西武池袋の屋上にある「モネの池」を久しぶりに訪れてみたら……消えゆくデパート文化に思いを馳せた
先日、国立西洋美術館で開催中の「モネ 睡蓮のとき」という展覧会を観に行ってきた。モネの「睡蓮」の絵は非常に人気が高いこともあって連日大盛況。
モチーフとなっているのはモネがフランス・ジヴェルニーに自ら作った睡蓮の池。50代から86歳で亡くなるまで、取り憑かれたように描き続けることになった庭の中にある。
以前、池袋の西武百貨店の屋上にモネの庭を模した美しい庭園がある……と記事で紹介した。あれから1年と少し、あの池はどうなったのか……ということで見に行ってみたのだが……。
・売却された池袋西武
2023年9月1日に、セブン&アイ・ホールディングスがそごう・西武をアメリカの投資会社に売却した。
そのため、2025年2月現在、西武池袋本店は大規模なリニューアル中で大半のテナントは撤退している。ニュースによると、跡地にはヨドバシカメラの新業態店舗が入るらしい。
デパート業界が苦境に立たされている中、いまだに豊かなデパートの屋上文化が残っていたのが西武池袋本店「食と緑の空中庭園」であった。
屋上には個性的な飲食店が立ち並び、開放的な空間の中にたくさんの椅子とテーブルが並んでいて、ゆったりと休憩できる……。まさに都会のオアシスのような場所だった。
その奥にあるのが「モネの池」を模したガーデンゾーン。
四季おりおりの花が咲き乱れ、クリスマスやハロウィンなどのイベントごとに飾り付けがされる。
まるでモネの絵の世界に入り込んだような、無料とは思えない素敵なおもてなしの空間だった。
西武の売却で気になっていたのが「あの屋上庭園はどうなるのか」ということだった。
・屋上は残っていたが…
1階から8階まで大規模な改修中なので、屋上も入れなくなってる可能性があるな……と思っていたのだが、意外なことに(?)屋上は開放されていた。
屋上にあったうどんの「かるかや」などの飲食店は全て閉店したものの、かろうじて多肉植物の専門店「鶴仙園」だけは営業中。
休憩用の椅子とテーブル、自販機、トイレなどは残っている。しかし西武の大部分が改装中なので、人は少ない。
緑も残されていて、一見すると、以前のまま……のようにも見えるのだが、どこか寂しい。
よく見ると、屋上を飾っていた緑のほとんどが枯れているのだ。真冬ということもあるだろうが、それにしたって植物のほとんどは元気がない。
・そしてモネの池は
モネの池のエリアも残っていた。撤去されているかと思ったのでホッとしたのも束の間。
人の手が入らなくなった池は、見事なまでに植物が枯れていた。
流れていた池の水は澱み、池の水面には落ち葉が溜まっている。
以前訪れたときは、ここを手入れする人がいて、草花に水をかけたり、不要な枝葉をていねいに取り除いていた。
この日は人影が見当たらなかったので、手入れはおそらくほとんどされていない。
ここは無料のエリア。飲食店のテナントも撤退になったことを考えると、売上を出さない場所なので、庭の人員も削減されたのだろう。モネの庭は残されたというよりも放置されたと言った方が正しい気がする。
それにしても、たったの1年でここまで変わってしまうとは……。
・手入れしないと朽ちる
木や花は自然のままでもある程度は育つのではないかと思っていたが、人の手が入らなくなるとあっという間に枯れてしまった。
ふと見ると、出入り口の上のSEIBUのロゴが剥がされて、跡だけが虚しく残っている。
20年前、上京して初めて訪れたデパートは池袋西武だった。地元の長崎のデパートとは全く違うその広さ、品物の多さ、そしてバーゲンでもないのに人がわんさかいることに驚いたことを今でも思い出す。
まさかあの西武池袋が売却されて、デパートではなくなるだなんて思わなかった。テナントの閉店もショックだったが、寂しくなった屋上を見て、時の流れを感じた。この先、ただ人々の憩いのためだけに、ああいう美しい庭が作られることはあるのだろうか。
参考リンク:西武池袋本店
執筆:御花畑マリコ
Photo:RocketNews24.