小田原箱根商工会議所 会頭インタビュー 地域の「商売繫盛」を目指して
--地域の経済情勢は、回復基調と、逆に厳しさを増す部分との両面があります。どのように感じていますか。
「観光業については、インバウンドが目立つようになりましたが国内の団体バス旅行が減少しています。宿泊施設の料金が上がったこともあり、全体的にはコロナ前までには戻っていないと思います。相変わらずの円安は地域の中小企業にとっていいことはほとんどありません。輸入原材料など全体的なコストが増えています。また人件費も増加しており、経営者も給料を上げたい思いはあっても現実が追いついていません」
--最近の商工会議所の取り組みについて教えて下さい。
「私たちの基本方針は、会員企業の商売繁盛をお手伝いすることです。コロナを経てビジネスも大きな転換点を迎えている中、企業の要望や困りごとを丁寧に拾い上げ適切な支援を提供することが重要です。職員が企業支援にかける時間が増やせるように、事務作業などの業務効率化を進めています。また経営者のニーズを聞き出すためのスキルアップも必要で、その教育にも力を入れています」
商売がしやすいまちづくり
--小田原箱根地域のまちづくりについて、お考えをお聞かせ下さい。
「経済団体としては、中小企業が商売しやすい環境づくりを念頭に置いています。ひとつに定住人口や交流人口の増加がありますが、かつてのようにショッピングセンターや工場誘致だけでは人が集まらない時代です。これからはウェルネス、スポーツ、アートの分野が、人を惹きつけるまちづくりには重要な要素だと思います」
--商工会議所の重点施策に「スポーツを通じたまちづくり」を掲げています。具体的な取り組みは。
「例えば新たな試みとして、昨年11月に箱根のゴルフ場を貸切にして、家族みんなで楽しめるイベントを初めて開催しました。お父さんたちがコンペでラウンドしている間に、未経験者や子ども向けのゴルフ体験やミニ大会、またクラブハウス内にブースを設けて寄木細工などのものづくりを楽しんでもらいました。ゴルフ場を”地域資源”ととらえ、新しい価値を引き出して活用するヒントになればと思います」
エネルギーで地域経済の好循環を
--会頭が継続して訴えている、気候変動対策やエネルギー政策についてはいかがでしょうか。
「小田原市では脱炭素先行地域として、省エネと再エネ(太陽光発電等による自家発電)に取り組んでいます。商工会議所では、市と公民連携懇談会を設け情報を共有しながら地域のエネルギー政策の基本計画策定を進めているところです。交流人口や定住人口の増加は、現在も多くの自治体が目標としていますが、その実現はつまり他の地域から引っ張ってくるということです。その点、我々が目指すエネルギーの自給自足は、外に払っていたお金を減らし地域に回るお金を増やすことなので、地域間競争を生みません。CO2削減と地域経済の活性化の両方に資するものです」
--昨年10月に「政府の総合経済対策」について、日商に意見書を出されました。狙いは。
「日商が提唱する『地域経済の好循環』を、エネルギーの取り組みで促進しましょうという提案です。ひとつは国の費用負担による中小企業の『省エネ診断の義務化』です。経営者に自社のエネルギーの無駄を認識して、コスト削減につなげてもらいます。省エネ化は、照明のLED化、空調の更新、断熱工事など既存の技術と設備でできることも多く、地域の中小企業の仕事にもつながります」
国際的視点でサポート
--若者世代の力の活用、国際的な感覚を養う教育にも取り組まれているそうですが。
「まちづくりには長期的な視点が必要で、未来の当事者たる若者にも積極的に関わってもらいたいと思います。いわゆる”Z世代”と一括りにせず、一人ひとりの価値観や個性、アイデアを発揮してもらう機会を提供できればと考えています。国際的な感覚については、ウクライナで戦争が起きると隣の豆腐屋さんの値段が上がるように、この地域の中小企業も世界のバリューチェーンに組み込まれています。国際情勢を知らないことはビジネス上のリスクであり、逆にチャンスを逃すこともあり得ます。まずは当会議所で勉強会をスタートしました。職員が会員企業をサポートできるようになり、ひいては小田原箱根が海外の企業から選ばれる地域となるように、一歩ずつ進んでいきたいと思います」