「キング・オブ・撮影監督」といえば誰?韓国映画界が生んだ“マイスター”の仕事が光る『ハルビン』制作秘話
韓国で記録的ヒット!『ハルビン』ついに日本上陸
韓国観客動員数4週連続第1位を記録(※2025.4.22/KOFIC調べ)したヒョンビン主演のサスペンス・アクション大作『ハルビン』が、7月4日(金)より全国公開となる。
1909年――祖国独立という使命を胸に命をかけて、中国・ハルビンへ向かった大韓義軍アン・ジュングン(安重根)と同志たち。『ハルビン』は、アジアを震撼させた歴史的事件を現代の視点から再解釈した極上のサスペンス・アクション・エンターテイメントだ。
ヒョンビンがアン・ジュングン(安重根)を熱演し、パク・ジョンミン、チョ・ウジン、チョン・ヨビン、イ・ドンウク、そして特別出演のチョン・ウソンなど、韓国映画界の実力ある俳優たちが集結。さらにリリー・フランキーが伊藤博文を演じたことも大きな話題を呼んでいる。
そんな本作は、“韓国のゴールデングローブ賞”と称される百想芸術大賞で<最優秀作品賞>と共に、撮影監督が<大賞>を受賞。ということで今回は、韓国映画界が誇るマイスターの至高の仕事を垣間見ることができるメイキング写真と共に、その貢献をざっと紹介したい。
史上初の快挙! そのマイスターの名は「ホン・ギョンピョ」
映画『ハルビン』の映像美を支えたのは、撮影監督のホン・ギョンピョだ。今年5月に開催された第61回百想芸術大賞で映画部門の最優秀作品賞とともに大賞を受賞。撮影監督が大賞を受賞したのは史上初の快挙だという。さらに、第18回アジア・フィルム・アワードでも撮影賞に選出され、トロント国際映画祭の首席プログラマーから「撮影、演技、ストーリーが調和した美しい映画」と高く評価された。
これまでキム・ジウン、カン・ジェギュ、ポン・ジュノら多くの名韓国人監督とタッグを組んできたホン・ギョンピョ。主な撮影作品は戦争大作『ブラザーフッド』(2004)、『哭声/コクソン』(2016)、アカデミー賞受賞作である『パラサイト 半地下の家族』(2019)など。また、日本人監督とも数々の現場を共にしてきており、李相日監督の『流浪の月』(2022)、是枝裕和監督の『ベイビー・ブローカー』(2022)と枚挙にいとまがない。
『ハルビン』に込められたマイスターの“こだわり”とは?
高機能カメラの使用
ウ・ミンホ監督の「アン・ジュングンと同志たちの話をリアルに扱いたかった」という意向に応えるため、『パラサイト 半地下の家族』でも使用した高性能カメラARRI ALEXA 65を採用し、広大な風景や人物の細やかな動き、表情まで再現した。
光と影のコントラスト
広大な砂漠や薄氷の水面を捉えた映像は、光と影のコントラストを大胆に使い、圧巻の映像を作り出した。
戦闘シーンの描写
シナ山での戦闘シーンでは、スタイリッシュなアクションよりも「骨がぶつかり合うような白兵戦」を描くことを重視し、動きを極力抑えた1台のカメラでじっくりと撮影。他のシーンとの違いを明確に打ち出した。
列車内の撮影
ポン・ジュノ監督の『スノーピアサー』(2014)での経験が、列車内のシーンの撮影に役立ったと語っている。
クライマックスの演出
アン・ジュングンが最終目的を達成するクライマックスのシーンでは、ウ・ミンホ監督と議論を重ね、これまでの作品で試みられてきたやり方ではなく、俯瞰で撮ることを選択した。
カラヴァッジオからの着想
アン・ジュングンと同志たちがアジトで語り合う場面では、バロック期のイタリア人画家カラヴァッジオの絵画を参考に撮影。これは当時の「世の中そのものが暗かった」という時代性を空間として再現するためであり、「遠くにある光が小さな隙間から届くようなやりかた」で撮影したという。「あまりに明るいのは映画の中心となるメッセージと合わない」という考えのもと、こだわりの表現をとことん突き詰めたマイスターならではの仕事だ。
ロケーション撮影
「映画のテーマを象徴的に示している」と語る、凍りついた湖の上でのアン・ジュングンの印象的なシーンは、当初予定されていた雪山から、モンゴルのフブスグル湖での撮影に変更。ホン・ギョンピョも大満足だったという象徴的なシーンを、ぜひ大きなスクリーンでご堪能あれ。
マイスターが極限まで追求した映像美に酔いしれること間違いなしの『ハルビン』は7月4日(金)より全国公開。