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Shiggy Jr. 「みんなに会えるこの景色をずっと夢に見ていました」明るくて温かい空気に包まれた再集結ライブを振り返る

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Shiggy Jr.

Shiggy Jr. 11th Anniversary ONE MAN LIVE “LIFE GOES ON”
2024.06.02 渋谷WWW X

普段の関係者エリアが半分になって、PA卓の後ろまでファンで埋まっていてびっくり。こんなに人が入ったWWW Xはあんまり記憶にない。それも当然、今日は4年9ヵ月ぶりにShiggy Jr.が“再集結”する記念日だ。チケットは抽選で、入れなかった人も多数いると聞く。解散ライブから今日まで、人の数だけ思いがある、それは長い空白を埋めるための特別な日。

ジャクソン5「帰ってほしいの」のリズムに乗って一人ずつ登場する瞬間から、メンバーも観客も満面の笑みがはじけている。カジュアルなストリート系ファッションで決めた、池田智子(Vo)が「Shiggy Jr.です!」と高らかに叫ぶ。オープニングはバンドの初期曲「Saturday night to Sunday morning」だ。池田が《Saturday night!》と歌うと、全員が《Sunday morning!》と歌い返す。およそ5年間の空白が一瞬で埋まる。続く「LIFE GOES ON」は4月に出たばかりの新曲なのに、すでにライブの定番曲のような顔をしている。クラップと手振りでフロアが一つに繋がる。再結成にありがちな緊張感や過度の感傷もなく、いきなり楽しい。そうだ、Shiggy Jr.はそういうバンドだった。

池田智子(Vo)

「今日はとっておきのセットリストを組んできました。みんなと楽しい最高の時間を過ごしていきたいと思います」(池田)

池田の「解散してから知った人?」という問いかけに、けっこうな数の手が上がった。バンドがなくなっても良い音楽は残る、今日はそれを証明する日でもある。ギター・原田茂幸は解散ライブ以来初めてステージに立つと言いながら、「あんまり緊張してない」とニコニコしてる。ドラムの諸石和馬とベースの森夏彦は、自身のバンドやサポートにいそしんだ日々を経て、安定感と信頼感がぐっと上がったようだ。そしてボーカル・池田の歌声は、およそ5年間の時を超えて澄み切った透明度はあの頃のまま。序盤の動きはやや硬いかな?と思ったものの、中盤からは観客の顔を見つめたり、指さして煽ったり、くるくる回りながら踊ってみせたり。だんだん調子が出てきたみたいだ。

原田茂幸(Gt)

「まだ言ってなかったけど、ただいまです。5年あったらいろいろあるけど、今日は普段のもやもやをそのへんに捨てて、純度100%で楽しんでいきましょう」(諸石)
「知ってる顔も、知らない顔もありますね。でも解散してから聴いてくれた人もいるということで、やってて良かったと思います」(森)
「お久しぶりです。今日はまたこうして会えて良かったなと思います。みんな本当にありがとう」(原田)
「みんなに会えるのを楽しみにしていました。4月に新しいEPが出て、みんな聴いてくれた?」(池田)

森夏彦(Ba)

その、新しいEP『LIFE GOES ON』からの新曲「ウラオモテ」は、原田の弾くアコースティックギターがループの役割を果たす、ファンクでクールなダンスチューン。池田のボーカルにも、たぶん5年前にはなかった大人の女性のかっこよさが漂う。変わらないけどやっぱり変わってる、ライブとはたぶん、ステージに立つ者の心も生き方も見透かしてしまう場所。原田がリードボーカルを取る「you are my girl」も、森のファンキーなベースが最高にかっこいい「Do you remember」も、口あたりがいいだけじゃない深みとコクのある、今のグルーヴがいい感じだ。

諸石和馬(Dr)

メンバーの5年間を振り返る長いMCは、まさに喜怒哀楽が交錯する人生劇場。池田は会社勤めを経験し、森は家族が増え、原田は曲を作り続けた。しかし「いろいろあったけど、今が人生で一番楽しい!」と言う諸石と、「みんなに会えるこの景色をずっと夢に見ていました」という池田の言葉が、結論に最もふさわしいかもしれない。2024年6月2日、Shiggy Jr.はここにいる。

以前の活動時からサポートしていた花井諒(Key&Gt)の、「家に帰って来たような感じ」という温かい言葉と、美しいピアノに彩られた「約束」でしっとりと和んだあとは、ぐっとスピードを上げてライブは後半へ。「TUNE IN!!」「恋したらベイベー」「LISTEN TO THE MUSIC」のハッピーダンスチューン3連発は、メドレー状態で一気に駆け抜ける。森の弾くシンセベースがかっこいい、パーティー仕様のEDM「LISTEN TO THE MUSIC」は、あの頃よりもむしろ今の時代のほうがウケるんじゃないか。「ピュアなソルジャー」のサビ、心の底から楽しそうに手を振るフロアを見て、池田が思わず声を詰まらせたように見えたが、人波にまぎれてよくわからない。そしてみんな大好き「サマータイムラブ」。全力で歌う全員の顔を確かめながら、ステージを隅から隅まで歩きながら歌う池田の笑顔。

「みんなの顔がすっごい見えてる。本当にいい顔を見せてくれて、私も幸せです」(池田)

本編ラストは、最新EPからの「今が幸せであれ」。今まで歌い続けてきた、そして2024年の今も歌っている、Shiggy Jr.のテーマを凝縮したような1曲。「(MCで)池田の気持ちをしゃべっていいよと言われたけど、音楽で伝えるのが一番いいと思うので、すぐ曲にいきます」という曲紹介と、愛と幸せの形を飾らない言葉で描く歌詞がまっすぐに届く。この曲のみ動画撮影OKということで、ネットを探せば映像がいくつも見つかるはずだ。そこにあるそれぞれの幸せの形をぜひ確かめてほしい。

アンコールではグッドニュースがあった。10月7日、恵比寿リキッドルームにて、本日の追加公演決定。ゆっくりと、しかし着実に進む一歩が嬉しい。そして名残りを惜しみながら、最後の1曲に選んだのは「keep on rainning」。「みんなの声も聴かせて!」と、観客の歌声をフィーチャーして、いつまでも続くリフレインが美しい。くしくも今日、外は雨。再集結記念日にふさわしい、記憶に刻まれるラストシーン。

ほんのちょっぴり、エモいシーンは途中にあったかな?という気はしたが、記念撮影を終えて大きく手を振りステージを去る瞬間まで、明るくて温かい空気に包まれた、およそ2時間の再集結ライブ。再会の日も10月7日に決まった。今後の活動について詳しいことは明かされなかったが、おそらく焦らず急がずマイペースで、Shiggy Jr.らしい姿を見せてくれることを期待しよう。Keep on singing、いつまででも。音楽は鳴りやまない。

取材・文=宮本英夫 撮影=Tatsuya Kawasaki

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