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次に奈良を旅するなら『道の駅なら歴史芸術文化村』へ。奈良の魅力に感化される道の駅

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次に奈良を旅するなら『道の駅なら歴史芸術文化村』へ。奈良の魅力に感化される道の駅

TOP写真:お話をうかがった3人。「芸術文化体験棟」の屋上からは二上山や金剛山などが望める。

『道の駅なら歴史芸術文化村』は、名称に「歴史」や「芸術」、「文化」という単語が並び、最後に「村」とつく、珍しい施設。いったいどのようにつくられた、どのような道の駅なのでしょうか。

文化財修復・展示棟」内の「仏像等彫刻」修復工房では、『公益財団法人美術院』が奈良県内にある寺の金剛力士像を修理していた(写真提供:奈良県)。

奈良の文化や味わいがそこにある、『道の駅なら歴史芸術文化村』。

文化の振興から、地域を元気にしていく。

2022年3月、奈良県天理市に『道の駅なら歴史芸術文化村』が”開村“した。実は、ここは奈良県立の施設だ。施設整備の検討を始めたのは、2014年のことだった。県としてどのような施設が望ましいかを考え、フランス・パリ郊外にある芸術家村をヒントに、奈良の芸術や文化を現在に活かし、後世にも伝える施設を模索し始めた。

広い敷地面積や歴史文化資源などがある天理市に場所が決定すると、有識者を含めてコンセプトなどの議論に入った。10回を超える検討のなかで、芸術や文化活動を楽しめる施設にすることのほかに、施設全体として国土交通省が選定し応援する「重点道の駅」を目指すことも決まったという。

こうして施設の検討が始まってから実に約8年もの歳月をかけて、開村。建てられたのは「文化財修復・展示棟」、「芸術文化体験棟」、「交流にぎわい棟」、「情報発信棟」という4つの棟で、「重点道の駅」に選定された。

『道の駅なら歴史芸術文化村』の全体像。自然豊かな環境にあり、古道「山の辺の道」に隣接。建物は奥から時計回りに、ホテル『フェアフィールド・バイ・マリオット・奈良天理山の辺の道』、交流にぎわい棟、情報発信棟、文化財修復・展示棟、芸術文化体験棟。

さらに、同施設ではないものの、敷地内に民営ホテル『フェアフィールド・バイ・マリオット・奈良天理山の辺の道』も併設された。

ホテル『フェアフィールド・バイ・マリオット・奈良天理山の辺の道』。

行く度に、文化財の修理が進んでいくおもしろさ。

文化財修復・展示棟」では、日本で初めて「文化財4分野の修復工房」が通年公開され、ガラス越しに無料で見学できる。「仏像等彫刻」、「絵画・書跡等」、「歴史的建造物」、「考古遺物」という4分野の修復工房に異なる修理団体が入り作業を進めている。

文化財修復・展示棟

文化財に親しみをもてるギャラリー棟。

「仏像等彫刻」、「絵画・書跡等」、「歴史的建造物」、「考古遺物」という4分野の文化財について、それぞれの修復工房を通年公開している。パネルや映像、QRコードの案内で修理の工程や技術をわかりやすく解説しているほか、学芸員のナビゲートによるツアーも毎日無料で行っている。また、デジタルギャラリーでは、奈良県内の文化財に関する動画アーカイブと、奈良県が所蔵する建造物の図面などのデータベースを自由に閲覧することが可能。地階には展示室もあり、年に3~4回程度企画展を行っている。

「絵画・書跡等」修復工房での作業。国宝や重要文化財の修理を数多く手がけてきた『株式会社文化財保存』が担当している。
考古遺物」修復工房での様子。勾玉づくりなどのワークショップも開催していて、情報は公式サイトで発信中。右はガラス越しに見た「歴史的建造物」修復工房。

奈良県の国宝・重要文化財の件数は、東京都、京都府に続き全国3位で、仏像などの彫刻と建造物の国宝の件数はともに全国1位だ。ここで修理されるのは多くが県内のもので、まさに奈良県らしい活動といえる。それが道の駅で行われているとは、ユニークだ。

学芸員の萩谷みどりさんは、「現在、『仏像等彫刻』、『絵画・書跡等』、『歴史的建造物』の各修復工房では、奈良県指定文化財を中心に修理を行い、『考古遺物』修復工房では、天理市内の遺跡から出土した遺物の整理・復元作業を行っています。修理には数年かかるものもあります。各分野で日々作業が進むため、来ていただく度に違う作業をご覧いただけます」と話す。

学芸員の萩谷みどりさん。

また、東京藝術大学などの4大学と連携協定を結び、文化財の調査研究をはじめ、保存、活用、次世代の人材育成の取り組みも行っている。

「芸術文化体験棟」では、幅広くさまざまな芸術文化プログラムを提供している。国内外のアーティストが一定期間滞在して棟内のスタジオで作品制作を行い、発表や地域との交流などを行う「アーティスト・イン・レジデンス(AIR)」、未就学児を対象とした「幼児向けアートプログラム」、ホールを活用した「音楽・伝統芸能体験プログラム」などだ。

特に子ども向けのアートプログラムは、子どもの学ぶ機会を奪っていないか、選択、失敗、挑戦する場所になっているかなどを大切にしている。何度も参加する子どももいて、難しいことにも挑戦するうちに遊び方が変容してくるという。

芸術文化体験棟

あらゆる芸術文化の体験ができる。

アーティスト・イン・レジデンス(AIR)、未就学児向けのアートプログラム、ホールを活用した音楽・伝統芸能体験プログラムなどを通じて、芸術文化の体験を提供している。未就学児を対象とした「幼児向けアートプログラム」では、イタリアの「レッジョ・エミリア・アプローチ」を参考にプログラムを展開。また、ホールではリサイタルやコンサート、公演などを開催。一般の人が借りることも可能だ。セミナールームも複数あり、会議や研修、各種講座などに利用できる。交流ラウンジもあり、棟全体があらゆる芸術文化活動を受け入れる空間となっている。

左/AIRで滞在した大西健太郎さんは来村者と交流するワークショップも行った(写真:衣笠名津美)。右/子どもが参加した狂言プログラム(写真提供:奈良県)。
未就学児向けアートプログラムの一つ「そざいきち」では、自然の素材との出合いや遊びを楽しむ。
272席を備えたホール。

経験豊かなスタッフが運営し、年間約80万人が来村。

「交流にぎわい棟」には、農産物直売所や工芸品ショップ、レストランなどが入っている。農産物直売所と工芸品ショップの責任者である山本浩文さんは、県内で民間の農産物直売所や温泉施設、都内のアンテナショップや飲食店などを手がけてきたベテランだ。培ってきたマーケット感覚やネットワークを生かし、天理市産を中心とした農産物、奈良墨や茶筅、赤膚焼などの伝統工芸品、吉野杉などを使った木工品を並べている。県内にこれほどの商品が揃う店舗はなかなかない。

山本さんは「見ていて楽しいような商品を並べています。お客様に喜んでいただくのはもちろんですが、店舗を通じてつくり手の方たちも刺激を受けてくださっているそうで、商品や陳列がどんどんよくなっていると感じています」と話す。

交流にぎわい棟

奈良のお土産品が並ぶ、貴重な空間。

県産農産物や伝統工芸品、木工品などを販売する直売所、県産食材を使った料理が味わえるレストランのほか、シャワー室を備えたサイクルステーションがある。2階の実習室や多目的室では、奈良県の食と農について歴史文化的背景を交えて体験して学ぶ、講座・料理教室などを定期的に開催している。実習室は貸室として利用することもできる。買い物や飲食のみならず、交流にも重きが置かれた棟になっている。

農産物直売所と工芸品ショップ担当の山本浩文さん。上皇・上皇后両陛下の訪問時に案内役も担当。

工芸品ショップ『文化村工芸品館』

奈良県の地で磨かれ、継承されてきた技術・技法を用いた、さまざまな工芸品を一堂に集め、展示・販売しているショップ。奈良県は「吉野林業」が盛んなことから、吉野杉などを使った木工品が多く揃う。

左/伝統工芸品、陶器などが並ぶ。木工品は小物から椅子などの大きなものまで。「奈良の土産品を買うならここ」とリピートする人も多いそう。右/見ていて楽しい伝統工芸品コーナー。
吉野杉のおわんとボード。

農産物直売所『文化村にぎわい市場』

地元の天理市を中心とした県内各地の新鮮な野菜や果物、加工品などが並ぶ。奈良県の名品や名産などもあり、土産品を選ぶのにおすすめ。また、旬の農産物をテーマにしたフェアも開催している。

左/販売している旬の野菜や果物。県内の農家が直接ここへ納品するので鮮度は抜群だ。右/明るい店内。野菜や果物のほか、豆腐などの大豆製品、スイーツ、お茶、調味料などを販売している。

とんかつ店『奈良名産レストラン&CAFE まるかつ』

奈良県内で大人気のとんかつ店『まるかつ』の天理店。口溶けがいい上質な脂肪と甘みが特徴の銘柄豚「ヤマトポーク」や大和野菜など、奈良県産の食材を使った料理を楽しむことができる。天理店限定のメニューもある。

左/天理店限定メニューの「ヤマトポークかつ膳」2680円。右/天井が高く、開放的で広々とした店内。特に土・日曜、祝日は多くの客が来店し、行列ができることも。テイクアウトメニューもある。

情報発信棟

奈良県内の情報が詰まった空間。

道路交通情報に加えて、奈良県全域の歴史文化資源や芸術、観光スポットなどの情報を発信。特に奈良県東部・南部を示す奥大和地域の19市町村のパンフレットを配布している。また、コンシェルジュが常駐して観光案内や施設案内を行っているので、気軽に相談をすることもできる。近隣の歴史スポットを巡ったり景色を楽しんだりできる、レンタサイクルの申し込みの窓口もここだ。棟内のトイレと授乳室は24時間利用可能。

初めて『道の駅なら歴史芸術文化村』を訪れる際には、ぜひ一度入ってほしい情報発信棟。

このようにさまざまな機能や特徴を持つ大きな施設であれば、名称に「村」とつくのも頷ける。指定管理業務として総括責任者を務める福原稔浩さんは、さらなる特徴を次のように話す。

鉄道会社一筋だった福原さんは「前職でお世話になった奈良県にお返しができれば」と語る。

「私のような民間業者と県の自治体職員が連携しているところも当村の特徴かもしれません。いろいろな経験やアイデアをもつメンバーがいて、例えばイベント時の特別バスの運行など、『こうしましょう!』と積極的に意見が出ます。花火を打ち上げて終わりではなく、このメンバーとなら継続して奈良県をPRしていけると確信しています」

前職では『近畿日本鉄道』で27年間も広報係を務め、関西の鉄道マスコミ関係者で知らない人はいないほど名物広報マンだった福原さん。そんな福原さんの確信のとおり、『道の駅なら歴史芸術文化村』には連日多くの人が押し寄せている。当初は年間55万人の来場者を目標としていたが、コロナ禍であったにもかかわらず、1年目に約80万人(4棟出入口の計測値合計)が来村したのだ。2023年5月には上皇・上皇后両陛下が訪問され、大きな話題になった。福原さんはそれを喜びつつ「まだ満足していません」と、笑顔でこう話した。

「奈良県へは『修学旅行で奈良公園にだけ行ったことがある』という人はとても多いのですが、2度目がなかなか……。ぜひもう一度お越しいただき、当村から近隣のスポットや奈良県南部・東部の奥大和地域にも足を運んでいただけたらと考えています」

自分の興味・関心によって、さまざまな楽しみ方ができる道の駅。ぜひ「2度目」の奈良をここから始めてみよう。

道の駅なら歴史芸術文化村』・福原稔浩さんの、道の駅を楽しむコンテンツ。

Magazine:男の隠れ家

男性向けの雑誌ですが、女性も興味をもつようなアフター5やウィークエンドの楽しい過ごし方などが紹介されています。高級アイテム・食事などの情報は年配の方を意識した商品選択などに役立ち、道の駅の運営の参考にしています。

Magazine:Wedge

東海道・山陽新幹線のグリーン車での無料配布や書店販売で手に入れられます。私は、JR沿線のスポット紹介や企業の経営方針の記事に注目。経済的に余裕がある方や企業の上層部が興味をもつ内容で、観光の誘致の参考にしています。

TV:朝だ!生です旅サラダ

日本全国のおいしいものや温泉、週末のおすすめスポットなど、多彩な旅のスタイルを提案する、『朝日放送テレビ』の情報バラエティ番組。全国各地にある観光名所から中継などがあり、旬な観光情報として運営の参考にすることもあります。

photographs by Katsu Nagai text by Yoshino Kokubo

記事は雑誌ソトコト2023年11月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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