流氷の天使とも呼ばれる<クリオネ> 可愛い見た目と裏腹に悪魔のような一面も?
流氷の天使・氷の妖精と呼ばれるクリオネ。そんなクリオネは、悪魔のように恐れられる一面があるのは知っていますか?
クリオネの魅力や飼育方法、そして恐怖の表情を見せる瞬間について紹介します。
クリオネは巻貝の仲間
クリオネとは、ハダカカメガイ属に属している巻貝の仲間です。
クリオネという名前は、ハダカカメガイ属を指す”Clione”が由来。この名は、ギリシャ神話に登場する文芸の女神ムーサたちの1人であるクレイオー(ラテン語でClio)が由来です。
大きさは生息している地域や種類によって異なりますが、小さい種類で0.3ミリほど、大きい種類では10センチを超えるものもいます。
小さくて可愛いというイメージのあるクリオネですが、10センチとなると違う生物のように見えます。
10センチになる個体は、以前はダイオウハダカカメガイという和名が提唱されていました。
しかし、国立極地研究所の研究により、冬にオホーツク海南部沿岸に出現する小さなクリオネと、春に沖合に出現する大きなクリオネを比べたところ、どちらもハダカカメガイであることがわかったそう。
同じ種でも時期によって大きさが違う、不思議な生きものです。
日本近海にも生息しており、北海道のオホーツク海沿岸のほか、富山湾といった寒い地域で確認されています。
透き通った愛くるしい姿
クリオネは巻貝の仲間ですが、ウミウシなどと同じく貝を持っていません。天使の羽のような翼足(よくそく)があり、ヒラヒラと泳ぐ姿は神秘的です。
全体的に透き通っていて、頭や胸のあたりはオレンジ色をしています。このオレンジ色の部分は、内臓です。頭部は口をしまっている状態で、腹部には生殖腺や中腸腺などがあります。
捕食シーンは衝撃的
通常時は頭には2本のツノのようなものがある、可愛らしい姿をしています。
しかし捕食時には、バッカルコーンという6本の触手が出てきて獲物を捕えます。天使のような見た目とは裏腹にウニョウニョ出てくる触手は気味が悪いため、悪魔のようだと恐れられています。
クリオネは肉食性が強く、さらに偏食。ミジンウキマイマイという巻貝のみを餌としています。
クリオネをじっくり観察できるおすすめスポット
クリオネを実際に見たり、詳しく学んだりするには、流氷をテーマとした科学館「北海道立オホーツク流氷科学センター GIZA」がおすすめです。
流氷に生息するクリオネを飼育展示しており、詳しく観察しながらクリオネやクリオネが生息する環境についてじっくり学ぶことができますよ。
クリオネは飼育できる
クリオネはネットショップや、スーパーの鮮魚コーナーなどで販売されていることがあり、飼育も可能です。北海道のオホーツク海沿岸など海水温が低い場所に生息しているため、冷蔵庫の中で飼う必要があります。
ただしクリオネが食べるのは、先述の通りミジンウキマイマイという巻貝だけなので、エサの入手が難しいです。エサを食べなくても半年〜1年ほどは生きられますが、先のことを考えて判断しましょう。
飼育することが難しくなっても、放流することは絶対に避けてくださいね。
(サカナトライター:Miyamoto Aoi)