唯一無二の馬券師・弥永明郎『伝授』第8回 クラシック直前に伝授しておきたい馬知識
俺は競馬場でレースを見るだけでなく、北海道の馬産地に赴いて馬を見ることも少なくない。
今回は少しその辺の話も絡めながら、もうすぐ行われるクラシックについて書いてみたい。
・なぜ北海道が馬産地なのか?
北海道=馬産地というイメージから「馬にとって寒い方が良い」という人がいるけど、温暖なアメリカのケンタッキー州も馬産地なわけだし、一定数の人間が勝手に寒い方が良いと言っているだけに過ぎない。
そもそも馬は雪が降るとあまり歩かない。仔馬は母馬と一緒に付いて歩くけど、雪が降っていると母馬が歩かないから、仔馬も歩かなくて成長が遅くなってしまう。なので、一概に北海道が馬にとっては良いとは言えない面もある。
では、北海道がなぜ馬産地になったのか? 個人的に疑問に感じたので色々と聞いてみたことがある。
一説によると百何十年前に淡路の方の殿様の一家が島流しにあって、北海道に来た。そこで色々と開拓して農業を営んでいたら、野生の馬があまりにも農作物を食べるから一部の地域に馬を閉じ込めたことが起源らしい。まあ、これは実際のところ本当かどうかわからないが…。
・冬毛は気にしなくて良い
パドックなどで冬毛を嫌う人がいるけど、寒いから毛だるまになるだけでこれは自然原理。特に牝馬に冬毛がよく生えるのは、母馬になるために体を守っているだけなので、状態の良し悪しとは関係がない。
しかも、ブラシをかけておけば冬毛はある程度なくすことができるもの。
それがよくわかる例がノーザンファームや社台ファームの馬で、一歳馬はしっかりとブラシかけて、時間をかけて手入れをしているので冬毛が一切ない。一方で大手ではない牧場に行くと冬毛の目立つ仔馬が多いケースがある。昼夜放牧で、マイナス20度くらいのところに出しているから当然冬毛は生える。
現役の競走馬で考えれば、しっかりと手入れしていればピカピカに光っているし、例えばあまり勝ち鞍が多くない厩舎に入っていて購買価格の安い馬などは、手入れの質も落ちるケースがあり得るのでパドックでも地味に映ったりする。
だから、毛づやが良く光っている馬を見て、「かっこいいから良いな」という捉え方は決して悪いわけではないと思うよ。
・早生まれはクラシックで有利と言われる理由
早生まれはクラシックで有利と言われているが、これは早くデビューしてクラシックの権利を取る可能性が高いからチャンスが多いというのが理由だ。
早生まれというのは、早めに種付けをして生まれた馬で、早産とは違う。
しっかりと必要な期間お母さんのお腹の中で栄養を蓄えて生まれてきた馬が良いのであって、予定日よりも早く生まれてしまう早産は、栄養が不足しているから競走馬としてダメと言われている。
2013年のダービー馬・マカヒキは1月28日生まれ
ちなみに5月とか6月の遅い生まれの馬は、一度で種が付かなくて再度付けた可能性も考えられる。仮に一度で受胎しなくて種牡馬を変える場合には、前回付けた馬の種が付いていないということを証明する検査をしないとならない。
それほど種付けが多くない馬なら、付かなかった場合もう一回ということもできるけど、人気の種牡馬だと二度目の順番が回ってこないこともある。
2003年の二冠馬・ネオユニヴァースは5月21日生まれ・牡馬クラシックの格言はアテにならない
「皐月賞は最も速い馬が勝つ」と言われているけど、皐月賞に限らず基本的に馬は速くないと勝てないし、足が遅い馬はどれだけ頑張っても速い馬が揃っている中では勝つことができない。
だけど、下級条件だと足が遅い馬同士で走るレースだってたくさんあるから、そこなら勝てる可能性もある。勝ってクラスが上がるとまた勝てなくなるけど、中にはそれでも足の遅い馬たちだけのレースがあって、これが生き残りのステージにもなっている。
「ダービーは運がある馬が勝つ」とも言われるが、俺は馬に運量の差があるとは思えない。皐月賞を速い馬が勝つなら、ダービーだって速い馬が勝つよ。
だけど、運があるオーナーが勝つというのは一理ある気がする。ダービーに限らずGⅠとかで、この勝負服は運がないから勝てないなというのは思う時がある。 「菊花賞は強い馬が勝つ」と言われるよな。ただそれを言ったら、どのレースも強い馬が勝つんだよ。もし、あまり結果を出していなかった人気薄の馬が勝ったのだとしたら、人が勝手に弱いと思い込んでいただけで実は強かったと考えるべきだ。
弥永 明郎(やなが・あきお)
唯一無二の馬券師。デイリースポーツ「馬サブロー」の美浦取材班・看板記者。グリーンチャンネル中央競馬中継のパドック解説でもお馴染み。狙った穴馬は決して逃さない「競馬界のゴルゴ13」。業界歴は長く、騎手、厩舎関係者、馬主など人脈も幅広い。<!-- .c-authorbox__contents -->