【夏休みは子どもを伸ばすチャンス!】見えない学力を育てる「お手伝い」のススメ[専門家監修]
子どものお手伝いは親の負担が減るだけではなく、子ども自身が達成感を得て自己肯定感が育ちます。そしてそれは、学力アップにもよい効果があるものです。夏休みは、お手伝いを通して子どものさまざまな力を育てるチャンス。「行動の優先順位を考えられる」「マルチタスクのトレーニング」「ほめられることで自己肯定感が上がる」など、お手伝いによる子どもの成長と、うまく継続させる親のサポート方法を、GCS認定プロフェッショナルコーチで『見えない学力が身につく 勉強よりもお手伝い』著者の粂井優子さんに伺いました。
「お手伝い」で育つ、たくさんの力
最初に、子どもにお手伝いをさせることの意味を考えてみましょう。家事や動植物の世話など、生活するために必要なスキルが身につくことのほかに、子ども自身の成長にどのような影響があるでしょうか。
➀自己肯定感が高まる
お手伝いの習慣によって日常的に感謝の言葉を伝えられる機会が自然と増え、「家族に認められている」「必要とされている」感覚が育まれ、自分に自信がつきます。それによって、日本人に足りないと言われている自己肯定感を高めることができます。
②思いやり、優しさが身につく
お手伝いとは、家族みんなのための仕事や、自分以外のだれかのための行為です。お手伝いを通して「自分の行動がだれかを楽にする」という感覚が芽生え、相手のことを考えて行動する思いやりや優しい気持ちが育まれます。
③「段取り力」がつく
例えば玄関掃除なら、「全部の靴を端に寄せてから、ほうきで掃く。そのあと靴をきれいに並べる」など、作業効率を考えて動く「段取り力」が身につきます。
④集中力・忍耐力がつく
掃除や野菜の皮むきなど、作業の途中で中断せずに集中して行うことで、集中力や忍耐力が身につきます。
⑤「逆境力」が身につく
「朝から蒸し暑い」「出かける予定があって時間がない」など、「今日はやりたくない」時も例外を認めずに本人に任せることで、物事をやりぬく力である「逆境力」が身につきます。保護者の方もある意味、覚悟が必要だと思います。
⑥自分で考えて決める力がつく
日常的にお手伝いを続けていくうちに自信がついていくと、「今日はこちらを先にやってみよう」「この方法で効率的にやろう」など、自分で決めて行動できるようになります。こうした力は、将来的に勉強やスポーツの練習などを自分で進めていくうえでも、とても大切なものになります。
また、「お手伝いをする子ほど自律性、積極性、協調性が高い」という調査もあるように、お手伝いは子どもの成長に良い影響を与えます。お手伝いで正義感、道徳心、忍耐力などの「非認知能力」と言われる力が自然と身につけられるのです。
お手伝いは、保護者の方がお子さんに「ありがとう」を言えるチャンス。そして、そのときのお子さんのうれしそうな姿は、保護者の心を温めてくれます。
「夏休みならでは」のお手伝いとは
まとまった時間のある夏休みにお手伝いをするメリットとして、「新しいことにチャレンジしやすい」「期間が長いので継続してできる」「失敗してもやり直しができる」ということが挙げられます。
これまでにお手伝いの経験のあるお子さんは新しいことに挑戦できますし、これまで学校に慣れるのにいっぱいいっぱいで、お手伝い経験のないお子さんも取り組めるチャンスです。
以下に、小学生におすすめの、夏休みならではのお手伝いを挙げてみましょう。
◆小学生におすすめのお手伝いの例
※取り組みやすい順に☆~☆☆☆ で表示
取り組みやすさ:☆
・朝の玄関掃除
・靴をそろえる
・洗濯機のスイッチを押す
・新聞受けから新聞を取ってくる
・食卓を拭く
・ (食事の支度で)野菜を洗う
・弁当箱を水につける
・食器をさげる
・お風呂を沸かす(スイッチを入れる)
取り組みやすさ:☆☆
・お風呂掃除
・洗濯物を干す
・食事の準備(テーブルセッティングなど)
・お弁当の中身をつめる
・ご飯を炊く(お米をといで、スイッチを入れる)
・ご飯をよそう
・食器を洗う
・食器を拭く
・食器をしまう
取り組みやすさ:☆☆☆
・ペットの世話
・植物の水やり
・洗濯ものを取り込む
・洗濯ものをたたむ
・洗濯物をしまう
・アイロンがけをする
・料理をする
・自分の部屋の掃除
・トイレ掃除
・リビングルームの掃除
いかがでしょうか。すぐに取り組めそうなお手伝いもあれば、保護者の方が一つ一つやり方を教えることが必要なお手伝いもあるかもしれません。やり方を教えるときは、「言葉で説明」→「親御さんが実際にやって見せる」→「お子さん自身にやらせる」とステップをふむとよいでしょう。
家族で話し合って、子どもだけではなく、家族全員の担当を表にして可視化するのもよい方法です。曜日ごとに家族全員の家事の担当を記入する、下記の「家のこと計画表」をぜひ参考にしてみてください。
表にある「我が家のキャッチフレーズ」を家族で考えてみましょう。
担当を決めるうえで大事なのは、「この中で何をやりたい?」と家事の好き嫌いを聞くこと。「手先が器用」「コツコツ続けられる」など、本人の得意なことを生かすのも大切です。 また、「○○と△△だと、どっちをやりたい?」と子どもに選ばせるなど、本人の「○○をする」を引き出すことで、より主体的に取り組めるようになります。
保護者の「OKな言葉」「NGな言葉」
保護者の方が何も言わなくても、お子さんが黙々と自分からお手伝いをしてくれたら、こんなに素晴らしいことはありません。でも、そういうお子さんは、決して多くはありません。保護者の方の感謝の言葉や、行動を促す質問力によって、お手伝いを毎日続けられるかどうかが違ってくるのです。
ここでは、保護者の方の声かけとしてOKな言葉、NGな言葉をご紹介します。
【OKな言葉】
「ありがとう」「助かるな~」「うれしい」(感謝)
「コップがピカピカになってる!」(具体的にほめる)
「大丈夫!」「あなたならできるよ」(認める、激励)
「なんでできたの?」(驚きと賞賛)
「いつならできる?」(質問)
「どんな家にしたい?」(目的のために何ができるか考えさせる)
【NGな言葉】
「早くしなさい」「さっさとやりなさい」(命令)
「お姉ちゃんの方が上手」(比較)
「まだ、ざらざらしてる」(ダメ出し)
「なんでできないの」「下手くそね」(否定)
保護者の方の「ありがとう」は、いつでも、何度でも言っていいと思います。「ありがとう」に言いすぎはありません。
ただ、毎回同じ表現ではなく、「~が上手になったね!」と、お子さんの様子を見て気づいた点を口にするなど、ちょっとした工夫も必要です。
また、「今はやらない」などと渋っている場合は、「何ならできる?」「いつならできる?」と質問して子どもに決めさせる方法もあります。自分で考えて行動できる子にするためには、「指示より質問」が効果的なのです。
「NGな言葉」はふだんから意識的に避けたほうがいい言葉。「命令」「他者との比較」「否定」「ダメ出し」は子どものモチベーションを下げてしまうものです。
比較するなら、その子の過去と今。そのうえで、成長を認めてあげるとよいと思います。 完璧を求めず、まずは「やってくれたことにありがとう」です。減点法ではなく、加点方式でいきましょう。
お手伝いの内容で、「もう少しここをきちんとやってほしい」という自分の気持ちはいったん横に置いて、子どもの気持ちにフォーカスします。「ありがとう」を伝えたうえで、「できたら○○もやってくれると、お母さんはうれしい」と言うと、子どもも受け入れることができます。
お手伝いは、保護者の方が大切なお子さんに「大好き」を伝える機会でもあります。
人は、ありのままの自分を認めてくれて「大好き」と言ってくれる存在がいるだけでがんばれるもの。お手伝いを通じて、お子さんにたくさんの「大好き」を伝える夏にしていただけたらと思います。