“黒”に着目して江戸絵画を観る「エド・イン・ブラック 黒からみる江戸絵画」が3月8日~4月13日、西高島平『板橋区立美術館』で開催
江戸時代の人々は“黒”に対して何を見出し、何を感じていたのか。さまざまなテーマから江戸絵画における“黒”を探究し、その魅力に迫る「エド・イン・ブラック 黒からみる江戸絵画」が2025年3月8日(土)~4月13日(日)、東京都の『板橋区立美術館』で開催される。
影や暗闇などの描写から黒の表現力に触れる
何にも染まらない特異な色、黒は、日本絵画においても、古くから欠かすことのできない要素の一つだった。多くの人が絵を楽しむようになった江戸時代には、絵画表現が広がり、黒は多様に用いられるようになったという。
月夜の情景や人々の暮らしの様子といった夜を描いた作品の中でも、影や暗闇などの描写に特に注目した本展。江戸の絵画の中で黒がどのように用いられたのかを探っていく。また、背景を黒く塗り込んだ作品や黒を基調とした「墨彩色(すみさいしき)」「紅嫌い(べにぎらい)」と呼ばれる趣味人たちに好まれた浮世絵などから、それらが何を象徴しているのかを検証していく。
美術館担当の高木さんは「本展では、夜の情景を描いた作品や黒を基調にした浮世絵など、江戸絵画にみる黒の表現とともに、当時の文化や価値観なども紹介します。さらに、暗闇の中でわずかな灯りとともに作品を鑑賞するコーナーでは、普段の美術館では味わえない金屏風の柔らかな輝きによる美しさを堪能いただけます。江戸時代の人々が“黒”に対して何を見出し、何を感じていたのか、さまざまなテーマから探究し、その魅力に迫ります」と見どころを語ってくれた。
「黒」から迫る江戸時代の文化や風俗
古くから月や霞などで示され、一見、昼との区別が難しいこともあった夜の絵。しかし、江戸時代になると夜の時間を楽しむ人が増え、その描写も多様に展開していく。「影」や「暗闇」などに注目し、夜という特別な時間を表現した絵師たちの創意工夫が紹介されるのも見どころのひとつである。
また注目したいのが、“黒”から江戸時代の文化や価値観を深堀りしていく点。背景を黒く塗りこめた伊藤若冲《乗興舟(じょうきょうしゅう)》や黒を基調とした美人画などから、そこに象徴されるものを検証していく。
お歯黒など化粧文化から示される、黒による美しさや独自の価値観にまで掘り下げて検証しているのも興味深い。
闇夜に何が浮かび上がる? 特別演出!暗がりの中での鑑賞体験
電灯が無かった江戸時代、時間帯や天候によって作品の見え方は変化した。暗がりの中で、絵画はどのように見えていたのだろうか。鑑賞者は蝋燭(ろうそく)のような灯りの中で露出展示した金屏風を直接観ることができる、特別な演出も登場する。闇夜の中で過ごす時間が長かった江戸時代の人々の目に、どのように作品が見えていたのか、身をもって体感できそうだ。
開催概要
「エド・イン・ブラック 黒からみる江戸絵画」
開催期間:2025年3月8日(土)~4月13日(日)
開催時間:9:30~17:00(入館は閉館30分前まで)
休館日:月
会場:板橋区立美術館(東京都板橋区赤塚5-34-27)
アクセス:地下鉄三田線西高島平駅から徒歩14分
入場料:一般650円、大学生450円、高校生以下無料
※65歳以上、障害者手帳をお持ちの方は割り引きあり。
【問い合わせ先】
板橋区立美術館☏03-3979-3251
公式HP https://www.city.itabashi.tokyo.jp/artmuseum/4000016/4001836/4001855.html
取材・文=前田真紀 画像提供=板橋区立美術館
前田真紀
ライター
『散歩の達人』『JR時刻表』ほか雑誌・Webで旅・グルメ・イベントなどさまざまなテーマで取材・執筆。10年以上住んだ栃木県那須塩原界隈のおいしいものや作家さんなどを紹介するブログ「那須・塩原いいとこ、みっけ」を運営。美術に興味があり、美術評論家で東京藝術大学教授・布施英利氏の「布施アカデミア」受講4年目に突入。