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【映画『宝島』】アメリカ統治下の沖縄の若者たちを描いた話題の大作。映画化に込めた思いや、撮影中の苦労話まで、大友監督に聞きました!

アットエス

終戦直後からアメリカの占領下だった時代の沖縄を若者たちの視点から描いた映画『宝島』が、9月19日から公開されています。

今回は映画『宝島』の監督である大友啓史さんに、映画に込めた思いや見どころを伺いました。聞き手は「鉄崎幹人のWASABI」パーソナリティの鉄崎幹人、SBSアナウンサーの重長智子。

(C)真藤順丈/講談社 (C)2025「宝島」製作委員会

鉄崎:まずは、映画『宝島』のあらすじをお願いします。

重長:終戦後のアメリカ統治下となった沖縄と、時代に抗って生きる若者たちを描いた映画です。妻夫木聡さん、広瀬すずさん、窪田正孝さん、永山瑛太さんといった豪華キャストが共演されています。

登場するのは、アメリカ軍基地から物資を奪って困窮している人たちに分け与える「戦果アギヤー」と呼ばれる若者たちです。そのリーダーで英雄的な存在だったのが、永山瑛太さん演じるオンちゃん。そのオンちゃんが突然いなくなって、残された妻夫木聡さん演じるグスク、広瀬すずさん演じるヤマコ、窪田正孝さん演じるレイは、オンちゃんの影を追いつつそれぞれ別の道を歩んでいきます。

アメリカに支配され、本土から見捨てられ、思うようにならない沖縄の現実や、やり場のない怒りと共に生きていく姿、当時の様子が生き生きと熱量を持って描かれています。

鉄崎:2025年は沖縄本土復帰53年、そして戦後80年という節目の年でもあります。大友監督は沖縄に特別な思いがあるんですよね?

大友:そうですね。僕と沖縄はNHKの朝ドラ『ちゅらさん』を手掛けて以来の長い付き合いです。『ちゅらさん』は、沖縄の本土復帰以降の物語だったんですよね。「癒しの島」「温かくて優しい沖縄」というような本土の人間が持つイメージを前面に出したドラマで、当時から沖縄の人たちの優しさと同時に、強さも感じていました。

その強さは、沖縄のアメリカ統治下の歴史や戦争と結びついてるんじゃないかなということで、ぜひ復帰前のアメリカ統治下の沖縄の物語をやりたいと思っていました。20年近く持ち続けていたネタなんですね。

小説から受けた熱量を、なんとか映画化したい!

(C)真藤順丈/講談社 (C)2025「宝島」製作委員会

重長:原作は、2018年に出版され、直木賞を受賞した真藤順丈さんの小説『宝島』(講談社文庫)ですね。

大友:直木賞の前にプロデューサーが見つけて「これをやりたいんです」って言って来たんです。僕も一晩で全部読んじゃって。どんなことがあっても粘り強く生き続ける沖縄の若者たちのたくましさや、その熱量をまともに受けて、眠れなくなっちゃったんですよね。

その熱量をそのまま、『ちゅらさん』以来の念願だった、本土復帰前の沖縄の物語を自分の手で映画化したくて、それから6、7年やってきましたね。

鉄崎:完成まで6年の間に中断もありましたよね。

大友:この規模の映画で中断ってきついんですよ。新型コロナだったからどうにもならなくて。もし放り出しちゃったら、原作の中のオンちゃんやグスク、ヤマコ、レイに、「所詮、君に任せるべきじゃなかったよ」とか言われそうで。

鉄崎:なるほどね。

大友:「諦めないで生きた人間たちを描くのに、当事者で僕らが簡単に放り出してどうするんだ」っていう思いがすごくあったので、必死にかじりついて、スタッフも諦めずにいました。妻夫木君たちもずっと待ってくれたんですよ。

鉄崎:この規模の映画ができたのは奇跡だと思いますね。

大友:うん。

鉄崎:よくこんなシーン撮れたなという、非常に迫力のあるシーンもありました。沖縄について知ってほしい、こんなドラマが沖縄の歴史にあったことを伝えたいという監督の思いを強く感じたんですよ。

大友:僕自身「戦果アギヤー」をちゃんと知らなかったですからね。彼らみたいに、米軍の基地に忍び込んで、食料や生活物資を盗んで、皆に分け与えてくれるような若者がいなかったら、沖縄の人たちは食べていけなかった時代なんですよね。

その事実1つを取っても、沖縄が当時、どういう状況にあったかわかると思います。その時、本土の方は高度経済成長で、イケイケの時期だったから。

鉄崎:本当にそう。

大友:東京タワーができて、大阪万博や東京オリンピックがあり、繁栄に湧き立っていた頃に、沖縄ではこういうことがあったと思うと、今からでも遅くはないから、ちゃんと知るべきだって思いますよね。

鉄崎:僕が子供の頃、沖縄はアメリカだったんですよ。小学生の時(1972年)に本土復帰したんだけど、今の若い子たちに「沖縄がアメリカだったんだよ」って言っても、「えーっ」てなりますよね。

大友:そうですよね。

鉄崎:監督がお話ししたように、沖縄は癒しの土地で海が綺麗なリゾート地っていう目でしか見てない人もいるかもしれない。でも、沖縄は今も相変わらず日本の防衛の最前線にいてくれるわけですよ。

大友:米軍基地の7割が、未だに沖縄にありますから。

鉄崎:そういう沖縄の歴史があって、今につながってる映画『宝島』は、若い人たちにも見てほしいんじゃないですか。

大友:沖縄を知るということもありますが、映画の中で沖縄の人たちが、自分たちの宝物、例えば自由とか民主主義とかを自分たちの手で取るべく頑張っている姿など、今の若い人たちにすごく届く内容があるんじゃないかなと思っています。

鉄崎:あると思いますよ。

重長:当時の沖縄について、知れば知るほど胸が締めつけられるような気持ちにもなりました。改めて沖縄について知る機会としても、見ていただきたいなと感じました。

大友:ありがとうございます。同じ思いです、僕も。

その時代の沖縄を再現する難しさも

(C)真藤順丈/講談社 (C)2025「宝島」製作委員会

鉄崎:この映画には青春ドラマという一面もありますが、映画としての迫力も感じていただきたいです。コザ暴動のシーンはもう大迫力ですごかったです。

大友:アメリカ統治下の沖縄を再現するのがなかなか難しかったです。セットも、当時のヴィンテージカーや衣装もですね。沖縄の人たちに対する僕らの思いがあるから手を抜けないし、撮らなきゃいけないという思いにもなりますしね。

エンターテイメントとして皆さんに楽しんでいただきながら、最後にとてつもなく大切な、私たちが失っていたものにたどり着く。映画監督としては、そういう技術も発揮しなきゃいけないという思いもあり、やることがたくさんあって大変でした。

鉄崎:いろいろな思いが詰まった映画で、沖縄は「宝の島」なんだなって感じました。全編通してこんなに熱さを感じる映画は久しぶりに見ました。

大友:ありがとうございます。スタッフも俳優陣も本当にやりたかった映画だと思いますよ。

鉄崎:その熱が伝わってきました。

自分にとっての「宝」を考えるきっかけに

(C)真藤順丈/講談社 (C)2025「宝島」製作委員会

大友:僕たちが知らなかったアメリカ統治下の時代の沖縄を、映画『宝島』を通して追体験し、あの時代の沖縄を知っていただきたいと思います。

沖縄がどうして「宝の島」と呼ばれるのか。そして英雄と呼ばれたオンちゃんが何を守ろうとしていたのか。映画を観た皆様にとっての宝って何だろうかー。そういうことを考えるきっかけになる映画になってほしいと思っております。

重長:ぜひ映画館でご覧ください。

鉄崎:今日は映画『宝島』の監督、大友啓史さんにお話いただきました。大友監督、ありがとうございました。

大友:ありがとうございました。

※2025年9月10日にSBSラジオ「鉄崎幹人のWASABI」で放送したものを編集しています。

今回、お話をうかがったのは……大友啓史さん
1966年岩手県盛岡市生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。1990年NHK入局、1997年から2年間ハリウッドで脚本や映像演出などを学ぶ。帰国後、ドラマ『ちゅらさん』『ハゲタカ』『龍馬伝』などの演出、映画『ハゲタカ』監督を務める。
2011年4月NHK退局、ワーナー・ブラザースと日本人初の複数本監督契約を締結。映画『るろうに剣心』『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』『プラチナデータ』などを手がける。
最新作の映画『宝島』’は2025年9月19日から公開中。

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