Rei バラエティに富んだ遊び心溢れる『Reiny Friday –Rei&Friends– vol.16』、オフィシャルレポートが到着
シンガー・ソングライター/ギタリストのReiが、7月11日に東京キネマ倶楽部で『Reiny Friday –Rei&Friends– vol.16』を開催した。本記事では、同公演のオフィシャルレポートをお届けする。
デビュー10周年を記念して6月に初のベストアルバム『FRUIT』をリリースしたシンガー・ソングライター/ギタリストのRei。10周年ということで、毎回異なるゲスト(=フレンズ)を迎えて不定期に行なっているシリーズ・ライブ『Reiny Friday –Rei&Friends–』も今年は3ヵ月連続で開催することが2月に発表され、4月には8月22日公演のゲスト(家入レオ)と9月12日公演のゲスト(仲井戸“CHABO”麗市)が告知された。が、7月11日公演だけはシークレットゲストとなっていたので、一体誰が出演するのか、それぞれが想像を膨らませてワクワクしながらこの数ヵ月を過ごしたことだろう(筆者もそうだつた)。そうして迎えた3ヵ月連続公演の初回=7月11日。果たしてシークレットゲストが誰だったかというと……。
その前に、初めから順を追って書いていこう。お馴染みの会場である東京キネマ倶楽部には、この日もいつもの「Reiny Friday」同様、ブルーやオレンジやパープルのビニール傘が上から吊るされていた。照明が落ちると雨音が聞こえ、下手側上方のサブステージに傘をさしたReiが登場。ゆっくり階段を降り、メインステージの端に座ってアコギを爪弾き始めた。「こんばんは、Reiです。Reiny Friday –Rei&Friends– vol.16、みなさん楽しんでいってください」。そう挨拶して歌い始めたのはこのシリーズ・ライブのテーマ曲「Reiny Monday Blues」だ。ブルージーなその曲のあとはエレキギターに持ち替え、信頼する3人のミュージシャン……JUMBOこと三浦淳悟(ベース)、澤村一平(ドラムス)、渡辺シュンスケ(鍵盤)と共に一気にロック展開へ。自己紹介ソング「My Name is Rei」に始まり、「JUMP」「Heaven」と早くも熱のこもった音を叩きつけるように鳴らした。「アー・ユー・レディ、ロック!」のシャウトから入った「JUMP」はお馴染みのギターリフの前にハードロック的なイントロが新たに加えられ、それも新鮮でかっこよかった。
「Heaven」を演奏し終わると、一旦ステージをはけるRei。そこで男性メンバー3人が演奏し始めたのは、シティポップ的なグッドメロディのあの曲。そう、Ginger Rootの代表曲と言っていい「Loretta」だ。因みにこの日の開演前、Rei自身のセレクトによるBGMでは大貫妙子、鈴木茂、KIRINJI、竹内まりや、EPOといった今ではシティポップの文脈で語られるアーティストたちの曲が多く流れており、そのなかにGinger Rootの曲もいくつか混ざっていたので、勘のいい人はその時点でゲストが誰だか気づいたかもしれないが……。「Loretta」のバンド演奏とそこに乗るアナウンスに続き、下手側上方のサブステージに登場したのは、そう、Ginger Rootだった。そのときの観客たちの驚きと喜びの声といったら!
簡単に説明しておくと、Ginger Rootは南カリフォルニアのオレンジカウンティ出身ミュージシャンであるキャメロン・ルーのプロジェクト。彼はマルチインストゥルメンタリスト、プロデューサー、ソングライター、ビデオグラファーとして幅広く活躍し、2010年代の終わり頃から早耳の音楽ファンの間で注目される存在だったが、2023年のフジロックの深夜にアイデア満載のパフォーマンスを見せたことでライブの面白さが評判になり、3rdアルバム『SHINBANGUMI』を携えた昨年6月の2度目の日本ツアー(Zepp DiverCityほか)は完売に。今月のフジロックにも2度目の出演が決まっている。そんな彼はかつて(架空の)80年代の日本のアイドルのために楽曲を書き、プロデュースするよう依頼されたというコンセプトの元でいくつかの曲とMVを発表していたが、それに近いコンセプトを今回のライブにも採用。「80年代に彗星の如くデビューして人気を博したアイドル=Reiが活動期間1年足らずで電撃引退するも、たった1枚残したシングル“Love is Beautiful”がマニアの間で幻のコレクターズアイテムに。そして今、オレンジカウンティ出身のシンガー・ソングライターである青年=キャメロンがそのシングルを探して東京を駆けまわっていた」という設定で、ふたりの生共演が初実現したのだった。
ブルーズロックのReiと、シティポップ/AOR/歌謡曲の要素を持つGinger Rootだが、今月のフジロックでヘッドライナーを務めるVulfpeck(ヴルフペック)から多大に影響を受けたという点で共通するふたりは、Reiの2023年のポップ曲「Love is Beautiful」で初コラボ(ミニアルバム『VOICE』収録)。今回もふたりを繋ぐその曲から共演がスタートした。因みにReiは過去からここにやってきたアイドルという設定で、衣装も白のドレスに赤いブーツとアイドルふう。横にステップを踏みながら歌うなど動きもまた昭和のアイドルチックで、観客の多くはその「かわいいReiちゃん」に見惚れていたようだった。続けてGinger Rootの昨年のシングル曲「No Problems」、さらには両者が大好きなYMOの「君に、胸キュン。」、そしてGinger Rootの2022年楽曲「Loneliness」を一緒にやったのだが、鍵盤を操りながら歌うキャメロンの横で「No Problems」の間奏をノリノリで弾くReiの姿は特に印象的だった。
再びバンドが「Loretta」を演奏してGinger Rootが退場すると、ここからはもう一度着替えて”アイドルじゃなくなった“Reiのステージ。ベスト盤のオープナーとなった最新曲の「SODA!」はそのライブアレンジによって音源よりも激しさが増し(実にライブ映えする曲だ!)、続けて歌ものの「Don’t Mind Baby」を。そして藤原サクラとのコラボ曲「Smile!」をアコギ弾きながらまさしく眩いほどの笑顔で歌い、「you make me high~」のところではシンガロングも起きてステージの上と下とが一体となった。そこからは「Lonely Dance Club」「COCOA」「GUITARHOLIC」「What Do You Want?」と、熱い曲、荒々しい曲、ヘビーな曲をパワフルに切れ目なく演奏し続けたRei。数分前にアイドルみたいなステップでかわいらしく歌っていたReiとは完全に別人で、勇ましくて激しいロックギタリストがそこにいた。
アンコールではまた別の衣装に着替え、「今日は衣装替えが多いのよ~」とRei。そして再びGinger Rootをステージに呼びこむと、「次の曲はインストなんだけど、全員知ってるから一緒に盛り上がってほしいの」と言ってYMOの「RYDEEN」を。キャメロンはテレビゲームのように鍵盤を連打し、Reiのギターソロも後半でグッと熱を帯びた。
「今日はバラエティに富んだ内容だったけど」とライブを振り返ったReiだったが、まさしく彼女の言う通り。“かわいい”と“かっこいい”の両側を出しつつ、演出にも凝りながらとにかく遊び心の溢れるライブを見せてくれた。こんなにも遊び心が前に出たReiのライブはこの10年で初めてだったし、誰よりも彼女自身がそれを楽しんでいることがビンビン伝わってくる最高にハッピーな「Reiny Friday」だった。
文=内本順一
撮影=石崎祥子