節約の夏が確実に 実質賃金が26カ月連続でマイナス 藤井氏「賃金が実際に上がりきるまでずっと補助してあげなきゃあかんわけですよ」
7月11日の「おはよう寺ちゃん」(文化放送)では、木曜コメンテーターで京都大学大学院教授の藤井聡氏と寺島尚正アナウンサーが、実質賃金の推移に関するニュースについて意見を交わした。
藤井氏「(実質賃金を)ずっと上げる対策をしているわけじゃない」
経団連・十倉雅和会長は会見で、厚生労働省が発表した実質賃金が26カ月連続でマイナスとなったことについて、中小企業の賃上げ分などが反映されれば「少なくとも年内にはプラスになるのではないか」との期待感を示した。
春闘での中小企業の労使交渉は大企業よりも遅いため、実質賃金に反映されるのはその分遅れるといわれる。十倉会長は、政府が電気・ガス料金を抑制するための補助金を8月使用分から再開することも実質賃金を押し上げる効果があるとみており「(プラスになることを)楽しみにしたい」と述べた。
寺島アナ「とはいうものの、5月の実質賃金が前の年の同じ月に比べてマイナス1.4%、26カ月連続マイナスで過去最長を更新しています。藤井さん、この十倉会長の発言含め、どう受け止めますか?」
藤井氏「26カ月まできてしまいましたね。これは5月でしょ? 6月は予定調和で4万円減税して所得が上がるわけですから、まぁ上がるんでしょうけど。連続記録なるものは途絶えますが、27カ月は違うかもしれないけど、28カ月目、すなわち7月にどうなるかですよね。だから4万円の減税ってダラダラと続けていくんだったら、その効果はあるのかもしれないですけど、でも最悪ですよね。リーマンショックの時よりも下がってるわけですから」
寺島アナ「十倉会長は『賃上げが反映されるのは中小企業は遅いから』という点と、『電気ガス料金の補助金(8・9・10月)が出て、これが加わってようやく実質賃金が上回る』という点を挙げてましたが、この電気とガスの補助金っていうのは3カ月だけですから、それが切れた時に、また実質賃金マイナスになって『なに一時的に実質賃金がプラスになるの楽しみにしてるんでしょうか、この方は』って思いますがね。一旦上がってそれで良しなのかってことですよね」
藤井氏「まぁ思いますね。何が楽しみなんでしょうね」
寺島アナ「この人、何を考えてるんでしょうかと。我々の生活を本当に考えているんでしょうかって思いますね。ずっと上がってくれるんだったらいいですよね、実質賃金が。『これでようやく』っていうんだったらいいんですけど」
藤井氏「そうですね。これは一時的な上昇のように見えますよね。ずっと上げるための対策をしているわけじゃないですからね」
基本給などの所定内給与は賃上げを受けて2.5%増と31年4カ月ぶりの上げ幅だった。しかし、実質賃金のマイナス幅は前月(1.2%減)から拡大しており、物価上昇に追いついていない。庶民生活は物価高騰に蝕まれていて、5月の家計調査では1世帯(2人以上)あたりの消費支出は29万328円。物価変動の影響を除いた実質で前年同月比1.8%減と、2カ月ぶりにマイナスに転じた。
節約の流れは今年の夏休みもしかり。日本生命が先月、約1万5000人を対象に「夏季休暇の過ごし方」についてアンケート調査を実施したところ、「自宅・自宅周辺で過ごす」が最も多い5割近くとなった。長引く物価高騰を受け、節約志向は依然として根強い。
藤井氏「26カ月連続マイナスでしょ、実質賃金。これがひと月、ふた月とか短期的なものだったら、マイナスであることの悪影響ってそんなに大きくないわけですよ。一時的にちょっとマイナスだったな、っていうことですけど。26カ月ずっと下がってるってことは、これはもうデフレスパイラルに入るっていうことなんですよね。
いまインフレではあるんですけども、実質スタグフレーションといわれるような状況ですから、実質的には底流にはデフレっていうものがあるからデフレスパイラルっていう言い方をしたわけですけど、いずれにしても賃金が下がるということが消費と投資の引き下げを生んで、消費と投資の引き下げが賃金の下落をもたらすということになりますから、26カ月連続っていう長期的な下落っていうのは、27カ月目以降の消費・投資に対して、ものすごい悪影響を及ぼしているんですよね。
だからちゃんと賃金が上がっていく状況にしたいんだったら、4万円を1回ちょろっと配るとかじゃなくて、賃金が実際に上がりきるまで、そして自分の補助をなくしても上がるというのがわかるまでずっと補助してあげなきゃあかんわけですよ」