨てようと思いましたね。

あくまでもやっぱ生で人生を懸けて闘っているボクサーと、ある程度映画は物語が決まっている中で、どうしても生の試合を超えるものを撮ろうというのは、もう絶対無理な話で。

ただ、僕らに出来ることとしては、彼ら(役者)が生で戦い、本気で試合をかけている感情を見せることはできるんですよ。

だからその感情だけはちゃんと見せようっていう、それこそが映画にできることなんじゃないかなというのはあったので。

どっちかというとボクシングを生っぽいボクシングを見せるということよりは、ボクシングが映画の中でどう上手く作用してるか、なんでこの人たちと戦っていて、どういうふうな気持ちになって、揺れ動いているんだろうということがボクシングを通してわかればいいなということを念頭に置いていました。

なので、カッティングをかなり速くしてアクション映画っぽくしたし、それは自分の中では正解かなと思ってますね。

よいボクシング映画って本当はそこなんですよね。何かやっぱりボクシングがどうこうじゃないんですよね。ボクシングの中身がどうこうじゃなくて、彼らがどう戦っているかというのを見せてくれるから、ボクシングがいい、ボクシングが素晴らしいように見えるというか。

『百円の恋』(安藤サクラ主演のボクシング映画)にしても、誰も安藤サクラさんがどういう振りをして、どういう綺麗な戦い方をするかに興味がない、というか。

安藤サクラさん演じる一子がリングに上がることに意味があるから、リングに上がっちゃえばこっちはもう何が起きようが気持ちよいわけですよね。

ロードムービーだから引き出せる本音の会話

もともと、僕はロードムービーが好きでした。基本的に洋画の方をよく観るのですが、洋画って知らない景色とか知らない音楽とか、知らない服とか、知らない飯とか、色々なものを見られるじゃないですか。それがすごく楽しくて。

基本的には知らないものを見たいとなってくると、ロードムービーというのはすごいマッチングしていて。東京から名古屋に行く間に色々ロケハンも兼ねて車を走らせた時に、見えるものが新鮮だったりしたので、こういうものをちゃんと届けたいなっていうのがあったので、ロードムービーにしたかったです。

車の中って、普段話さないこと話せたりしないですか?ベンとテルの会話とか、青山もそうですけど、多分机に座ってまじまじとご飯を食べながら話そうか、っいっても、なかなか話せないような連中だと思うんですよ。

でも、青山が運転して、テルが助手席に乗っていて、でもお互い顔を合わせなくて、空虚な場所に言葉を投げて会話をする。

これってなにかご飯とか、カフェとかお茶しながらとか、喫煙所で絶対できない会話というか、何か特別な空間だと思うんですよね。

流れているからこそ流れるように言葉が出てきて、その言葉が停留するわけじゃなくて、さらっと流れていく。人と人の会話って、時にぶつけ合うじゃないですか。どうしても会話して、拾ってもらって、会話して、拾ってもらってという。

でも車の中の会話とか、ロードムービーにおける旅の中での会話って、ここに投げて、会話をここに止まっていたものがさらっとそのまま抜けていくみたいな感覚がすごいあるので。

なんか僕みたいにまじまじと熱い話をするのが照れくさい人間としては、ロードムービーってすごい好きなんですよね。

【ロケーション】川島直人監督作に川や水辺が登場する理由とは?

Q:川島監督の作品の中に、川や水辺が多く登場するように思います。(「高崎グラフィティ」、「始まりの鐘をならせ」など)意識的に取り入れているのでしょうか?

川島直人監督
基本的に僕が千葉の九十九里出身というのがあって、海から30分のところに親戚が住んでたんですよ。幼い頃って、そこでの記憶の方がちょっと強くて、自然と水辺っていうものに関して、何か自分のそばにあるみたいな印象があって。

生まれ育った場所としては埼玉の八潮というところで、中川という大きな川が流れていたり、葛西用水っていう日本一汚い用水所って言われていたところがあって。基本的にこのウォーターフロントというか、水の前での考え方みたいなものは、自然にあって、意識的には入れてるつもりはないですけど、でも何か水辺を絶対入れたくなっちゃうみたいな感覚はありますね。

【コメディ描写】ひとつ引いたらすべてが喜劇に

Q:劇場でも笑いが起こる場面が多々ありました(ベンのテルダンスや青山のキレキレのツッコミなど)。コメディ描写でこだわったポイントがあればお聞かせください

川島直人監督
そうですね。作品って入れば入るほど、ぐっと視点がだんだん狭くなると思うんですよ。当然前のめりになるからこそ、見ている時にどんどん視点が狭まってくると思うんですけど、何か僕的にはこの視点も大事だけれども、俯瞰して見る視点、物語を見る目というか、物事を捉えることが大事だなと思っていて。

引いたらこれってコメディだよっていうのを見せたかったというか。言ったらめちゃくちゃ無駄なことしてるんじゃないですか。

ベンとテルがふたりで歩いていて、止まらないからって、青山が車に乗せて旅をして。しかもやっちゃいけない道場破りに、ボクサーはみんな貧乏だと言って、どんどん間違った選択をしていって。

最後の最後まで頑張ればいいところを八百長まで。全部間違った選択をしてるじゃないですか。そこって人間のおかしいところだよという、ひとつ引いたら喜劇であるみたいなことを意識的に見せたくてやりましたね。

【ラストシーンのこだわり】知ると染みる2つの卵の意味

Q:ラストシーンが生まれた経緯をお聞かせください。

川島直人監督
ラストシーンは当初脚本を書いている段階からもうこうしようと決めていました。共依存のことから絡めて、僕はひとりで飯を食べられるひとは超強いなと思っていて。当たり前のことなんですけど。ひとりでご飯を食べるのって弱いとできないんですよね。

誰かと食べたくなっちゃうし。どこか飲みに行きたくなるけど。ひとりで料理をして、ひとりで食べるって、めちゃくちゃ強いと思うんです。そういう思いがあったんで、ラストシーンで彼(テル)にひとりでご飯を食べさせるというところまでは、結構最初の段階から決まっていました。

一番簡単な料理って何だろうと時に卵かけご飯だったんですね。もちろん納豆ご飯とかいろいろありますけど、卵が一番シンプルだし、いいなと思って。

あそこで2個卵をかけるのも、テルとベンの分ということで。2個入れたいのが絶対こだわりとしてありました。

卵に醤油をかけないのはなぜ?

結構物議を醸している、卵に醤油をかけないシーンなんですけど。

醤油をかけて食べるとなにかすごい美味しそうにこいつご飯を食べようとしているなみたいな。何か少しそれって本質的じゃない気がして、とりあえず腹が減ったから、かきこむというなにか生の感じを求めていました。

本当に言うんだったら、川に行って銛で魚を突いてそのまま食うぐらいのテンションのことをやりたいんですよ。そういう中で、卵に醤油を垂らす瞬間にこいつ綺麗に飯を食おうとしてるって感じがして、僕的にはすごい嫌だったんですよね。

もっと分かりやすい例えで言うと、相手が悪いことをして自分が怒っているとするじゃないですか。それは別に友達とか、会社の同僚なのか関係ないんですけど。そんな時に自分がアイスコーヒーを喫茶店に頼んだのに、相手がパフェを頼んだらすごい腹が立たないですか?

反省してると言ったら、なんで今すごく美味そうなものを食おうとするの?みたいな感覚に近いと思うんですね。だから反省させるつもりも含めて、あんまり美味そうに食わせないのなら醤油をかけないようにしようと思いました。

【キャラクターのその後】主題歌がかからないのはなぜ?

Q:キャラクターたちのその後を考えたりされますか?

川島直人監督
そうですね、あまり何か続編的な考え方はしないですけど、一個思っているのは、彼らがいまだに現実世界で生き続けているという感覚を持たせるような作品にはしたかったです。

映画はとはいえフィクションだし、そういうフィクションを観に来ましたという時に、あまりにもリアリティ、リアリティしていてもという、僕は考え方があるんですが。

何か一番自分の中で気持ちいいゾーンってやっぱりフィクションっぽいけど、いそうだよなみたいな人たちとか、そういうことを描くのがすごい好きで。

会ったこともないし、見たこともない、自分の半径にいないけど、何か自分のクラスにいないけど、隣の中学校の6組にはいそうみたいな人たちが感覚的に好きで描いているんですけど。だから何か生き続けているで欲しいなと思って本を書いていますし。

そんなことを思うから、主題歌もかけずにいるんですよね『Welcome Back』は。主題歌をかけるとここで終わりましたみたいな。これはフィクションですっていう感覚がもうちょっとあったりするんで、何か。劇場の外と中をシームレスにしたかったので、主題歌をかけずにゆっくりとしたローファイな音楽で終わっていくという感覚でやっているんですけど。

MA(音声・録音技師)のアリスという子から、「監督はなんで主題歌をかけないんですか?」って質問をされて、シームレスっていう話をしたら、「じゃあ咀嚼音を伸ばしましょう、咀嚼を伸ばして、タイトルも差し込んで入っていって、そこから音楽がじわっと入ってくる方がよりシームレスになると思いますよ」って言ってもらえて。

それはすごく僕としてはよいアイデアだなと思ったし、当時はもうタイトルがドン!って出たら、音楽が出るって感じでしたけど。咀嚼音をすごい引っ張るっていうのは、なんか最後足らなかったものが、ピースがはまった感じがしました。

川島直人監督の人生が詰まった会心の一作『Welcome Back』

映画『Welcome Back』は、川島直人監督の人生が詰まった会心の1作。ボクシングを題材しながらも、描いているのは人間そのものです。

多くの人が経験する負けや挫折のその先を描いた本作には、誰もが刺さるポイントが何かしらあるはず。"今”を逃すと、劇場でかかるのは数年先になるかもしれません。そうなる前にぜひ劇場へと足を運ぶことをおすすめします。

※今後インタビュー取材の模様を撮影した動画コンテンツをYouTubeのciatr/1Screenチャンネルで公開予定。動画限定公開のエピソード(テルダンスの誕生秘話や今だから言える裏話も?)が入っているのでお楽しみに。

▼取材・文:増田慎吾

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