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濱田龍臣、舞台『有頂天家族』で明かす意外なスタンス「これ、どうなるんだろう? と想像するのがすごく楽しい作品」

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濱田龍臣

人気作家・森見登美彦の代表作の一つ『有頂天家族』。京都・糺の森に棲み、人間世界に溶け込んで暮らす狸の家族が、天狗や人間たちも巻き込んで、京都中で大騒動を巻き起こすという、ファンタジー風味の家族ドラマだ。アニメ版も評判となった本作が11月3日(日・祝)の新橋演舞場公演を皮切りに南座と御園座の3座にて、G2の脚本・演出で待望の舞台化! しかも主人公となる狸一家の三男・下鴨矢三郎は、歌舞伎俳優の中村鷹之資と、朝ドラから特撮まで活躍する濱田龍臣のWキャストだ。「年が近い人とのWキャストは初めて」と語る濱田が、この作品にかける気持ちや、原作ものに出る時の意外なスタンスなどを、ほがらかに語ってくれた。後半には中村鷹之資とリモートで繋ぎ、互いの印象を聞いた。

濱田龍臣

考え過ぎてしまわないよう、何も見ないで作品に入っていく

――原作の小説は、実際の京都の名所やお店でストーリーが展開していくのが魅力の一つですが、今日は京都に行っていたとうかがいました。

(京都公演会場の)南座で取材を受けてから、先斗町や(糺の森がある)下鴨神社に行ってきました。糺の森って、思ったよりも森でしたね(笑)。小説やドラマに出てくる地名や場所は、「都内某所」みたいな感じで、なあなあにされがちじゃないですか? でも本作はリアルにある場所を舞台にしているので、想像力をさらに掻き立てられる所がある。だから実際の場所に行って「ああ、ここで!」と感じられたのは、すごくいい体験になったと思います。

――お話が来る前に、原作の小説やアニメ作品は観ていたのですか?

それはなかったし、お話をいただいてからも特段読んだりはしていません。自分はもともと、原作を見ないで(原作ものの)作品に入っていくタイプなんで。脚本に書かれてあることと、「もともとはこういうキャラクターです」という説明から、役作りというか、キャラクター性を見出していきます。

――演じる前に原作をチェックしないのは珍しいですが、何か理由があるのでしょうか。

それが先入観になっちゃうというか、固定概念にハマるのをなくしたいというのがあって。映画にせよ小説にせよ、舞台上ですべてのシーンを100%できることなんて、ないじゃないですか? そうなった時に変わってしまった部分について、僕はいろいろ考えすぎてしまうんです。「ここがカットされたから、このキャラクターがこう動いた時の、その心情をどうしよう?」とか。

――逆に原作が足かせのようになるケースがある、と。

僕は結構ありますね。それよりは、現場の雰囲気とか、他のキャストさんたちが作られたキャラクター性とすり合わせながら、作り上げていこうと思ってます。

――ではそういう、虚心坦懐で脚本を読んだ時の感想はいかがでしたか?

「どうなるんだろう?」というのが、率直な気持ちでした。京都の地名や場所はもちろん、登場人物の関係性や人間的な部分はすごくリアルだけど、狸と天狗と人間が三つ巴になるという、すごくファンタジーな部分も多い。これを舞台に? 人間がやる? どんな舞台装置を使って、どういうふうに転換して、どんな所で早替えをするんだろう? そういうことまで想像するのが楽しかったけど、一方で「試されてるなあ」と感じるような脚本でもあると、ちょっと思いました。

「完ぺきじゃないからこそ、支え合える」ということが伝われば

濱田龍臣

――濱田さんが演じる矢三郎は、どんなキャラクターだと思いましたか?

結構受け身な性格ですね。主人公ではあるけれど、自分からエネルギッシュに何かを動かそうとするよりは、意外と長いものに巻かれる、流されていくタイプなのかな? と。だからこそ、周りに流されすぎてキャラクター性が沈まないようにするのが、すごく大切になっていくだろうなあと考えています。でもストレスになりそうな出来事すら「あ、こんなこともあるんだ。あははー」と面白がれるのは、すごく素敵ですね。ちょっと見習いたいと思う所ではあります。

――人間に化けている時の基本フォルムは「腐れ大学生」と書かれていますが、どんな大学生をイメージしますか?

なすがまま、言われるがまま、取り敢えず大学に行ってみたけど、大学って何だ? という状態になっている腐れ方なのかな。それも多分、矢三郎らしさ……自分から行動するのではなく、流されているという部分につながっていくんじゃないかと思っています。

――矢三郎に絡んでくるキャラクターとしては、天狗の赤玉先生(相島一之)と、人間だけど妖力を持つ弁天様(若月佑美)も注目ですね。

赤玉先生と矢三郎の関係って、すごく素敵なんですよ。お互いが本当に信頼し合ってるからこそののしり合えるし、その中に「ほら、お前を気にかけてやってんだぞ」みたいな感じも垣間見える。相島(一之)さんは舞台『大地』で共演した時に優しくしてくださったので、4年ぶりにご一緒できるのが楽しみです。ののしり合いますけど(笑)。弁天様とは、赤玉先生も含めた恋愛的な部分があるんですけど、そこをあまりやり過ぎると、途端に冷めてしまいかねない。若月(佑美)さんとG2さんと一緒に、そのラインを見極めながら積み上げていけたらいいなあと思います。

――この3人の関係を結ぶのに「赤玉ポートワイン」というお酒が欠かせないものとなってますが、今回は南座で販売されるそうです。

らしいですね。そういう遊び心で、お客様がさらに世界観に入り込んでいけるようなことをしてくださるというのは、やっぱり制作側の皆様のご尽力のおかげ。自分たち役者陣も、作品自体を盛り上げて行けるように頑張らないといけないな、と思います。でも相島さんはプレッシャーを感じていらっしゃるかもしれない(笑)。(宣伝)写真でも、赤玉ポートワインを持ってますからね。

濱田龍臣

――売上は赤玉先生次第ということで(笑)。他にも絡みを注目してほしいキャラクターはいますか?

やっぱりタイトルにある通り、家族。僕ら下鴨一家は、すごく物語の軸になっていると思います。怒りっぽい長男、カエルになった次男、頼りない末っ子、そして雷に弱いお母さん……矢三郎も含めて、全員「いや、もうちょっとしっかりしろよ!」って思っちゃうようなキャラクターですよね。

――みんな何かが、ちょっとずつ欠けてますからねえ。

そんなふうに、誰しも完ぺきじゃないという所が、すごく人間らしい狸たちです(笑)。この一家が、他の狸や天狗や人間が入り乱れた世界の中で、どうやって生き残っていくんだろう? そのために、どういう風に協力し合っていくんだろう? というのが、見どころの一つになっていくと思います。みんなが完ぺきじゃないからこそ支え合っていけるというのは、すごく現実世界にも通じること。そういうメッセージ性というか、家族の絆みたいな部分が、少しでも伝わればいいかなあと思います。

――そんな「家族っていいなあ」という姿を見せる時に、キャラクターが人間ではなく「人間に化けた狸」というワンクッションあることが、この物語のユニークな点ですね。

絶妙ですよね。狸って、昔話でもいろいろモチーフになっていますし。そういうファンタジーな要素があるからこそ見やすい作品だと思いますし、それをどこまで舞台で面白おかしくできるのかな? というのが、自分たちの課題だと思っています。

Wキャストの中村鷹之資から「歌舞伎ならではの見せ方を盗みたい」

中村鷹之資とリモートで繋ぎ対談

――そして矢三郎役は、歌舞伎俳優の中村鷹之資さんとのWキャストです。

最初は歌舞伎の方と聞いて、ちょっと背筋が伸びる思いでした。でもプライベートで親しくしている片岡千之助さんから「今度(鷹之資と)一緒なんだってね。唯一の同期で、すごくいい人だよ」と助言を受けて、ワクワクしながらお会いしたら、本当に柔和で素敵な方で。稽古はこれからですが、このままここから同じ役を作っていくのが、すごく楽しみです。

――鷹之資さんのここを盗みたいとか、逆に自分のここをアピールしたいということはありますか?

やっぱり歌舞伎ならではの見せ方ですね。今回は、ちょっと前の時代の部分も作中に入ってくるので、そこは少しでも盗んでいきたい。果たしてどこまで盗めるのやら? と思いますけど(笑)。アピールできるのは……何て言うんでしょう? 映像っぽさみたいな所。舞台ではあるけど、それが観る人を引き込む力になっていくと信じています。あと矢三郎は語り部みたいな役割もあるんですが、そういうストーリーテラーっぽいことは何回か経験があるので、その部分での第四の壁の超え方みたいなのは、できるかなあと思っています。

――最後に、矢三郎は化ける能力が飛び抜けて高いという設定ですが、濱田さんにその力があったら、何に化けたいと思いますか?

飛行機になりたいですね。このお仕事は移動が多いので、やっぱり楽に移動したい(笑)。飛行機になれたら自分の好きな時間に移動できて、荷物も積めるので、泊まりのロケも何も怖くないです。

濱田龍臣

取材・文=吉永美和子 撮影=河上良

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