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相続した「売れない不動産」はどうする? 負動産の対処法とメリット・デメリットを徹底解説

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空き地イメージ

東京などの都市部では不動産価格の上昇が続いていますが、一方で全国には売るに売れないような土地、建物も増えています。相続で被相続人(亡くなった人)の財産にこのような「売れない・使えない不動産=負動産」が含まれていたら、どうしたらいいのでしょうか? 相続した場合の対処法は? 考えられる選択肢と、それぞれのメリット・デメリットを解説します。

負動産の所有で起こる問題

土地などの不動産は、「とにかく持っていれば得をする」というものではありません。自分で住んだり、人に貸したり、あるいは売却したりといった活用がままならない場合には、「ただ税金を払うだけ」の“お荷物”になってしまいます。

このような物件を持っていると発生する問題には、次のようなものがあります。

固定資産税がかかる

土地、建物には、その物件の状態に応じて、毎年固定資産税がかかります。利用していなくても、税金だけ取られることになります。

維持・管理は欠かせない

誰も利用していないからといって、持っている不動産をほったらかしにすることはできません。土地の草刈りや立木の管理、建物があればその維持や管理は所有者の義務で、それらを怠った結果、近隣などに迷惑がかかったりした場合には、責任を問われる可能性があります。

子どもなどに「負の連鎖」となる

のちほど、所有する負動産の対処法について述べていきますが、一般的にその所有権を移動させるのは、簡単ではありません。所有したまま自分が亡くなると、それは相続財産となり、子どもなどが引継ぎを迫られます。

これも後述するように、相続人には相続放棄という選択肢があります。ただし、それを選ぶことになると、他のプラスの財産も受け継がせることはできなくなってしまいます。

空き家などに対する規制が強化されつつある

安全性や景観などの観点から、誰も住まずに放置される空き家が社会問題化し、法的な規制も強化されています。崩壊の恐れなどのある「特定空き家」とみなされると、通常の居住用不動産に適用される固定資産税の減免措置(所有者の負担を軽減する「住宅用地の特例」)の対象外となり、税負担が大幅に増えます。

このように、利用されていない不動産に対する社会の目が厳しくなっていることも、しっかり念頭に置く必要があるでしょう。

相続前にできる対策

このようにリスクの大きな負動産を持たないのが無難なのは、いうまでもありません。騙されて買わされたりしないことはもちろんですが、否応なく所有を迫られるのが、被相続人の遺産に問題のある不動産が含まれた相続です。

相続放棄すれば負動産を引き継がなくて済む

被相続人の財産を相続する人は、プラスの財産とともに、借金などのマイナスの財産も引き継ぐ必要があります。マイナスが明らかにプラスを上回る場合には、家庭裁判所に申し立て(申述)を行うことにより、相続を放棄することができます。この相続放棄が認められれば、負動産も相続する必要がなくなるわけです。

ただし、相続放棄は「相続人ではなかった」と同義で、被相続人のすべての財産に対する相続の権利を失います。プラスの財産だけもらう、というわけにはいきません。

相続放棄のメリット・デメリット

◇メリット

・負動産を相続する必要がなくなる

◆デメリット

・プラスの財産も相続できなくなる
・被相続人の財産内容などを精査する必要があるが、家裁への申し立てには「相続を知った日から3ヵ月以内」という期限がある⇒状況によっては期限延長も可能
・一度相続放棄が認められると、撤回できない

負動産を持ったらどうする

一方、相続などで負動産を所有した場合には、どうすればいいのでしょうか? 主な対処法には、次のようなものが考えられます。

売却の可能性を探る

通常、負動産≒売れない物件ですから、ハードルは高いのですが、“お荷物”だと思っていたものに値が付けば、それに越したことはありません。

例えば、自分の住んでいるところから離れた「田舎」にあって、到底買い手などつかないだろうと思えても、地元には意外なニーズがあるかもしれません。地域の不動産業者に査定を依頼するなどして、売れる可能性を探るのが、「第一の選択肢」といえるでしょう。

◇メリット

・売却益を手にして、負動産を処分することができる

◆デメリット

・そもそも売れる可能性は高くない
・不動産業者に仲介などを依頼した場合は、成約まで時間がかかることが多く、手数料などのコストも発生する

隣人をターゲットに売却、譲渡を検討する

負動産の処分を考える場合に、有力なターゲットになるのが、実はその不動産の隣人です。家を増築したい、広い庭が欲しいなどの「隠れたニーズ」を持っていることもあるからです。どうしても処分したいときには、無償で譲渡することにすれば、引き取ってもらえる可能性が高まるでしょう。

◇メリット

・負動産を引き取ってもらえる可能性が高まる

◆デメリット

・無償譲渡の場合には、相手に贈与税が課税される可能性がある

空き家を賃貸する

所有しているのが家屋(空き家)の場合には、賃貸物件にして収益を得ることができるかもしれません。古い家でも、家賃によっては借り手がつく可能性があります。

◇メリット

・空き家を生かして、賃貸収入を得ることができる

◆デメリット

・借り手を見つけるのが大変
・貸主として、物件の維持・管理が必要になり、手間もコストもかかる

空き家に自分で住む

年齢や財産状況によっては、思い切って別荘やセカンドハウスとして自分のために活用する、という道もあります。セカンドハウス(毎月1日以上、日常生活のために使っている住居)ならば、「住宅用地の特例」の対象となり、固定資産税の軽減措置が受けられます。

◇メリット

・負動産を自らのライフスタイルの多様化に活用することができる

◆デメリット

・「2拠点生活」によるコストの増加が避けられない
・不動産の維持・管理が必要になる

更地にして土地の活用を考える

建物がある場合には、それを取り壊して更地にしたうえで土地の有効活用を考える、というのも選択肢の1つです。具体的には、駐車場にしたり資材置き場などとして貸し出したり、といったことが考えられますが、当然現地にそうしたニーズのあることが前提になります。

◇メリット

・土地から賃貸収入などを得ることができる

◆デメリット

・建物の解体も含め、収益を生む状態にするためにはコストがかかる
・ニーズが乏しく、ビジネスとして成り立たないリスクがある
・更地にすると、「住宅用地の特例」から外れ、固定資産税が高額になる

自治体に寄付する

条件によっては、不動産のある自治体に寄付することも可能です。ただし、簡単に引き取ってもらえるわけではなく、厳正な審査にパスする必要があります。有効活用が難しい不動産にとっては、ハードルが高いようです。

◇メリット

・コストをかけずに負動産を処分することができる

◆デメリット

・自治体の審査に通るのは簡単ではなく、寄付を受けてもらえる可能性が高いとはいえない

「相続土地国庫帰属制度」を利用して国に引き取ってもらう

2023年4月に、「相続土地国庫帰属制度」が施行され、相続人にとって不要な不動産を国に引き取ってもらえるようになりました。ただし、引き取ってもらえるのは土地(更地)で、申請には要件があります。

◇メリット

・相続したうえで、負動産を国に引き取ってもらえる⇒プラスの財産を受け取れる

◆デメリット

・建物がある場合には、更地にする必要がある
・担保権など申請者の所有権以外の権利が設定されていたり、土壌汚染があったりする土地は申請できない。審査の結果不承認となる可能性もある
・審査手数料や負担金がかかる(無償ではない)

専門業者に有償で引き取ってもらう

どうしても処分したい負動産については、不動産買取業者にお金を払って引き取ってもらう、という手立てもあります。

◇メリット

・固定資産税や維持・管理など負動産を所有する負担から逃れることができる

◆デメリット

・買い取りのコストがかかる

まとめ

いったん取得した負動産の所有権を他に移すのが容易でないことは、ご理解いただけたと思います。仮に売却などが決まった場合にも、登記簿謄本(登記事項証明書)、登記識別情報、固定資産評価証明書などの書類を用意したうえで、滞りなく手続きを進めなくてはなりません。あえていえば、「なるべく早く手放したい」という焦る心理につけ込んで、不利な条件の取引を持ちかけるような悪徳業者の存在も、頭に入れておく必要があります。

負動産の処分に困った場合には、早めに不動産取引に詳しい専門家のサポートを仰ぐようにしましょう。

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