政府専用機に新人配属「緊急事態」にどう対処?荷物管理からCAまで…訓練密着
総理大臣など要人たちが乗る“政府専用機”。
そこに配属された6人の新人の訓練に密着、メディア初取材です。
「ツカダさまの反応がありません。東さんは機長とSICに報告してください」
緊迫した声が響きます。緊急事態の訓練です。
ホールを飛行機の機内に見立てて、CA業務をするのは航空自衛隊千歳基地・ロードマスターと呼ばれる空中輸送員の新人たち6人です。
6人はこの3月から“特別航空輸送隊”勤務を命じられました。
“特別航空輸送隊”とは、政府専用機を管理する部隊です。
6人は日本各地の航空隊から選抜されてきました。
階級も出身も年齢もバラバラ。憧れを抱いて入隊を希望した精鋭たちです。
政府専用機は、1987年に導入された特別輸送機です。
最大航続距離は約1万4000キロメートル。
現在の機体は2代目で2019年4月から運用され、首相や要人の外国訪問や国際会議出席など、いつでも飛び立つことができるよう千歳基地に2機が待機しています。
整備もパイロットも、すべて特別輸送隊が担当しています。
馬渕亮文1等空曹が「緊急に入ったミッションに対して、最近ではトルコで大地震(2023年)が起きた。物品、テントなど運ぶ作業をした」と教えてくれました。
給油無しでフランスまで飛ぶことができる政府専用機は、国際緊急活動や国際平和協力など様々なミッションを担っています。
荷物管理からCA業務まで…
訓練も笑顔を絶やさない水口碧さん(26)。
普段は普通の20代の女性ですが、訓練となると表情は一転します。
ロードマスターは荷物の管理、重量計算、そしてCA業務もこなします。
6人の新人たちにそれぞれ教官役が付き、教官は乗客役もします。
訓練で乗客役の教官が「ビールいただけますか?」と話しかけると…
「ビールですか?かしこまりました…」
突然の声掛けに戸惑う水口さん。ビールをぎこちなく提供します。
するとすかさず教官から「注文は必ず復唱する。大きな声で」と指摘が。
実際の空の上で行われるため、揺れなどもあり、地上の訓練とは違います。
自衛隊に入り初めての「接客」に苦戦の様子。
そこに今度は操縦室からのアナウンスが…。
「シートベルトサインが点灯しました。カートを出しておくには厳しい揺れです」
料理のサービス中に、突然の大きな揺れが発生。
同じく新人の東美羽さん(22)が「乗客の皆さま、ベルトをお締めください!」と呼びかけます。
作業を中断して自分も座席につかないといけません。
するとさらに操縦室からがこんなアナウンスが。
「操縦室よりお知らせします。当機は油圧系統の不具合が発生したため、緊急降下を実施しました」
機体に異常が発生したというシチュエーションに、現場の緊張感が一気に高まります。
水口さんが「ただいま、機体内外に異常がないか確認しております」と乗客に説明、東さんが「機体内外に損傷を発見された人はお知らせください」と呼びかけます。
状況を確認する新人隊員たち。
ここで窓に10センチの亀裂があることを発見。
教官が「この方の席移動を。ここに空いている席はないので、アフター(後方)エリアにて調整します」と促します。
安全のため乗客を移動させる東さん。後方エリア担当の水口さんに乗客を託します。
冷静に対処する新人たちですが、試練は続きます。
非常事態の対応 緊迫の瞬間
操縦室からのアナウンスは続きます。
「当機は、先ほど発生した機体の異常により、これ以上の飛行の継続は困難と判断しました。最寄りの●●国際空港に着陸します」
緊急着陸のアナウンス。笑顔が自慢の水口さんの表情も険しくなります。
「ただいまから、着陸衝撃から身を守るための衝撃防止姿勢について説明します。この姿勢は私たちが『頭を下げて!』と言った時から『シートベルトを外して!』と言うまでとり続けて!」
「こちら機長。着陸30秒前。衝撃姿勢をとれ」
新人たちは一斉に叫びます。
「頭を下げて!」
機体は緊急着陸へ。新人たちは乗客に向かい、叫び続けます。
「当機は滑走路に接地。大きな音響とともに衝撃を伴って滑走中。航空機止まらない」
「頭を下げて!」
「滑走路を逸脱して、洋上にて機体完全停止」
次々と事態が進行…水口さんも必死に対応します。
「機体停止…。大丈夫落ち着いて!着水!着水!シートベルトを外して!」
海の上に停止した航空機。救命胴衣を着させ、急いで脱出させないといけません。
東さんがいる前方のエリアでは…。
乗客役の教官が「このドアダメ!このドア使えない。前を確認して!」と叫びます。
水口さんは「L4(ドア)OK!脱出!脱出!」と乗客たちを促します。
ここで訓練終了。水口さん、少し放心状態です。
「自分だけの命ではなくて、乗客の命も預かっているので、この職に就くと決めたときからしっかりと気持ちを切り替えていこうと思っている」
新人たちの訓練は、きょうも続きます。
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2025年4月18日)の情報に基づきます。