老後2000万円はウソじゃない?リアルでシビアな親の“終の棲家”選び…何から始める?ポイント3選【親の「終活」について考える#4ー②】
「終活」という言葉がめずらしいものではなくなった、人生100年時代の今。
大切な人だからこそ、「最期」や「いなくなったあと」を想像することはどうしても後回しにしてしまいがち…。
だけど、大切な人だからこそ、大切に考えたい、大切なことが「終活」には詰まっています。
連載「親の「終活」を考える」では、Sitakke編集部も自分事で「親世代の終活」に向き合います。
テーマは「終の棲家」…理想をいってはいられない!?
今回のテーマは、親がどこで最期のときを迎えるのか…。
前編・親の“終の棲家”選びは待ったなし?「子どもに迷惑はかけたくないけど、家には帰りたい…」家族みんながつぶれないために考えること【親の「終活」について考える#4ー①】では、家族で決める「落としどころ」や施設の種類の多さについてお話してきました。
いったい、どのように「終の棲家」を選べばいいのか…
今回もソーシャルワーカーとして、施設への知識や相談実績も豊富な終活マイライフの熊崎梨絵さんにお話を伺いました。
まずはとにかく…
ではこれだけある施設から選択する時に、一番大事なことを説明します。
これは単純明快、ずばり「お金」です。
私は真っ先に
「いくらまで出せますか」
「今、年金・預貯金・財産など合わせて、いくら用意できますか」と率直にお聞きしています。
その金額なら、「こことここと…と3カ所程度」とか。
「ここしか入れる場所はないですよ」なんてケースも多くあります。
立地とか、本人の希望の機能や広さとかを聞いている場合じゃないというシビアさが、こうした施設選びにはあるんです。
ちなみに、お子さんが、施設の費用を負担するケースというのは、現実的に難しいことが多いというのが、ソーシャルワーカーとしてご家族を見てきた私の見解です。
親世代が、施設への入居を考えるタイミングって、子ども世代が50代くらい。
60代だとしても、今ならまだ働いている人も多いですよね。
子どもの子どもが大学生くらいでまだお金がかかる…などのケースも多く、子ども世代自体が「まだまだ要り様」。
あくまで、親自身の全財産の中でどうするかという選択になってくると考えておいてください。
そういったことを日ごろから話したり、お互いで把握できているといいですよね。
「老後は2000万円必要」はうそじゃない?
さあ、ではいったいどれくらいのお金が必要なの?というのが気になりますよね。
もちろん、選ぶ施設や、それぞれに必要となるケアなどにより金額は異なってきます。
ですが、月々の基本の料金に、介護などの負担、おむつやその他の雑費などすべて含めて、ひとつの基準として月に20万程度かかる、という大まかな認識があるといいと思います。
そして、これもまた人によって大きく異なりますが、入居の年数については10年以上…という方もめずらしくはありませんから、10年をひとくくりとして考えてみましょう。
すると…
月20万円×1年12か月×10年
=2400万円!
どこかで聞いた「老後に2000万円必要」はあながち外れているものでもないのだな…という現実も見えてきます。
それは貯蓄で賄うのか、家などの財産を売って資金を作るのか、年金で足りないのなら生活保護の申請が必要なのか…考えていく目安にしてみてください。## 次に検討する材料は…医療・介護
次に検討するのは、どの程度の医療行為が必要か、介護の必要はどれくらいあるのかということ。
安全面でさまざまな配慮が必要なだけでなく、看護師などの資格をもったスタッフの配置などの関係で、施設によってできることとできないことがあります。
特に注意が必要な医療行為は
●インスリン注射
●気管切開によるたんの吸引
●透析治療
また、介護についても同様です。
認知症が進んでいたり、介護認定が進むと、施設によっては入居できないところも出てきます。
食事の介助はどれくらい必要か。
トイレは?お風呂は?など、それぞれで細かく決まっていたり、料金体系が変わったりするので、「入居する親の状態」と、「施設のできること」の両方をしっかり把握し、調べるようにしましょう。
事前に少しでも…施設を探すきっかけと見るべきポイント
親世代に、終の棲家について考えてもらうとき、一番いいのはやはり見学に行くこと。
コロナ禍以前ですと、複数の施設を見学する「バスツアー」もありましたが、最近はほとんど見かけません。
だけど、各施設は、事前に電話連絡などをいれれば、見学させていただけるところが多いです。
やみくもに選ぶには数が多すぎる…という不安があるなら、民間で相談にのってもらえる機関もあるので数をしぼってみるといいかもしれません。
施設の見学に行ってみると、例えば暮らす部屋がどれくらいの広さなのかなど具体的なイメージが湧きやすいです。
これくらいの部屋に入る分しか荷物は持っていけないんだな、とわかると、ではどれくらいの物の処分が必要かも見えてくる。
「終活」の次につながっていくんです。
施設の見学のときにぜひみてもらいたいのが、職員の人たちの様子。
あいさつをしっかりしてくれるか、笑顔が見えるかというのは大事なポイントです。
また、私がおすすめするのは、職員の人たちが「はっきりと」説明してくれるかという部分。
介護や介助が必要となる高齢者施設では、できることとできないことの確認がとにかく大事。
「ここまではできる。これはできない」とできないことまでしっかり伝えてもらえることは、信頼感や安心感につながります。
「終の棲家」選びは、条件を選んで理想の場所を探す…というよりも、シビアな問題が見え隠れする現実が見えてきました。
次回からは、施設ごとの特色を詳しくお伝えして、より心構えとイメージを膨らませるようにしていきましょう!
※終活マイライフでは、5月12日に創立7周年記念セミナーを開催します。
・「在宅医療について考えてみよう!」講師:金谷潤子先生(看取り・在宅医療に精通する札幌麻酔クリニックの副院長) 参加者の質問に金谷先生が直接答えてくれます。
・5月12日(日)14:00~16:00
・札幌エルプラザ4階 大研修室
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連載「親の「終活」を考える」
文・編集|Sitakke編集部あい