「ヒグマいるかな…?」北海道の“端っこ”を船で巡る大自然満喫スポット【しろまるドライブ寄り道⑤】
WEBマガジンSitakkeで連載中の、ちょっと“距離感”がおかしい道民、白丸あすかが描く漫画『しろまるほっかいドライブ~白丸さんは距離感がおかしい~』から、寄り道スポットをご紹介します。
今回のドライブでは、知床エリアを巡る超・長距離ドライブをご紹介しましたが、その中で訪れた寄り道スポットをご紹介します。
寄り道スポットNo.05 斜里町「カムイワッカクルーザーゴジラ岩観光」
Sitakke読者の皆さまこんにちは。
旅好き北海道民のしろまるです。
本コーナーは道内をドライブする連載企画『しろまるほっかいドライブ~白丸さんは距離感がおかしい~』の作中において登場したスポットを掘り下げて紹介する寄り道コーナーとなっております。ちょっとディープな北海道の世界へご案内!
今回のほっかいドライブの舞台は、世界自然遺産として名高い知床半島を含めた北海道の東の果てです。網走からオホーツクの海岸線に沿って進み、知床の観光拠点のひとつである「ウトロ」へやってきました。
この町での寄り道は、港近くの中心街に事務所を構える「ゴジラ岩観光」さんです。ちょっと変った名前をしていますが、岩を見るための観光施設ではなく小型観光船の運航会社です。※ウトロ港にゴジラ岩という岩があり、それが社名の由来となっています。
雄大な大自然を拝むクルーズの魅力だけではなく、2022年の事故を受けての現状や安全対策も含めて取材をしてきました。
知床ウトロの観光船は、4月下旬~10月頃が主なシーズンとなっていて、コースや船のサイズによってそれぞれ特徴があります。
大型船(他社)も同じようなコースで運航をしていますが、小型船のほうが断崖の近くまで接近できるためより迫力のある景色を楽しめます。今回のロケでは、ゴジラ岩観光さんに3つあるコースのうちの真ん中のコース、ルシャコース(大人1名:8,000円)に乗船してきました。
航海のお供は、定員77名・総トン数19トンの小型船「カムイワッカ88号」。船内は自由席となっていて、進行方向右側の座席がおすすめです。スタッフの方から渡された救命胴衣を着用し、いざ世界遺産の海原へ出港!
港を出ると、船は想像以上のスピードを出します。風と波飛沫対策に、ウインドブレーカ等を持参しておくと便利です。(春と秋はかなり寒いです)
クルーズは断崖に沿ってゆっくりと進んでいき、小型船ならではの機動力を活かして狭い入り江の中にも入ります。スピーカーを通して船長さんが説明をしてくれますので、予備知識がなくても風景を楽しむことができます。流れ落ちる地下水の滝や驚異的なバランスを保つ奇岩の数々は、長年人間の手がおよぶことがなかった大自然の神秘です。
ウトロ港を出発して40分ほどで、一番短いコースの折り返し地点となる硫黄山(カムイワッカ湯の滝)に到達しました。この滝は活火山の中腹から湧き出た温泉が川の水に混ざっていて、名前のとおり温水が流れ落ちています。
1時間のコースはここで折り返しとなりますが、乗船しているのはルシャコースなのでカムイワッカを通過しそのままヒグマのメッカである「ルシャ湾」まで行きます。20分ほど先へ進んだところでヒグマの観察ポイントに着き、船が速度を落としました。皆が海岸線に目を凝らします。
(ヒグマ……いるかな……?)
野生動物の探索は、見られるかどうか分からないワクワク感と、乗員乗客が一丸となってを対象を探す一体感を楽しめます。……残念ながらロケで乗船したクルーズでは熊に会うことは叶わなかったのですが、それもまた自然を相手にしたアクティビティの醍醐味です。
2時間のコースはこのルシャ湾で折り返しとなり、ウトロ港へ引き返していきます。帰りは断崖の近くではなく、沖合を航行します。時間配分的には往路でクルーズ全体の6~7割の時間を使って景色を楽しみ、残りの3~4割程度の時間で戻るイメージです。「帰りは見どころがないから寝てしまおう……」という方もいるかもしれませんが、沖合からは知床連山の山並みが綺麗に一望できて侮れませんので、シャッターチャンスを逃さないようにしましょう♪
船は予定通りに約2時間の航海を終え、無事ウトロ港へ入港しました。
知床半島は世界自然遺産という土地の性質上、陸上からの観光に大幅な制約があります。一般の旅行者が知床を楽しむためには、観光船で海から景色を見るのが一番手っ取り早く高い満足感を得られます。知床まではるばる足を運んだのなら、ぜひ船に乗ってみてはいかがでしょうか。
【追記】
「知床の観光船」と聞くと、2022年に発生した沈没事故を思い浮かべる方も多くいらっしゃると思います。事故が起きてしまった会社と本記事でご紹介したゴジラ岩観光さんは別の会社ですが、コロナ禍による自粛と事故のイメージが連続して影響し、近年の利用者は大幅に減ってしまったと言います。
それでも新たな管理体制のもとで観光船事業を続け、2023年からは知床岬の先端まで行くコースも再開しています。ロケの中で見た安全対策の中で印象的だったのは、乗船時に乗客一人一人に配布される「yobimori(よびもり)」という端末です。
よびもりはストラップとして首にかけられるようになっていて、海難事故があった際にボタンを押すとSOS信号で救助要請ができる最新のシステムです。一度大きな事故が起こってしまうとネガティブなイメージを払拭するのが大変だと思いますが、こういった取り組みが浸透し、安心して船を利用してもらえるようになるといいですね。
最後に私事ではありますが、しろまるは大学生時代の長期休暇に知床でアルバイトをしたことがきっかけで北海道が好きになり、神奈川から稚内→札幌と移住をした身です。 知床という土地には思い入れがあり、観光船の事故があった際は自分のことのように胸が痛みました。
悲しい事故が起こってしまった事実は消えませんが、それと同時に知床半島が私たちに魅せてくれる景色の美しさも変わりません。事故で亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに、知床の海が再び観光客の笑顔であふれることを強く、強く、願いたいと思います。
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今回のドライブコース
ゴジラ岩観光
住所:北海道斜里郡斜里町ウトロ東51
TEL:0152-24-3060
営業期間(知床半島クルーズ):4/28~10/20
※事前の予約をおすすめします
※冬期休業中も流氷遊ウォークや根室海峡クルーズ(羅臼)を実施
ゴジラ岩観光HP: https://kamuiwakka.jp/
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文・絵:白丸あすか
編集:Sitakke編集部YASU子
※掲載の内容は取材時(2025年5月30日)の情報に基づきます