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5年生より弱い6年生。6年だけで戦うか、実力主義でいくのか迷います問題

サカイク

5年生より弱い6年生。前の監督がこの子たちの年代の時にちゃんと育成してくれなかったので、下の学年でやることを6年生の今やってる。

6年生のレベルが全体的に低くて、5年生を出さないと勝てない。優しくて仲の良い6年生全員を出してほしいけど、最後の試合まで半年しかなくて勝てない状況に焦る......。というお母さんからの悩み。

今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの取材で得た知見をもとにアドバイスを送ります。
(文:島沢優子)

(写真は少年サッカーのイメージ ご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

 

<<チームメイトに「いらない」と言われる発達障害の息子。いじめだと思うが親が口を挟んじゃいけないのか問題

 

<サッカーママからの相談>

小学6年生の息子がスポーツ少年団でサッカーをしております。既に入部している友達から1年位誘われて入り、約1年になります。6年生は全部で9人しかいません。 一人は故障で長期休んでおります。

現在息子はCBをしております。体幹やキック力もありゴールキックも任されており足も学年1速いので活躍しております。 息子はこれでいいのですが、チームに幾つか問題がありまして。

それは、6年生が5年生より弱いということです。6年生だけだと勝てません。混合チームだと6年生で4名がベンチ組です。最後の大会まで半年なのに。

聞いた話だと、今の5、6年生が4、5年生の時に監督がサボってろくな練習や試合が全く出来ないまま6年生になったそうです。なので全体的なレベルがだいぶ低いのです。

監督が変わって少しずつ強くなってきたのですが、問題は6年生のみだと勝てないことです。

要はこのまま思い出を作るのにサッカーをするのか?それか、勝てるチームを目指すのか? 

監督としては6年生で編成する方針らしいのですが、正直チーム強化が間に合うのか微妙なところです。 ベンチ組が育たないので試合では5年生が出てきます。4、5年生の時の事は子どもたちの責任ではないので、試合に出れないのは可哀想な気もするのです。 優しくてみんな凄く仲良しなので全員試合に出て欲しいのです。

最近になって6年生だけの試合も組んでくれるのですがやはり負けてしまいます。もうあと半年しかないのにこの状況に内心焦っております。

今月くらいから各ポジションの動き方や裏への走り方、スペースの作り方などに取り掛かった位です。下の学年で学ぶことを今やっているのは前監督の責任です。(保護者が色々と訴えても変わらなかったようです)

今の監督に変わってからもの凄く情熱的に、時に厳しく時に優しく育てて貰っているのですが、なんせいきなり実力主義に変わったので正直子ども達に酷な気がしております。

ただみんな練習がキツイやら長いやら文句は言ってますが、基本的には楽しんでいるようです。

とりとめのない相談になってしまいましたが、これから保護者としてどう考えると良いのかアドバイス頂けると幸いです。

 

<島沢さんからの回答>

ご相談いただき、ありがとうございます。

お気持ちを率直につづっていただけているようです。

勝つ喜びも味わわせたいけれど、6年生全員で試合をさせてあげたい。そんな親心が文面から伝わってきます。

しかしながら、愛情にあふれた親心の表現方法を間違えてしまうと、子どもにとって良くない結果につながりかねません。指導者が交替するなど環境が変わるなか、息子さんを含めチームメイトたちはそこに対応しようとしています。

そのそばでお母さんがさまざま意見を言ったり、考えたり、動くことがプラスになるのかどうか。その一点を考えてみましょう。

 

■あなたが焦ってもチームの状況は変わらない

そこで私から、いくつかの「そもそも論」をお話させてください。

チームがどんなメンバーでどう戦うのかといったことを考えるのは、指導者とプレーする選手たちです。負けが続いて焦っているとのことですが、お母さんが焦ったとて状況は変わりません。

いくら子どもを預けている保護者だからといって、このメンバーでこう戦ってくださいと指導陣に意見もできないでしょう。つまり、「そもそも」親の出る幕ではないのです。

無論、コーチの指導に暴力性があったり、それが原因で子どもの心身に支障をきたしたりしているのなら、親として抗議するのは当然ですし話し合いが必要でしょう。

しかし、ご相談文からはそこまでの緊急性は感じ取れません。しかも子どもたちはサッカーを楽しんでいるようだと書かれています。ここは静かに見守ってあげればいいと思います。

 

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■思い出作りと勝てるチーム、どちらかに絞るものではない

次に「このまま思い出を作るのにサッカーをするのか? 勝てるチームを目指すのか?」とありますが、そもそもどちらかに絞るものではありません。

子どもは試合に勝ちたくてやっています。6年生全員で出て、どこまでできるか挑戦すればいいと私は思います。6年生全員での出場を「思い出作り」などと形容せず、「みんなで楽しくサッカーできればいいね」と見守ってあげませんか。

現在指導している監督さんは「時に厳しく、時に優しく育てて貰っている」とあります。具体的にどんな指導かわかりませんが、アメとムチのような古い指導でなければいいがと少し心配になりました。

その監督さんも、お母さんも「そもそも」厳しさの意味をはき違えていないでしょうか。

 

 

■たくさん指示を与えるより、自分で考えさせるほうが厳しい指導かもしれない

サカイクで連載をされている池上正さんがジェフ千葉で中学生チームを指導したときのことです。試合中に保護者から池上さんにこんな声が飛んだそうです。

「どうして何も言わないんですか? 相手のコーチはたくさん指示を出してますよ

それに対し池上さんは「いや、私は選手が自分で考えてプレーするかどうかを見ています。実は日本一厳しいコーチかもしれませんよ」と答えました。怒鳴ったり指示命令する指導は子どもの自立と成長を阻みますが、多くの大人が怒鳴ったり、叱ったり、煽ったりする態度からしか「厳しさ」をイメージできません。

しかし、池上さんは「主体的に取り組まなければ、君は何も獲得できないよ」というメッセージを込めた態度を貫いていました。

それこそが真の厳しさだと私は考えます。怒鳴ったり指示を与える言動は、実は甘やかしているのかもしれません。怒って刺激を与えているのですから、それは「世話を焼いている」ことになります。それは時に「過干渉」になります。

繰り返しになりますが、過度に干渉する大人は子どもの自立と成長を阻みます。このことは現在、教育界や幼児教育、保育の世界でも少しずつ認識されています。

 

■言葉には魂が宿るもの 「ベンチ組」という言い方はやめよう

ご相談文を読むと、お母さんは前の監督を全面的に否定していますね。彼のせいで「ベンチ組が伸びなかった」と書かれています。

レギュラーの親御さんがそうではない子どもたちを「ベンチ組」と形容するのは、たとえ本人たちの目の前でなくいてもやめましょう。単なるひとつの言葉ですが、言葉には魂が宿るものです。

また、前監督を見たわけではありませんが、もしかしたら楽しくサッカーをさせて子どもたちの伸びしろを残していたのかもしれません。

試合の勝ち負けや子どもの出来栄えだけをみるのは、そもそも良いことではありません。まずは親としてボランティアで指導されているコーチへの感謝の気持ちを表すことが、子どもへの良い教育になります。

 

■子どもの輝く姿を見たいあまり、ストレスが溜まっているのでは

(写真は少年サッカーのイメージ ご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

 

「とりとめのない相談になってしまいましたが」と書かれているように、お母さん自身、とても揺れているように見えます。わが子は主軸のセンターバック。子どもの輝く姿をみたいあまり、ストレスが溜まっていないでしょうか。

6年生だけで出ても試合に勝てる強いチームを期待しているのでしょう。お母さんは「優しくてみんな凄く仲良しなので全員試合に出て欲しい」と願う一方で、6年生だけの試合で負ける姿に「あと半年しかないのに」と焦っています。恐らくどちらも正直なお気持ちでしょう。

負けるとお母さんは悔しいようですが、一番悔しいのは子どもたちです。悔しがる子どもたちに「でも、よく頑張ったよ」と結果ではなくプロセスに注目してあげるのが大人の役目です。

そういったことを踏まえて、「そもそも」何のために息子さんにサッカーをやらせているのか、ここをあらためて考えてみましょう。

そのためにも、半月でもいいので息子さんのサッカーと距離を置くことをお勧めします。落ち着いて「何のために」をじっくり考えてみてください。

 

島沢優子(しまざわ・ゆうこ)ジャーナリスト。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』『東洋経済オンライン』などでスポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実 そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート 夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)『世界を獲るノート アスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『部活があぶない』(講談社現代新書)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)『オシムの遺産 彼らに授けたもうひとつの言葉』(竹書房)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著・小学館)『教えないスキル ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術』(佐伯夕利子著・小学館新書)など企画構成者としてもヒット作が多く、指導者や保護者向けの講演も精力的に行っている。日本バスケットボール協会インテグリティ委員、沖縄県部活動改革推進委員、朝日新聞デジタルコメンテーター。1男1女の母。

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