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水田航生インタビュー~舞台『ロボット』は「人は何のために生きるのか」を問いかける作品

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水田航生

舞台『ロボット』が、2024年11月16日(土)~ 2024年12月1日(日)、東京・シアタートラムにて上演される(兵庫公演あり)。原作は1920年にチェコの国民的作家・劇作家であるカレル・チャペックによって発表された同名戯曲で、「ロボット」という言葉は、チャペックによるこの戯曲で生まれて世界中に広まったと言われている。潤色・演出はノゾエ征爾。約100年前に書かれた戯曲を、ロボットと人間の共存が始まりつつある2024年に生きる人々に向けて、シニカルかつ不条理なドラマとして転換し、現代の物語として生まれ変わらせる。

ロボット製造会社を舞台に、ロボットの進化により労働から解放された人間に対して、やがてロボットたちが反乱を起こして人類抹殺の計画を始めるという物語において、ロボットの反乱後、ただ一人残される主人公=ロボット研究者アルキストを演じるのは、ストレートプレイとミュージカルを股にかけて活躍する水田航生だ。「日本で一番好きな劇場がシアタートラム」と語る水田は、これまで『マーキュリー・ファー Mercury Fur』(2015年)、『お勢登場』(2017年)、『ブレイキング・ザ・コード』(2023年)などで度々シアタートラムの舞台に立ってきた。水田に、シアタートラムで上演される本作への思いを聞いた。


■笑ってしまっている自分の状態も観察して欲しい

ーー水田さんは本作への出演に際して、「日本で一番好きな劇場がシアタートラム」であると公言されています。その理由の一つとして、演劇空間に没入することができるという点を挙げられましたが、実際に舞台に立った時、同時に難しさを感じる部分もありますか。

客席との距離感も近いですし、舞台上の奥行きが深いので、客席よりも舞台の方が広く感じられます。やりやすさとしては、客席側の世界よりも舞台上の世界の方が広く感じられることで、舞台上の世界に集中できて、僕らがやっていることを少人数の人たちが目撃してくれている、というような感覚になれるところです。でも逆に、客席が近くて壁のように迫ってくるような感覚になることもたまにあって、ちょっとその圧に押されそうになる時もあります。でも没入できる大好きな劇場だな、と思っています。

ーー本作はまず戯曲自体がその世界観に非常に引き付けられるものがありますし、現代社会に通じるところも大いにあって身につまされる内容です。それをシアタートラムという没入できる劇場で見たら、より一層迫ってくるものがありそうで、少し怖いような気もしています。

でも、皆さんが思っているより、笑える作品になっていると思います。僕も「こんなに笑えるんだ」と思ったくらいです。もちろん素晴らしい俳優の皆さんがいらっしゃることも大きいのですが、今の時代より少し先の未来の、今の常識から若干ずれて歪んでいるような世界観の中で生きてる人たちが必死になっている様が、ちょっと滑稽に思えたりするんですよ。当事者からすると笑えない環境や状態かもしれないけれど、傍から見るとちょっと笑えてしまうというか。でも、「今笑っているけど、これ笑っていていいのかな?」みたいなことってありませんか? 笑ってしまっている自分が怖くなるというか。そういうときの自分の状態も観察してみて欲しいですね。


■ノゾエさんと話しているとポジティブな気持ちになれる

──ノゾエさんとは今回初めてご一緒されますが、作品のことや役のことなど、どんなお話しをされていますか。

役のことで言うと、原作戯曲や上演台本を読んだ段階だと、アルキストは悟って解脱しているような、どこか神格化されたようなイメージがあったのですが、ノゾエさんと話していく中で、アルキストは原作では年配者がやる役だけど、人情味や人間味を持った人物でもあるので、若者がやるほうが実は意味が付くんじゃないかという話になりました。ノゾエさんが「今の若者は意外と現実的で物事を客観視していて、若者の意見に気づかされることが結構あるから、この役は水田くんの年齢のままでいい」と言ってくださいました。ノゾエさんが言ってくださる言葉はすごくヒントになっています。

──ノゾエさんからは演出的な指示やアドバイスが色々あるのでしょうか。

ご本人も「僕、口数少ないんですよ」とおっしゃっていた通り、口数こそ決して多くはないのですが、その裏には演出家と役者というのは上下関係ではなくて、お互いが出してくるものを尊重し合って物を作っていくというスタイルなんだ、ということが伝わってきます。だから「言われたことをやるだけじゃないんだよ」というメッセージでもあるのかな、と感じながら、ノゾエさんの言葉の裏にある意図を自分で考えて作っていくという、創作意欲が湧いてくる現場なんです。

──ノゾエさんが、本作の潤色について以前「人間の愚かさを描きたいわけではない」とおっしゃっていたのがとても印象的でした。

終わり方も原作とは変えていて、それが飛躍ではなくて、より現実的な感覚に引き戻してくれるようなセリフになってるので、そこは本当にノゾエさんのすごいところだと思います。ノゾエさんとお話しした際も、「逆に原作通りのセリフだと、どうやって言っていいかわからなくない?」とおっしゃっていて、確かにその通りだなと思いました。より現代人の感覚に近づけたものになっているから、アンチテーゼだけではない問いかけもいっぱい詰まっていると思います。

──人間社会を糾弾するようなメッセージ性もありつつ、潤色された台本からは人間に対する愛も同時に感じました

確かにそうですね。最後のシーンはまだ稽古で数回読んだだけですが、なんだかすごく包み込まれるような温かいものを感じられるんですよね。その感性はとてもノゾエさんらしいなと思います。ノゾエさんとお話ししているとポジティブな気持ちになれるので、そういったお人柄もすごく反映されている台本なんだろうなと感じます。



■役者としても「サステナビリティ」なやり方で積み重ねていく

──本作を読まれて「人は何のために生きてるんだろう」という気持ちを抱いた、と伺いました。

それはコロナ禍の時にも思ったことなのですが、「生きる」ということについて明確な意味はないじゃないですか。「何のために生きるんだろう」と考えた時に、人は多分、自分が幸せになるために生きているし、心地よい環境にどれだけ長い時間自分を置いておけるか、ということを考えて生きているんだと思うんですよ。そう思うと、この作品において、生きている人たちが進歩することに取り憑かれて、「進歩のために生きている」みたいなことになってしまっていることがすごく怖いなと思ったんです。「不毛こそが人間が行き着いた究極の成果だ」というアルキストのセリフが一番好きなのですが、結局のところ何か明確な目的を持って生きている人間なんて誰もいなくて、不毛なことをずっと続けながら死んでいくのかな、というような不安だったり不思議な気持ちになったんですよね。でも生きる目的が特になくても生きていたいと思うのは何でなんだろう、みたいな感じで頭の中で堂々巡りをずっと繰り返していました。

──水田さんはストレートプレイにもミュージカルにも幅広くご出演されていますが、ご自身の中で俳優として今後どのようになっていきたい、という目標は何かお持ちですか。

最近「サステナビリティ」という言葉を学びました。僕の場合は不器用だから、この作品を経て次はこういう作品で……とか先のことを一切考えずに、目の前のことに集中するしかできないんです。今は目の前のことに100パーセントを費やして、それが終わったときに次を考えるというような、目の前のことがちょっとずつ積み重なって、それが世界に繋がっていくという、いわばサステナブルなやり方しか、僕は人生を歩んでいく方法を知らないのかもしれません。それは昔から変わらず、ずっとそうだったんですね。その積み重ねで今があるし、今の積み重ねが未来になるし……みたいな感覚でしか物事を捉えられなくて。それがいいのか悪いのか、わかりませんが(笑)。

──今回この作品に出会えたことで、水田さんの今後にどのように繋がっていくと思いますか。

役者としても人間としても、考え方の幅は現時点で絶対に広がっていっているな、という感覚はあります。先輩方を見ていても「天井はない」ということを改めて実感する稽古場であり、そんな作品ですし、自分の足りなさもしっかりと客観的に捉えることができているので、そういった意味では本当に月並みな言葉ですが、成長に繋がってるというか、知らないことを知ることができる大切な時間だと思っています。その大切さを日々秒レベルで感じることのできる機会になっているんじゃないでしょうか。

取材・文=久田絢子
撮影=中田智章
ヘアメイク=菅井彩佳
スタイリスト=山本隆司(style³)

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