青山学院大が箱根駅伝連覇を果たした要因は?「駅伝男」の存在と「天下の険」完全制覇
駅伝男の活躍でレッドゾーンから復活
第101回箱根駅伝は、前回王者の青学大が10時間41分19秒の大会新記録で2年連続8度目の総合優勝を果たした。原晋監督が言う駅伝にめっぽう強い「駅伝男」の存在と、「天下の険」と呼ばれる箱根の山を制した力が連覇をもたらした。
5区の途中から首位を譲らず、2位の駒大とは2分48秒差。記録的には圧勝だが、序盤は楽な展開だったというわけではない。1区は10位と出遅れた。そして、3区を終えてトップの中大には2分24秒差をつけられ、原監督が「レッドゾーンに入りかけた」と振り返るほどだった。ただ、苦しくなる度に「駅伝男」が青学大の息を吹き返せらせた。
1区の嫌な雰囲気を振り払ったのは2区の黒田朝日だった。前回2区区間賞の黒田が今回は区間新(区間3位)マークし、一気に3位に浮上した。同区間では駒大の篠原倖太朗、国学院大の平林清澄とライバル校のエースが集ったが、3人の中で力を出し切れたのは黒田だけ。トラックのスピードも十分だが、大一番での黒田の「駅伝力」はライバルを圧倒した。
それでも3区で流れに乗り切れず、中大の独走態勢の予感が漂う中、逆転への流れをつくったのは、駅伝では「外す」ことがない4区の太田蒼生だった。青学大は歴代、トラックレースでのスピードはそこまで速くなくても、ロードで強い選手を育成するのがうまい。太田がまさにそうだ。箱根には1年生から出場し、区間賞1回、区間2位2回。確実に結果を出してきた。
そして今回も太田は外さなかった。1時間0分24秒という4区の日本選手最高記録で区間賞を獲得し、2位へ浮上。トップ中大との差を45秒にまで縮めた。
難関の山でW区間新
平地で中大の背中をとらえた後、勝負を決めたのは「山」だった。
箱根駅伝の難しさを語る上で外せないのが、標高800メートルを超える「山」だ。これまで多くの大学がこの山にはじき返されてきた。特に近年では山を制する大学が箱根駅伝を制することが多かった。今年の青学大がまさにそうだった。
5区の山上りで若林宏樹が区間新の快走でトップに立つと、6区の山下りでも野村昭夢が区間新をマークして、独走態勢を築いた。青学大が初優勝した91回大会以降のデータを見ても、5、6区両方で区間賞を獲得し、優勝した大学はない。今回の青学大は山を完全制覇した。それも、両区間とも区間新だ。これでは他大学は太刀打ちできない。
6区を終えて2位中大とは3分49秒差。7区で2位に浮上した駒大に1分40秒差まで縮められたが、慌てる必要はなかった。実質、6区を終えてほぼ勝負は決着していた。
際立つ原晋監督の育成力
「駅伝男」と「山の完全制覇」。この二つが今回の青学大優勝のキーワードだが、それをもたらしたのは原監督の育成力だろう。
トラックのスピードでは上位にこない選手でも、駅伝で力を出し切る選手を毎年のように育てている。山に関しては言えば、原監督は「ポテンシャルよりも適性が発揮される」と語っており、平地では現れにくい適性を見抜いて育成している。
この原監督の「メソッド」を崩す大学が現れない限り、青学大が常勝軍団であり続けるだろう。
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記事:鰐淵恭市