仕掛担当が教えてくれた 竿の長さと仕掛の関係?適切な釣りモノを決める方法論
釣り道具において「仕掛」は、ロッドやリール、ルアーほど脚光を浴びるわけではないが、魚に直接触れるアイテムとして、また、仕掛の良し悪しによって釣果が左右されるなど重要なアイテムだ。そんな仕掛を扱うメーカーならではのプチ知識を、開発担当者に聞いてみる当企画。「これ知ってたらお得」「釣果アップにつながる」「釣りが快適になる」…といったアイデアを紹介しよう。
今回「竿の長さと仕掛の関係から考える、適切な釣りモノ」について教えてくれたのは、長年、仕掛開発に携わる中川さんだ。
長い竿?短い竿?
それぞれ、まさに一長一短ある!
まず、竿の長さはさまざまで、釣りモノや仕掛の長さによって、それぞれに使いやすい適切な長さがあるのはご存じの通りだろう。短い竿、長い竿、それら竿の長さの特性を理解すれば、手持ちの竿で「どんな釣りができるのか?」「どれくらいの長さの仕掛が適切なのか?」を判断しやすいハズだ。
そのためにも、まずは各種ある竿をザックリと短い竿と長い竿の2つに分けて、そのメリット・デメリットを押さえておきたい。分かりやすくショアからの釣りに限定して、中川さんに聞いてみた。
短い竿(1m~1.8m程度)
「何をもって長い、短いとするか難しいところですが、ここでは1m~1.8m程度の竿を短い竿としてお話させてもらいますね。
まず短い竿のメリットとしては、何といっても扱いやすいことが一番だと思います。背丈前後の長さですから持ち運びにさほど気を遣うこともなく、また、足下をねらうのにも丁度よいサイズです。反対にデメリットとしては、その短さゆえに足下のさらに先を釣るのは難しいことですね。キャストして飛距離を出すのにも向いていません」と中川さん。
中川さんが教えてくれた内容をまとめると、次のような具合だ。
●メリット
・背丈に近い長さで扱いやすい(取り回しやすい)
・コンパクトに収納でき、持ち運びがラク
・足下を釣る際に丁度よい
●デメリット
・足下の先を釣るのが難しい(=沖を探るのが難しい)
・投げる(キャスト)場合に飛距離を出しくい
長い竿(2.7m~5.4m程度)
「一方でかなり幅はありますが、2.7m~5.4mといった長い竿の場合、単純にその長さがゆえに足下を探るのが難しくなります。また、振り出しタイプで短く収納できるものでも重量があり、持ち運びなどの利便性が悪くなってしまうのは否めません…。でも、メリットとしては竿の長さ分だけ沖を探れますし、キャストする場合にも飛距離を出しやすい。ちょうど、竿の長さの長所と短所は相反する関係ですね」と中川さん。
竿の長さによる違いは、まさに一長一短といったところだろうか…。
●メリット
・竿の長さ分、沖を探ることができる
・投げる(キャスト)場合に飛距離を出しやすい
●デメリット
・長さがあり取り回しが悪い
・重量があり、持ち運びが不便
・足下を探りづらい
竿の長さで変わる!?
仕掛と釣りモノのチョイス
竿の長さからねらう対象魚を決めるのも、快適に釣りを楽しむ一つの手
前述のそれぞれのメリットとデメリットを踏まえると、竿の長さによって「足下付近をねらう」のか、「やや沖を遠投して釣る」のかが、ある程度決まりそうだ。中川さんによると、「竿の長さ > 使用する仕掛(の長さ) > 釣りモノ(ねらう魚)の順に考えていくのがイイですね」とのことだ。
では、実際の堤防釣りに当てはめて、竿の長さ別にそのプロセスの例を見ていこう。
短い竿の場合
足下をねらうには短い竿が向いている
「短い竿の場合、おもに近場(足下付近)をねらうことが多いので、長さ1m以内の仕掛を使うのが適切ですね。足下を短い全長の仕掛でねらう釣りとしては、メバルやカサゴ、ベラといった魚を対象にした釣りモノがおススメです。
たとえば、ブラクリや胴突仕掛を使って根魚をねらうのが楽しいですね。根魚をねらう場合は、堤防の際(岸壁沿い)やスリット、テトラの隙間などをねらうとよいでしょう。これらの場所をねらうには、ポイントが比較的自分に近いので短い竿が有利です。また、遠くに仕掛を投げて探る必要もあまりありません」。
中川さんによると、短い竿で自身の足下をねらえば十分に楽しめるとのこと。長い竿でも釣れないことはないのだが、竿の長さ分、立ち位置を後ろに取らなければならず、また竿を出す角度も調整する必要があるので不向きだそう。むしろ、短い竿の方が扱いやすいとのことだ。
●短い竿 > ブラクリや胴突仕掛 > カサゴ(ガシラ)・メバル・ベラなどが、ねらいやすい
足下を短い竿でねらえば、ライトに十分楽しめる!長い竿の場合
「長い竿の場合、全長2m以内の仕掛であれば扱いやすいですね。目安としては仕掛以上の長さがある竿が適切です。キャストして沖を探る釣り、沖合を回遊するアジやキスといった魚を対象にねらう釣りモノがおススメです。
たとえば、沖合を探る飛ばしサビキや投げ釣りといった釣りモノを楽しめます。サビキ仕掛であれば1.4m~2m以内、投げ釣り仕掛であれば1m~1.8m以内が標準的な仕掛の長さで、胴突仕掛よりも長いといった具合です。長めの竿であればそれらの仕掛を扱いやすく、キャストして広範囲を探ることができますよ」。
さらに中川さんによると、「竿より長い仕掛を使うと、仕掛の上端までしかリールで巻き取ることができないので、竿の長さ以上に仕掛がぶら下がる形となります。これでは、魚が掛かったときに仕掛を手で手繰り寄せる必要があり、この動作中にせっかく掛かった魚がハリから外れて海に落ちてしまったり、仕掛が絡んでしまったりとトラブルの原因になり兼ねません…。やはり短い竿で長い仕掛を使うのは無理がありますね」と、付け加えてくれた。
●長い竿 > サビキ釣りや投げ釣り > アジ・サバ・キス・カレイなどが、ねらいやすい
竿の長さに適した仕掛を使えば釣りが快適に!
「それぞれの長さの竿で使用に適した仕掛の長さが決まり、それに応じて釣りモノを決める。このように考えると、仕掛と釣りモノを選びやすいのではないでしょうか。仕掛全長を選ぶ際の目安として、竿の長さの8割程度の長さに収まるものが最適です。このバランスであれば、手元近くまで仕掛を巻き上げられ魚を取り込みやすく、エサの付け替えも容易です。手返しがよくなるので、よいリズムで釣りをすることができますよ」。
ナルホド。竿の長さに適した仕掛を選ぶことは、釣りモノを決めるプロセスであると同時に、釣りの動作をスムーズに、そして快適にこなすことにもつながるということか。
何よりも楽しむことが前提の「釣り」なので、適正なバランスで竿やリール・仕掛といったタックルを整えればトラブルを回避でき、イライラすることなく釣りを満喫できる。ぜひ今一度、手持ちの竿でどんな釣りができるのか見直すのもよいかもしれない。
※竿にはオモリ負荷(その竿で扱うことのできる適正な重さの表示)があり、負荷を超えるオモリを付けることは竿の破損の原因となり兼ねない。無理は禁物だ
竿の長さに適した仕掛全長を選ぶのが、快適に釣りを楽しむコツ。ちなみに、最近ではショートロッド対応の全長が短い仕掛も多数ある
「ちなみにですが…、最近はショートロッドやコンパクトロッド1本であれこれ楽しみたい方向けに、さまざまな釣りモノで全長を短くした仕掛のラインナップが増えています。全長30cm前後のちょい投げ仕掛やハリ数を減らした1m未満のサビキ仕掛など、短い竿で扱える仕掛が発売されているんです。『短い竿でいろんな釣りを楽しんでみたい!』という方は、こういったショートタイプの仕掛を試してみてください」と、中川さんは締めくくってくれた。
といったわけで「竿の長さと仕掛の関係から考える、適切な釣りモノ」はココまで。釣りに詳しいエキスパートなら「な~んだ」な知識、かもしれないが、釣りを快適に、スムーズに楽しむための知識としてお役に立てれば幸いだ。
仕掛のスペシャリストとして日々開発に携わるなかで、きっとアングラーのタメになるアイデアがいろいろとあるはず! そんな目から鱗なプチ知識を発掘し、引き続きお届けしていこう。