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kurayamisakaのオルタナロックの魅力を存分にアピール、超満員の“はじめての単独公演”をレポート

SPICE

kurayamisaka

tomoran pre. kurayamisaka tte, doko? #4 -はじめての単独公演編-
2025.2.8 渋谷CLUB QUATTRO

まだまだこれからのバンドには違いない。しかし、“はじめての単独公演”に、いきなりキャパ700人のライブハウス、渋谷CLUB QUATTROを選び、超満員にしてしまったところにバンドの急成長を感じずにいられなかった。しかも、ギター3本で轟音を奏でるバンドの熱演に応え、観客は終始、掌あるいは拳を振りながら声を上げ、クライマックスではシンガロングもした。その光景は前述した急成長に熱狂が伴っていることを想像させ、わくわくせずにいられなかった。

内藤さち(Vo,Gt)

2021年結成の5人組オルタナロック・バンド、kurayamisakaは2022年3月に旧ツイッターにアップした「farewell」が早耳のリスナーに歓迎され、一躍“オルタナロック・シーンに新星現れる”と注目の的になったという。それから3年間の活動がこの“はじめての単独公演”に実ったわけだが、この日、オンステージした5人はギターのフィードバックから演奏になだれ込むと、8ビートの疾走感をタイトなバンドアンサブルで聴かせる「seasons」からバラードの「last dance」まで、曲の振り幅も含め、序盤からバンドが持つポテンシャルを見せつけながら、kurayamisakaのオルタナロックの魅力を存分にアピールしていったのだった。

清水正太郎(Vo, Gt)

フクダリュウジ(Gt)

感情表現を巧みにコントロールしながら、kurayamisakaの楽曲が持つ歌ものという印象を揺るぎないものにする内藤さち(Vo, Gt)のボーカルもさることながら、内藤の歌に対して、カウンターフレーズを奏でる清水正太郎(Vo, Gt)とフクダリュウジ(Gt)によるギター2本のフレキシブルなアンサンブルも大きな聴きどころ。

阿佐美倫平(Ba)

堀田庸輔(Dr)

もちろん、堀田庸輔(Dr)の内藤の歌にハーモニーを加えながらのダイナミックなドラミングと無骨にリズムを刻んでいると思いきや、大胆にフレーズをうねらせる阿佐美倫平(Ba)のベースプレイも聴き逃せない。

そんな5人が「cinema paradiso」のアウトロをはじめ、たびたび繰り広げる白熱したインプロビゼーションが印象づけた、ちょっといかついともハードコアを思わせるとも言えるる、“うおりゃあ”という気勢は、この日、彼らのライブを観るまで、kurayamisakaのことを叙情派のオルタナロックだと思い込んでいた筆者には新たな発見だったことを付け加えておきたい。

「はじめてのワンマンに来てくれてほんとにありがとうございます。集大成ではなく、初ライブのような気持ちで今日を迎えました。いつもは違う人生を生きている人達が同じバンドを好きになって、こんなに集まってくれたことに胸がいっぱいになりました」(内藤)

曲間のMCでそんな思いを語りながら、この日、彼らが披露したのは全16曲。

中盤は、「ここからは新曲ばかりです!」という清水の言葉通り、タイトル未定の新曲も含め、まだ音源化していない5曲を立て続けに観客にぶつけてみせる。

ブリッジミュートしたコードストロークでエッジを立たせた8ビートの疾走ナンバー「metro」、ベースのコード弾きからなだれこみ、ブレイクを交えた歌が曲に角立った印象を与えた「kurayamisaka yori ai wo komete」、ポストパンク的なギターのカッティングと歌謡メロディが絶妙に交じり合う轟音のロックナンバー「sunday driver」。現在のバンドのモードを反映しているのか、ハードな曲ばかりというところが興味深い。

4月10日のリリースに先駆け披露した「sekisei inko」も清水と堀田が加えるハーモニー、サビの和メロという聴きどころはさておき、曲そのものはグランジロックと言えるものだった。

どの曲も観客の反応は上々だ。「大丈夫でしたか?」と観客に尋ねながら、自信満々なのは、「近いうちに録音して、イヤホンでも聴けるようにするので楽しみに待っていてください」とちゃめっけたっぷりに言った清水の言葉からも明らかだろう。

そこから一気にラストスパートを掛けずに内藤がアコースティックギターを弾いたムーディーなバラード「evergreen」でワンクッションを入れたのは、“はじめての単独公演”の感慨と、観客に対する感謝を言葉にしたかったからか。

「みんながどう思うかはさておき、自分ではいいと思いながら、部屋でこつこつと作ってた、言ってみれば、自己満足の楽曲を、みんなが聴いてくれて、こうしてライブにわざわざ聴きにきてくれてる。妄想はしてたけど、想像はできなかった光景を、今日、見せてもらってます」

語ったのは清水だったが、メンバー全員が同じ気持ちだったのだろう。

「ここからは知ってる曲ばかりやります!」と清水が声を上げ、バンドは一気にラストスパートを掛けていく。口火を切ったのは、清水が歌うロックンロールナンバー「modify Youth」。清水とフクダがリードギターをハモらせ、スタンディングの客席から自然にシンガロングの声が上がる。そこからギターの轟音とドラムの連打で繋ぎ、阿佐美が言葉にならない雄叫びを上げながら観客を煽った「curtain call」は「sekisei inko」同様、グランジロックと思わせ、ファンキーとも言えるヨコノリのビートで差を付ける。

波打つように揺れる客席をさらに揺らしたのが、kurayamisakaが発見されるきっかけになったタイトなアンサンブルを持つギターロックナンバー「farewell」だった。

「kurayamisakaはやっとまとまった音源を出します。現在、鋭意制作中なので、楽しみにしてもらえたらうれしいです。終わりたくねぇー。やるか! 最後に大切な曲をやって終わります」(清水)

本編最後を締めくくったのは「jitensha」だった。さまざまなオマージュを詰め込みながら、kurayamisakaと言うか、曲作りを担当している清水の集大成をミッドテンポの演奏に落とし込んだ曲なのだそうだ。そういう曲が6分超えの長尺になったところからも清水の意気込みが窺える。

トライバルなドラムに導かれるように内藤がせつないメロディを謳う歌ものと思わせ、曲の終盤は清水とフクダのトレモロピッキングと清水による極めてエモーショナルなギターソロが高熱を放ちながら、5人が繰り広げる轟音のインプロビゼーションが観客を圧倒する。

バンドの底力を見せつけるとともに、この日、バンドと観客が作り上げた盛り上がりはもっともっと大きなものになる違いないと期待させるという意味でも、本編最後にふさわしいのはこの曲しかなかった。

そして、もう1曲。「アンコールがあったらやろうと思って、新曲を作ってきました。初めて自分のことを歌詞に書きました」(清水)とアンコールに応え、メンバー全員でダン! ダン! ダン! とリズムを刻みながら演奏した「あなたが生まれた日」は2ビートと譜割の大きな歌の組み合わせに加え、前掲の作詞における新境地が自らの殻を破る曲作りに挑んでいることを想像させ、鋭意制作中という音源も含め、kurayamisakaのこれからがさらに楽しみになったのだった。

5月からは彼らにとって最大規模のツアーとなる2マンライブツアー『つま先から頭の隅に流れるツアー』の開催を控えており、5月24日(土) 梅田Shangri-LaにはMASS OF THE FERMENTING DREGS、25日(日) 名古屋CLUB UPSETにはmekakushe(バンドセット) 、6月4日(水) 恵比寿LIQUIDROOMにはHomecomingsをゲストに迎えることがこの日、発表された。

取材・文=山口智男
撮影=タカギタツヒト @tatsuhito_tkg (instagram,X)

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