日本気象協会が「暑熱順化予報」を公開 デスクワーカーも暑さ到来前に熱中症リスクへの備えを
一般財団法人日本気象協会(東京都豊島区)が推進する「熱中症ゼロへ」プロジェクトは4月10日、本格的な暑さの前に身体を慣れさせる「暑熱順化」が必要な時期の目安を発表した。
熱中症の予防・対策が必要な時期は年々早まってきており、多くの人が暑熱順化をできていない4月の急な暑さによる「春の熱中症」への注意を呼び掛けている。気象庁発表の4月から6月までの平均気温は、全国的に平年並みか高い見込み。
意識して汗をかく「暑熱順化」の実施時期は、5月上旬から各地
暑熱順化に有効な対策は、軽い運動や湯船につかる入浴などで意識して汗をかき、身体を暑さに慣れさせることだ。暑熱順化は個人差はあるが、数日から2週間程度かかり、仮にできていないと、身体の熱をうまく外に逃がすことができず、熱中症になる危険性が高まる。
同プロジェクトでは、暑熱順化を始めるタイミングの目安を「熱中症ゼロヘ 暑熱順化前線」として公開しており、今回の第1回発表では、福岡や高知で5月上旬、東京では5月下旬としている。
室内での熱中症発生にも注意、適切な休憩や水分補給を
暑熱順化の大切さを伝えるため、同プロジェクトでは2021年から「暑熱順化」のコンテンツを公開。ポイントマニュアルとしてまとめている。帰宅時に1駅分歩くといったウォーキングなどは、暑熱順化を日常生活に取り入れる方法の1つだ。「暑熱順化チェックリスト」では、シャワーだけでなく湯船に入る「入浴」や、汗をかく「運動」や「行動」などの回数が項目として挙げられている。
室内での熱中症にも注意が必要だ。総務省消防庁によると、2024年の熱中症による発生場所別の救急搬送人員について、38%が住居で、10.1%が仕事場(工場、作業場、道路工事現場)。室温や湿度の上昇などの環境要因のほか、屋外活動後に適切に身体を冷やすことができないことで熱中症になる場合もある。
在宅ワーク時でも、パソコンなどの電子機器使用時には室温を確認し、適切に冷房機器を使用することや、休憩や水分補給を組み込むことを呼び掛けている。
2025年は猛暑の予想、「熱中症は予防できる気象災害」備えが大切
2024年は、1898年の統計開始以降、最も暑かった夏で、2024年6月から8月の平均気温は歴代1位の高温(タイ記録)だった。猛暑日の連続日数も過去最多となった地点が多く、福岡県太宰府市では年間の国内歴代最長(40日)を記録した。また、5月から9月の全国の熱中症による救急搬送者数は9万7578人(前年比6111人増)。2008年の調査開始以降で最も多かった。
26年ぶりに3月に真夏日を観測した2025年は、同協会所属の気象予報士によると、気温は全国的に平年より高く、猛暑になる見込み。「高気圧の張り出しが予想より強まった場合は、一昨年や昨年に匹敵する記録的な猛暑になる可能性」があるため、本格的な暑さが始まる前の、早めの熱中症対策を勧めている。
同プロジェクトは、気候変動による影響で今後も暑さが激甚化する恐れがある、として、「熱中症は予防できる気象災害であることを意識し、備えることが大切」だと警鐘を鳴らす。
「熱中症ゼロヘ 暑熱順化前線」第2回は、盛夏の暑さを迎える前の6月上旬頃を目処に発表予定。環境省の熱中症アラートは、4月23日から運用を開始。熱中症警戒アラートや暑さ指数(WBGT)をメールやLINEで配信する同省のサービスについては当メディアで詳しく紹介している。
「暑熱順化前線」の詳細や「暑熱順化チェックリスト」については、熱中症ゼロへの公式サイトにて確認できる。