金融機関を狙った強盗事件 東北銀行釜石支店で対応訓練 万が一に備え危機意識醸成
釜石市大渡町の東北銀行釜石支店(水野吾一支店長)で4日、強盗の侵入を想定した行員の対応訓練が行われた。年末にかけ、金融機関を狙った強盗事件が多発傾向にあることから、釜石地区金融機関防犯協会(会長:安田重行岩手銀行釜石支店長、26機関)が会員機関で毎年実施している訓練。同行同支店では約10年ぶりの開催となった。訓練の様子は他機関の職員も見学し、いざという時の対応を学んだ。
訓練は釜石警察署(三浦正人署長)の協力を得て実施。想定は、口座開設を希望する客を装った犯人が窓口を訪れ、行員が対応する中、もう一人の犯人が拳銃を発砲して行内に侵入。ロビーに座っていた女性客を人質に取り、行員らを脅して現金を強奪するというもの。
警察官が扮(ふん)する犯人は大声で威嚇し、指示に従うよう要求。行員を後方の壁際に立たせ、女性行員に現金を出すよう命令した。金庫から出した金を差し出すが、犯人は再度要求。持参したかばんに金を詰めさせ奪うと、発砲して逃走した。行員3人がすぐさま追いかけ、逃走車両に蛍光塗料を付着させるためのカラーボール(訓練用)を投げつけた。行内では人質になった客のけがの有無を確認し保護。犯人の足跡を消さないよう逃走経路に新聞紙を敷き、移動範囲をテープで仕切り現場保存(証拠保全)した。
犯人侵入直後に行員が押した非常通報ボタンで、警察は事件発生を認知。指令を聞いた近くをパトロール中の警察官がまもなく駆け付け、行員から犯人の体格や服装、逃走方向や車種、ナンバーなどを詳しく聞き取り、情報が無線で伝えられた。
訓練後、釜石署生活安全課の高橋友一課長は「被疑者の人相や着衣を覚える人、カラーボールを投げる人、現場保存する人など役割分担ができていて、落ち着いて対応していた。臨場した警察官への説明もうまくできていた」と評価。その上で、「被害に遭った時、一番大事なのは自分たちと客の身の安全を確保すること。防犯カメラの映像も重要な手掛かりとなるので、日ごろから設備の点検や店外の様子の確認を」と防犯意識を促した。参加者からは拳銃を使った犯罪への望ましい対応についても質問があった。
入行1年目の佐々木長政さん(23)は初めての訓練だった。非常通報ボタンを押し、犯人の特徴を覚え、カラーボールを投げる係を担当したが、「カウンターの中にいると下半身が見えなくて。さらには犯人に後向きにさせられたので、人相とかの記憶が曖昧(あいまい)だった」と振り返り。対応の難しさを感じつつ、「まずは慌てないこと。お客さまに被害を与えないよう、日ごろから対策を確認し、非常時に備えることが大事」と意識を高めた。
水野支店長(54)は「訓練とはいえ迫力があり、みんな気が動転していたようだが、防犯教材などを見て準備してきたことはある程度、冷静にできていたと思う」と所見。予測できない強盗事案への対策として「日ごろからお客さまの目を見て話す、怪しい人物が入ってきた時は一声かけるなど、犯罪のけん制になる対応を心がけたい。今回の訓練を振り返り、行員全員で気を引き締めていく」と話した。
協会の安田会長は「全国的に金融強盗は減少傾向にあり、県内でも2006年を最後に18年間発生していないが、近年の特徴として出退勤の職員を脅して店内に侵入し、金庫を開けさせるという事案も発生している」と説明。訓練を見学した各機関の職員に対し、「今日出た注意点を持ち帰り、各店で再確認、徹底を」と呼び掛けた。