知って食べて遊んで大満足!釜石まんぷくフェス 市内外の味を一堂に 地元特産物はお振る舞いで
釜石市の秋恒例の味覚イベント「釜石まんぷくフェス」が9月22、23の両日、釜石鵜住居復興スタジアムで開かれた。コロナ禍による中止後、名称を変更。同スタジアムで開かれるラグビー交流試合「釜石絆の日」イベントと日程を合わせて開催されるようになって3年目となる今年は市内外から約70の出店があり、多くの来場者でにぎわった。地元農水産物のお振る舞い、林業機械の操作体験なども人気を集めた。2日間の来場者数は約2500人(主催者発表)。
同イベントは釜石観光物産協会が主催。スタジアムのグラウンド外周を会場に、キッチンカーやテントで各店が自慢の味を販売。同市の姉妹都市や友好都市も特産品を持ち寄り出店した。焼き物、揚げ物、煮込み料理、デザート類などメニューは多種多様。来場者は会場を回って好みのものを買い求め、その場で味わったり、土産用に持ち帰った。
釜石湾で養殖される「釜石はまゆりサクラマス」は、同フェスに初めてお目見え。市内の水産加工業者が味付けした幽庵焼きで、1日300食限定で振る舞われた。同魚は
2020年から試験養殖が始まり22年に事業化。サクラマス養殖では生産量日本一を誇り、不漁の秋サケに代わる新たなブランド魚として同市がPRしている。
遠野市の新田佳祐さん(27)は初めて食べる同サクラマスに「すごく脂が乗っていておいしい魚。甘さが感じられる味付けもいい」と舌鼓。「こういう新しい魚で地域が活性化すればうれしいこと。もっと皆さんに食べてもらえるといいのでは」と話した。同フェスへの来場は2回目。家族4人で楽しみ、お持ち帰り用に海産物や県外の特産品なども購入。「毎年続けてほしい」と来年以降にも期待した。
地元農産物をPRしようと今回初めて振る舞われたのは、釜石産野菜のスープ。タマネギ、ピーマン、ジャガイモ、ニンニクのほか、同市が新たな特産品として生産拡大を進めるクッキングトマト「すずこま」を材料にした。同市に養鶏場を持つオヤマ(本社・一関市)の鶏肉「いわいどり」も使用。トマトベースの味付けでミネストローネ風に仕上げた。300食限定に長い列ができ、1時間ほどで大鍋が空になった。
市内の農産物生産者らが出店する「かまいし軽トラ市」も同時開催。季節の野菜や加工品を販売した。栗林町の小笠原房子さん(74)はリンゴや同ジュース、カボチャ、ピーマン、ミョウガなどを販売。来店者と食べ方の情報交換もし、「お客さんと会話しながら販売できるのがいい」とコミュニケーションを楽しんだ。リンゴ栽培は3代にわたり、「先祖が残してくれた農地をできるだけ生かし、栽培を続けたい」と話した。
地元高校生発案の新商品も販売された。釜石商工高総合情報科の3年生8人が、ジェラート(氷菓)販売を手掛けるかまいしDMCとコラボし完成させた「Kamanasu berry(カマナス ベリー)」。ヨーグルトベースのアイスの上に、同市根浜海岸に自生する海浜植物“ハマナス”の実を使ったソースをかけたオリジナルジェラートだ。同社の「さんりくジェラート」キッチンカーで200個を限定販売した。
生徒らは課題研究の授業の一環で商品開発に取り組んだ。「ラグビーのまち釜石」を盛り上げる一助にと、地元チームの日本製鉄釜石シーウェイブス(SW)をイメージした商品を考えた。ハマナスの実にラズベリーを加えた赤いソースでチームジャージーの色を表現。マスコットキャラクター“フライキー”に似せたホワイトチョコをトッピングした。開発メンバーの一人、山地結逢さんは「ハマナスの酸味とラズベリーの甘みが絶妙にマッチし、ベースのアイスとの相性も抜群。自信作です」と太鼓判。今回のジェラートメニューの中で一番の売れ行きを見せた。10月26、27の両日開催される「商工祭」では同商品のアレンジ版を販売予定だという。
イベント初出店で市民との“再会”を喜んだのは、9月上旬に「US COFFEE(アス コーヒー」という念願のコーヒー店を住田町にオープンした釜石市出身の植田真治さん(38)。震災後にUターンし同市職員として働いていたが、夢の実現へ一念発起。約13年の市役所勤務にピリオドを打ち、起業を決めた。Uターン後、家族と暮らしてきた住田町に「人の集まれる場所を作りたい」と、町の商店街に店を開いた。これまで世話になった釜石への感謝の気持ちも込めた同フェスへの出店。「市役所ではスポーツ関連の業務に従事し、このスタジアムも担当していたので感慨深い。今までと違う立場からこの場所を見られるのも楽しい」とほほ笑んだ。
会場では地元林業と触れ合える企画も。昨年までの親子木工教室に加え、今年は林業機械の操作体験が人気を集めた。現場で作業効率向上に貢献している機械で、1台で「切る。つかむ。掘る。」の三役をこなす車両も。作業員と一緒に運転席に座り、高性能機械を操作した子どもたちは大興奮だった。釜石地方森林組合の高橋幸男参事は「林業の裾野を広げるいい機会。多くの子どもたちに触れてもらい、将来の担い手育成にもつながっていけば」と期待。同組合では震災後の2013年から小中高生を対象とした林業体験も実施していて、同体験が組合への就職に結びついたケースもあるという。