パンダ外交にも貢献。「エリート中のエリート」岸本周平・元和歌山県知事の経歴
ニュースキャスターの長野智子がパーソナリティを務める「長野智子アップデート」(文化放送・月曜日15時30分~17時、火~金曜日15時30分~17時35分)、5月8日の放送にノンフィクション作家の常井健一が出演した。4月15日に急死した岸本周平・元和歌山県知事の経歴、その存在の大きさについて語った。
鈴木敏夫(文化放送解説委員)「(岸本周平・元知事は)代議士から知事になって1期目、68歳での若い死でした。通夜、告別式には延べ3000人が集まったと言われます。弔問客は幅広く、自民党の二階元幹事長、立憲民主党の辻元代表代行、国民民主党の玉木代表もいて。さらに皆さん、気になっていますパンダ外交についても。この辺り、すべて岸本さんをキーワードに、常井さんに語っていただきます」
長野智子「(和歌山・アドベンチャーワールドの)パンダ4頭が来月、すべて返還されると。岸本知事の死が関係しているんですか?」
常井健一「中国のパンダ契約は、延長される例がよくあるそうで。どうして今回、できなかったのか。和歌山といえば二階幹事長ですよね。要するに中国に強かった二階さんの政治力が衰えたからでは、という憶測がありますけど、地元の人に聞いてみますと岸本さんの急死も原因ではないか、と語られているんですよ。岸本さんはパンダ外交の前面に立って、中国との交渉役を担っていたんです。もちろん二階さんとも連携していましたけど」
長野「はい」
常井「岸本さん自身も昨年7月に、中国のパンダの故郷といわれる四川省に乗り込んで、オスの借り入れを直談判しているんですね。和歌山のパンダっていま、4頭ともメスで。和歌山としては過去に1頭のオスだけで16頭も増やした実績があるので、繁殖は任せてくれ、と。岸本さんは攻めの姿勢で交渉にあたっていた。ところが岸本さんが亡くなって1週間経ったら、オスを借りるどころか4頭を期日より2ヶ月早く、返還することになった」
長野「中国側としては岸本知事だから貸していた、というところもあったんですか?」
常井「そこを読み解いてみると、こうなることを見越して、パンダは大きな外交案件になると語って、国レベルで動いて問題提起をしていた。そのとおりになっていますね。中国の真意はわからないけれど、生前、交渉責任者の1人として動いていた岸本さんという政治家の大きさを示す出来事のひとつだと見ています」
長野「その岸本周平さんとはどういう方だったのか。教えてください」
常井「和歌山政界というのは長いこと二階家と世耕家の対立があって。外様の岸本さんが漁夫の利を得ながら、緩衝材役となることでバランスが保たれてきたわけです。三国志のような構図で。いちばん地味なんですけど、岸本さんは50歳を過ぎてからの遅咲きで。財務省のエースから大衆政治家に生まれ変わった、けっこうユニークな政治家なんですね」
長野「へえ~!」
鈴木「簡単に経歴を紹介しますと、1956年、和歌山出身。地元の県立桐蔭高校から東大法学部に進んで大蔵省へ。将来の事務次官候補だったと。20代で中曽根内閣の総理秘書官に抜擢されます。総理官邸でもいちばん若いブレーンを務めて。そのあとアメリカのプリンストン大学留学、47歳でトヨタに転職、奥田会長の知恵袋に。衆議院議員選挙に初当選したのが2009年。民主党に参加、以来5期連続当選。2022年、和歌山県知事に就任……」
長野「エリート中のエリート!」
常井「聞いただけでも鼻につくほどのキャリアですけど、じつは二度の挫折経験があったんです」
このあと、その二度の挫折経験や、岸本元知事が「選挙の鬼」と呼ばれ、高い影響力を持つまでになった経歴が語られた。