【倉敷市】第39回倉敷っ子美術展(2025年1月31日~2月16日開催)~ 倉敷市内89校の小中学校の作品が倉敷市立美術館に飾られる展覧会
倉敷市立中央図書館、倉敷市立自然史博物館とともに、倉敷市の文化施設ゾーンを形成する一角にある倉敷市立美術館。ここは、美術館としての役割だけでなく、子どもたちの教育の場としての役割も担っています。
その代表的な活動のひとつである倉敷っ子美術展が、今年度も2025年1月31日(金)から始まりました。
開会式と式直後の、子どもたちの元気であふれる会場に足を運んできました。
「第39回倉敷っ子美術展」とは
倉敷っ子美術展は、未来を担う子どもたちの想像力を育て、また、みずみずしい感性をみがき豊かな情操を養う場として毎年倉敷市立美術館を会場に開催中の展覧会です。
39回目を迎える今年度(2024年度)は、以下の89校が参加。
・倉敷市立小学校 60校
・倉敷市立中学校 26校
・岡山朝鮮初中級学校
・岡山県立倉敷天城中学校
・清心中学校
平面・立体・共同作品が、計9,340点も出展されています。
例年一万人以上の来場者が訪れる展覧会。今年度も、2025年1月31日(金)午前時点で小学校33団体が来館を予定しています。
開会式のようす
2025年1月31日(金)午前10時から15分ほど、倉敷市立美術館の一階ロビーにて開会式が開催されました。
展覧会を主催する倉敷市教育委員会教育長のほか、倉敷市議会議員や倉敷市立倉敷西小学校の児童や保護者、倉敷市立西中学校の生徒会長も駆けつけて、盛大に執りおこなわれた開会式。
倉敷っ子代表挨拶を務めた倉敷西小学校4年生の三岳瑠菜(みたけ るな)さんは
「私は図工の授業が大好きです。その図工の授業で作った作品が倉敷市立美術館に飾られてとてもうれしいです」
と語り、続けて
「ほかの小学校の作品をしっかり見て、これからに生かしたいです。みんなで友達の作品を楽しみましょう」
と呼びかけました。
開会式の最後にはテープカットもあり、華やかな式でした。
展示のようす
倉敷市立美術館の一・二階を広く使って作品が展示されています。
展示場所
一階:第1展示室(中学校)、エントランスホール(小学校)
二階:第1展示室、展示コーナー、ロビー(小学校)
元気いっぱいに作品を鑑賞する子どもたち
開会式を終えた児童たちはまず、二階にある小学校の展示室へ向かいます。
自分たちの作品が学校ではなく市立美術館に展示されるようすに、思わず笑みがこぼれるようでニコニコ笑顔で記念撮影。
その後は、ほかの学校の作品の鑑賞に移ります。
一人でじっくりと作品を鑑賞する子
友達と一緒にまわりながら「ねぇねぇ見て見て!これ、すごかったよ!」と作品を紹介し合う子
生活科バックに挟んだ感想用紙に一生懸命感想を書く子……。
思い思いに作品を鑑賞する子どもたちがあふれる展示室は賑やかで、一緒にいる私も元気になれます。
会期中の平日は連日小学生が展示を見学しに来るので、元気いっぱいに作品を鑑賞する子どもたちの姿も見られますよ。
学校ごとの特色を生かした作品
倉敷っ子美術展は、学校ごとに作品を展示しています。
学校の規模によって、学年単位で参加する学校もあれば
全校で同じテーマに取り組む学校もありました。
学年単位で参加している学校は「毎年〇年生が参加」のように、小学校6年間のうち一回は倉敷っ子美術展に出展できるよう各校で調整しているそうです。
また、倉敷市立連島南小学校では地域の特産である蓮根(れんこん)を使った作品を
岡山朝鮮初中級学校は19世紀の朝鮮で流行した吉兆画を用いた作品を展示するなど
学校ごとの特色を活用した作品も見られました。
展示に携わる小学校教員によると、「廃材を使用した作品はSDGsの学習にもつながります。家にあるゴミになるかもしれなかったものを、子どもたちがどう捉えて作品に変化させているのかが見どころです。学校にも廃材は用意しているので、購入せずに家庭にあるものを学校に持ってくるよう指導しています」とのこと。
話を聞いてから再度作品を鑑賞すると、さまざまな学校で廃材を再利用した作品が展示されていました。
美術科以外の活動でも制作されていた出展作品
一階の第1展示室には、中学校の生徒による作品が並びます。
小学校の作品にも彫刻刀(ちょうこくとう)を使った版画作品がありましたが、中学生となるとさらに立体的な作品も制作されています。小学生にとって「中学生になったら、こんな作品を作れるようになるのか」と目標になるような作品が多数ありました。
中学生になると作品を制作するだけでなく、自己評価もしているようです。倉敷市立福田中学校は全学年の作品が展示しているので、学年が上がるごとに自己評価の記載がより専門的になっていくのが、わかります。
「美術展と名が付くからには、出展作品は美術科の時間に制作しているのだろう」と思っていましたが、【美術×家庭科】という作品も発見。
こちらは、家庭科の保育の学習で中学生が考案した子ども向けのおもちゃ。
書いて以下の学習でおもちゃを考案するだけでなく、実際にそれを制作することで美術の時間と教科横断的な学習になっています。
教科横断的な学習
文部科学省によると、教科横断的な学習とは「STEAM(Science, Technology, Engineering, Mathematics)の各分野が複雑に関係する現代社会に生きる市民、新たな価値を創造し社会の創り手となる人材として必要な資質・能力の育成に向け、各教科等での学習を実社会での問題発見・解決に生かしていくため」の学習を指します。
また、中学校になると部活動も始まりますよね。第1展示室の奥には、部活動で制作された作品も展示されていました。
「教科横断的な学習」や「部活動」はニュースなどで耳にしたことはあっても、実際に学校の教育活動でどのように展開しているのかはなかなか見られません。倉敷っ子美術展は、作品を通して今の学校でどのような教育活動がおこなわれているのか、も垣間見える機会のひとつなのだと思いました。
おわりに
開会式の来賓挨拶にて、倉敷市議の北畠克彦(きたばたけ かつひこ)氏から
「子ども時代に倉敷っ子美術展で自分の作品を倉敷市立美術館に展示し、自分に子どもが生まれたらわが子の作品を鑑賞しにここを訪れる。この展覧会は、世代をつなぐ展覧会だ」
との言葉があり、あらためて39回の歴史の重さを実感しました。
また、仁科康(にしな こう)倉敷市教育委員会教育長は
「楽しく作った作品を楽しく鑑賞してほしい」
と笑顔で語り、美術活動は正解を求めるものではなく「楽しさ」がなによりも大切な活動なのだと再認識させられました。
実際に、子どもたちは美術館内に展示された作品を晴れやかな表情で鑑賞しており、迫力ある作品と子どもたちの賑やかな姿が相まって作品を鑑賞している私も楽しい気持ちでいっぱい。
世代をつなぐ、楽しさであふれる第39回倉敷っ子美術展は、2025年2月16日(日)まで開催中です。