「美しく、官能的で、そして強烈」「すべての瞬間が忘れ難い」思春期から大人へ、繊細な感情が交差する『美しい夏』
20世紀のイタリア文学の巨匠チェーザレ・パヴェーゼ原作、「第77回ロカルノ国際映画祭」ピアッツァ・グランデ部門出品作『美しい夏』が、8月1日(金)より公開される。このたび、主演のイーレ・ヴィアネッロとディーヴァ・カッセル、それぞれの印象的なシーンを切り取ったキャラクタービジュアル2種が解禁となった。さらに、山内マリコ、山崎まどかなど各界の著名人より絶賛コメントが到着した。
ストレーガ賞受賞作・パヴェーゼの名作、待望の映画化
ストレーガ賞を受賞した、イタリア文学界の巨匠チェーザレ・パヴェーゼの同名小説が、現代的な感性で映画化。アリーチェ・ロルヴァケル作品の常連イーレ・ヴィアネッロと、モニカ・ベルッチとヴァンサン・カッセルを両親に持つ新星ディーヴァ・カッセルが共演。「第77回ロカルノ国際映画祭」や「イタリア映画祭2024」でも上映され観客を魅了した。戦争の影が静かに迫る中、少女が少しずつ大人になる姿を繊細に描く。文学、アート、ファッションが交差する不朽の名作がスクリーンに蘇る。
本作の舞台は1938年、戦争の影が忍び寄るイタリア・トリノ。16歳の少女ジーニアが、友情や恋、憧れと焦燥のなかで初めて味わう心の揺れを繊細に描いた青春ドラマ。キャラクタービジュアルでは、対照的なふたりのヒロインの内面や生き方が浮かび上がる仕上がりとなっている。
ひとつ目のビジュアルは、洋裁店で働く16歳の少女ジーニアにフィーチャーしたもの。自分の人生に何か楽しいことが起こらないかと甘い期待を抱きながら、電車の窓越しに街を見つめる表情や、制服に身を包み、お針子として任された仕事に真摯に向き合う健気な姿を切りとられている。「君もモデル?」「いいえ、洋服を作っているの」という台詞は、自らの手で道を切り拓こうとする彼女の誇りと芯の強さを物語っている。
そんなジーニアを演じるのは、イーレ・ヴィアネッロ。ブラジル生まれ、イタリア・トスカーナ地方のアペニン山脈にあるエコビレッジで育ち、自然に囲まれた自給自足の暮らしのなかで感性を磨いた。幼少期にアリーチェ・ロルヴァケル監督と出会い、2011年には監督の長編デビュー作『天空のからだ』で主演に抜擢。「第64回カンヌ国際映画祭」監督週間で上映され、演技未経験ながら鮮烈なデビューを飾った。その後も話題作に出演し続けている。
もうひとつビジュアルは、もう一人のヒロインのアメーリアにフィーチャーしたもの。ジーニアより3歳年上のアメーリアは、画家たちの絵のモデルとして生計を立てながら、アーティストたちの世界に出入りする自由奔放な女性だ。「絵のモデルよ。座ったり横たわったりして、ポーズをとるの」という台詞とともに切り取られたビジュアルには、彼女の自立した佇まいと、生き方への誇りが映し出されている。
アメーリアを演じたのは、ディーヴァ・カッセル。モニカ・ベルッチとヴァンサン・カッセルを両親に持ち、パリで育った。14歳でドルチェ&ガッバーナのキャンペーンモデルに起用され、その後もディオールのアンバサダー、「Vogue Italia」60周年号の表紙など、世界的トップブランドの顔として活躍。幼少期から演技レッスンを重ね、本作で待望のスクリーンデビューを果たした。Netflixリミテッドシリーズ『山猫』ではクラウディア・カルディナーレが演じた名役を再演し、『オペラ座の怪人』のリメイク出演も発表されるなど、注目を集めている。
静かなトリノの街を舞台に、それぞれの人生を模索する二人。対照的でありながらも、どこか重なり合うその姿を切り取ったキャラクタービジュアルは、本作の世界観をより一層豊かに想像させてくれる。
<コメント>
緒形龍(俳優・モデル)
儚さと美しさが繊細に織り込まれた美しい一作でした。Yile Yara Vianelloの目に宿る切なさと好奇心、そしてDeva Casselの圧倒的な美しさと凛とした気高さ。この二人が醸し出すケミストリーに、心が静かに満たされました。
児玉美月(映画批評家)
「軽薄な男たちといるより、女同士の方がいい」と語り合う女たち。本当は誰といたいのか、本当は誰に惹かれるのか——彼女たちは心の奥ではきっと知っている。『美しい夏』は、華やかな刹那と黄昏の憂鬱で彩られていたあの季節の記憶を、ここに呼び起こしてゆく。
関口英子(イタリア文学翻訳家)
自立した女性アメーリアに惹かれ、背伸びして大人の世界に飛び込んだジーニア。憧憬や羨望、憂いや戸惑い、恥じらいや不安といった揺れ動くやわらかな感情を映し出す彼女の澄んだ瞳とまっすぐな眼差しに、パヴェ―ゼが繊細な文章で紡いだ、二度と戻ることのない美しい夏の青春と傷痕がすべて凝縮されている。
佐々木敦(批評家)
パヴェーゼの名作小説の切なくも鮮やかなアダプテーション。誰もが自分の「美しい夏」を持っている。この夏、多くの観客に「あの夏」と出会って欲しい。
マッシ(ライター・エッセイスト)
美しく、官能的で、そして強烈。人間の心の最も深い部分も表現していて、最後まで視聴者の心を掴んで離さない。パヴェーゼの小説の古さを感じさせないほど、現代を生きる僕たちの胸にも響いてくる。
水上文(文筆家)
恋に落ちる二人の女性——ラウラ・ルケッティは、女性の身体を消費させず、異性愛規範によって掻き消されかねないクィアな感情を逃さない。だからこの映像美に浸ることが出来るのだ。レンズが捉えるすべての瞬間が忘れ難い。
山内マリコ(小説家)
憧憬のまなざしを向ける側、向けられる側。彼女たちは異性ではなく同性こそ自分たちに必要なことを、最初から知っているみたいだ。画面の隅々に青春のエッセンスがぎゅっと凝縮して、すべての瞬間がまばゆい。
山崎まどか(コラムニスト)
二人の少女がお互いに寄せる想いが「美しい夏」そのもの。ジーニアとアメーリアが自転車で走るシーンのときめきが、
彼女たちが一緒にいられる季節がずっと続きますようにと祈るような気持ちだった。残酷な男女の世界の現実や、戦争や、あらゆる悲しみにこの輝きがかき消されることがないように。
和田忠彦(イタリア文学者/東京外国語大学名誉教授)
「あのころはいつもお祭りだった」——ひるがえって今は、と問えば、失ったものの正体や在処に思いが向かい、あらためてその喪失の歳月がよみがえってくる。中編小説『美しい夏』をひらくこの一文を、ラウラ・ルケッティはどう読んだのか。その答えが、繊細にして容赦ない手捌きでわたしたち観客に手渡される。
『美しい夏』は8月1日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMA、シネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか全国公開